Suzumeran

ただ一言、緑

Suzumeran

ただ一言、緑

マガジン

  • 140字エッセイ/140字小説 まとめ

  • 旅×エッセイ

最近の記事

  • 固定された記事

思い出との付き合いかた

思い出との付き合い方って、難しい。 それが苦しい思い出だとしたら、なおさら。 僕みたいな若造には、それを忘れることもできなければ、上手く乗り越えることもできない。 ただ苦しい思い出の中にも、温かさを見つけることはできる。 そして、温かさをたくさん見つけられる思い出は、自然と自分を前に進ませてくれる。 そんなことが分かった気がした、淡くて淡くてしかたない、夏のはじめのお話です。 ============================== 彼女とはじめて会ったのは、2年

    • #0F2540の夜空

      最初に断っておきたいのだが、僕は星が特別好きなわけではない。 星座にまつわるエピソードを覚えるようなロマンチストでもなければ、望遠鏡を担いで踏切で待ち合わせするような趣味もない。 ただ、上を向けばそれなりに星が見える夜を当たり前と思って育ったに過ぎない。 眠れなくて、寝返りをうつのも苦しかった思春期の夜を、ベランダに寝そべって星を眺めてやり過ごした、ただの田舎者に過ぎないのである。 そんな田舎者は、大学入学を機に都会にやってきた。その4年後に就職し、いまは社会人2年目の5月

      • 初夏を感じる140 letters

        こんにちは。 Twitterでは140 letters という名で、140字の小説やエッセイを投稿している者です。 だんだん暑くなったり、雨の日が増えたりと、春の終わりと夏の近付きを感じる季節になりました。 そんな爽やかな季節の心地よさを感じられそうな140字小説/140字エッセイを書いたので、変わりゆく日常に疲れたときにでもご覧ください。 breezeこの時期の風に吹かれるのが好きだ。自分が主人公みたいな気分になれるから。昼は清涼飲料水のCM、夕方はドラマのワンシーン、夜

        • プレゼントの贈りかた

          母の日に、花を贈った。 父の顔を立てるために、あえて数日遅れて届くようにした。 今年は、お花屋さんに母のイメージを伝え、見繕って加工してもらった。 オレンジとピンクを中心に、いい意味で適当にまとまっていて、うちの母らしい雰囲気に仕上がり、想像以上に気に入ってもらえた。 毎年義務感のようなもので無思考に買っていた赤いカーネーション以上に、母に贈るにふさわしい贈り物ができたと思う。 実は、今まで僕は贈り物が苦手だった。 家族や友人への誕生日はメッセージで済ませ、恋人へのプレ

        • 固定された記事

        思い出との付き合いかた

        マガジン

        • 140字エッセイ/140字小説 まとめ
          2本
        • 旅×エッセイ
          4本

        記事

          緑の桜

          散歩に出掛けた。息の詰まるような毎日にうんざりして。 家を出て右と左どっちに歩こうかしらなんてことに迷うぐらいあてのない散歩だ。今日は左に歩き始めることにした。 都会に引っ越してからおよそ1ヶ月。しかも家からはほとんど出ていない。はじめて見る街並みを眺めながら歩く。 20分ほど歩いて見えてきた石階段を登り、住宅街を抜けてまっすぐ歩くと、桜並木を見つけた。 桜並木と言っても、花は完全に散って、緑一色になっている。 桜らしさは全くなかったが、今の僕はこっちの方が気に入った。

          【春の逃避行】3月の140字小説

          こんにちは。Twitterで「140字のエッセイスト」を名乗っている者です。 3月も終わるということで、3月をテーマにTwitterに書き溜めた140字小説を、noteでまとめて公開してしまおうと思います。 現実社会は大変なことになっていますが、僕の140字小説の中では、できるだけいつも通りの春を感じられるように書きました。最初はいろいろと振り回された僕自身の逃避行のつもりで書いたのですが、読んでくださるあなたも、現実ですり減った心を少しでも癒したり潤したりしていただけたら、

          【春の逃避行】3月の140字小説

          いまさら好きになったって

          3月某日午前5時。 向かいのホームから手を振られたとき、無意識に彼女のことを見つめていた自分に気付く。 たった一夜、いや、たった一曲の間に、僕は彼女に恋をしてしまった。 ……いや、「恋」というのは少し大げさかもしれない。 ただ、確実に言えるのは、僕は彼女のことが気になっているということと、4月から僕らは離ればなれになるということ。 ==================== 彼女は、大学入学時からの友人だ。 学科もサークルも同じというと、少しばかり近すぎる距離感にも聞こ

          いまさら好きになったって

          旅って、行ってみたら大したことないかもしれないけど、

          一週間でドイツとフランスを巡る旅が終わり、日本に帰って来て数日が経った。 僕の生活は、旅に出る前からなんら変わっていない。悲しいほどに。 別にたった一週間の旅で急に変われるとは思っていなかったが、それにしても変わってなさすぎて、虚しくなってくる。 一日のふとした瞬間に、あの旅に行く価値は本当にあったのかを考えている自分に気付く。 もちろん楽しかった。ずっと憧れていた土地に行けて、綺麗な景色を見て、美味しいものを食べることができた。 けれど、やはり釈然としないところもあ

          旅って、行ってみたら大したことないかもしれないけど、

          「思想」が僕を僕たらしめる

          パリに移動して最初に訪れたのは、ルーブル美術館であった。 もちろん、モナリザやミロのヴィーナスもお目当てではあったが、僕にはそれ以上に見たい絵があった。 それが、ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』 フランス革命の最中に、自由の獲得を求めて市民が蜂起した、いわゆる「栄光の3日間」を主題に描いた。 高校の世界史で習ったときから、ダイナミックな構図とタッチが好きだった。 しかし、実物を見るにあたって作品について調べてみると、さらに深い意味があることを知った。 ドラクロワもま

          「思想」が僕を僕たらしめる

          「ここが私の another sky」

          今回のヨーロッパ旅行は、ドイツ・ミュンヘンから始まった。 実は、今回のヨーロッパ旅行も、発端はドイツへの憧れだったのである。 煌びやかで芸術的な教会建築、趣ある伝統的な街並み、自然と共存する農村風景。この3つが高次元で融合し、さらにソーセージとビールを擁するドイツという国は、僕を惹き付けるには充分すぎた。 そんなドイツで3日間過ごした訳だが、今日で一旦お別れして、僕はパリへと移動する。 パリへと向かう飛行機の中で、不思議と涙が出そうになった。 たった3日間の

          「ここが私の another sky」

          世界を愛するために、旅へ行く

          なぜ人は旅をするのか。 いま、1週間のヨーロッパ旅行に来ている。 ヨーロッパにも一人旅にも、ずっと憧れていた。いつかヨーロッパをひとりで巡るという幼い頃からの願いをついに叶えた。 そのはずなのに、なぜか気分は最高!というわけにもいかず、心のどこかに影が落ちていた。 今まで年1回ぐらいは海外旅行をしてきたが、そもそも自分は元来インドア派なのである。今までの海外旅行は、やや重たい体に鞭打ってミーハー心だけで行っていたのだが、やはりいつも物足りなさや虚しさを感じてしまう自分

          世界を愛するために、旅へ行く