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蟲魂

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#眠れない夜に

蟲魂2 -ガザミ(前編)-

蟲魂2 -ガザミ(前編)-

 根津。
 夏の午後。
 虫籠売りの蛻吉(ぜいきち)は、蟲魂商いの上客の一人である御前の屋敷を尋ねた。
「虫籠売りの蛻吉でございます。御門番様。御前様にお取次ぎをお願い致します」
 裏木戸を数度叩いたが、反応がない。
「御門番様。蛻吉にございます」
 裏木戸の門番は居眠りをしていることが多い。そんな時でも、木戸を数度叩くと表に出て来るのが普通だが、その日に限って何の音沙汰も無かった。
 …こいつは

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蟲魂2 -ガザミ(中編「婚礼舞」)-

蟲魂2 -ガザミ(中編「婚礼舞」)-

 伊織とあさりは畳敷の回廊を歩き続けていた。
「あさり殿」
「もう。あさりって、呼び捨てで良いわよ」
「あぁ。では、あさりさん」
「…」
「会って間もないのに呼び捨てというのも気が引けるので…」
「まぁ、良いけど。何?」
「さっきから気になっているのですが、ずっと同じ所を歩いていませんか?」
「そうみたいね」
 あさりは立ち止まり、伊織の左手を見て言った。
「あたしも伊織っちのことで気になっている

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蟲魂2 -ガザミ(中編「襲嫡男」)-

蟲魂2 -ガザミ(中編「襲嫡男」)-

 徳兵衛、蛻吉ともに9歳。
 あさり、7歳。
 三人、夏の午後に山中の廃寺にて。

 あさりが泣いている。
「あさり。どうした?」
 彼女を慰める徳兵衛。
 蛻吉は無表情で二人を見つめている。
「虹色の蟲魂。逃がしたぁ」
「虹色?」
「うん」
「よし。俺が獲って来てやる」
「徳ちゃん。ほんとう?」
「まかせとけ。蛻吉。行くぞッ」
 徳兵衛、蛻吉の手を引っ張って山へ向かった。

 廃寺の前。
 草む

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蟲魂2 -ガザミ(中編「伊予守」)-

蟲魂2 -ガザミ(中編「伊予守」)-

 お勢は、夕餉を食する徳兵衛をジッと見つめている。
 箸を口へ運ぶ手を休めて徳兵衛は、お勢の顔をみると微笑んで言った。
「お勢。この煮つけ。とても美味しいよ」
 お勢はちょっとがっかりした顔つきとなる。
「どうしたんだい?」
「…」
「蛻吉にも食べて貰いたかったんだね?」
 お勢、頷く。
「仕事でね。蛻吉の奴。しばらく戻れないかもしれないねぇ」
 お勢、更に深く項垂れ。
「心配しなくてもお勢の気持

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