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2:6:2の法則 いい会社はどう考えるか

言われると確かにそうかもしれないという「2:6:2の法則」といわれる組織の法則というものがあります。

「どのような組織でも2割の人間が優秀な働きをし、6割の人間が普通の働きをし、2割の人間がよくない働きをする」、あるいは、「どれほど優秀な人間ばかりを集めたとしても、その組織は自然と優秀・標準・不調の比率が2:6:2になる」という考え方とネットで検索すると解説されています。

誰一人取り残さない人本経営では、この現象をどうとらまえて、どのように「いい会社」づくりを目指していくでしょうか。

下の2割を切り捨てない

人本経営者であれば、まず、確実に思考し行動することは、絶対に下の2割を切り捨てないということです。

仮に、それを取り除いたとしても、残した8割の層が、また2:6:2に分裂していくことを繰り返していくと悟っているからです。

伊那食品工業の塚越寛さんも2:6:2に言及されています。組織はそういう生き物であるから、「ウチではリストラしない。2:6:2のまま全体を底上げする。」と明快です。

これには唸らされます。

同社に視察に行くたび、社員さんの応対に触れるたびに、すべての方から高い人間力を感じています。

おそらく、伊那食品で下の2割といわれる方でも、普通の会社に行けば間違いなく優秀な2割になるのではないかと思われます。底力を毎年上げ続けていく不断の人づくりの努力を重ねていくからこそ「年輪経営」が実現できるのだと学ばされます。

本気の覚悟

かつて2:6:2の法則を見越して、あらかじめ必要人員以上の採用を確保し、優秀な2割を確率論で確保しようとする輩が経営する会社が存在していました。

山陰、中国地方でビルメンテナンス業を中核に展開している株式会社さんびるを率いる田中正彦社長は、そんな経営者をこう一刀両断しています。

「10人採用して、結果3人会社にあった人材が出ればいいという考え方? それでは経営者として覚悟が足りない。3人雇い入れたら3人とも全員、会社に定着させるよう本気で人育てをすべきである。」

その本気度が現れるのが入社式です。同社では、毎年、大勢の地元の高校生の新卒者を採用していますが、入社式には父兄をお呼びして、こう宣言するのだそうです。

「お預かりしたかぎり、100%育て上げさせていただく。」

今ある命はどこから来たのかといった親孝行の大切さなどの心のこもった訓話をされ、会場は参加したお父さん、お母さんが感涙にむせびなく声に包まれるのだそうです。

下ではなく必要な2割と考える

やはり切り捨てることをしない神奈川県小田原市で介護ビジネスを手掛ける株式会社HSAでは、マイスタープログラムという選択制民主主義を実現する人事制度体系を整備しています。

ここで働くスタッフは、正社員になるも、パートになるも、管理職になるも、平社員のままでいるのも、すべてその者の生き方、働き方が尊重されています。

ですから、課長になっても自分には合わないと思えば、降りることが可能です。また、いったん降格しても、力をつけたので再度管理職としてチャレンジすることもありです。

そして、今は家庭事情を優先したいという理由で労働時間を少なくする働き方も可能です。普通の会社なら、会社の業績への貢献が少ないとして下の2割扱いとされてしまうところです。

「働く人が働き方や希望を選べる会社を作りたい」と田中勉社長は語ります。

2:6:2の法則を能力の問題として捉えるのではなく、人それぞれ生活や人生があるのだから、現状で不十分な力しか発揮できないのなら、それをあえて受け入れ、しかし、そういう方々がやってくれる仕事があるからこそ、今、貢献度の高い社員がさらに仕事に邁進できると捉え、邪険に扱われることがありません。

ここでは、2:6:2は上下の関係を示しているのではなく、100人いれば20人くらいは常時、生活上の問題を抱えていることは当然と捉えているのです。

その時は、起きている状況に応じた生き方をすることが必要で、会社としてそれは当然と認めることで大事な安心感という風土を醸成しているのです。

同社では離職率が低く、健全に成長しているのも頷けようというものです。
下の2割として排除していく経営は持続可能性が低いのだ、ということを先達が示唆してくれています。

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