緑の桜

散歩に出掛けた。息の詰まるような毎日にうんざりして。

家を出て右と左どっちに歩こうかしらなんてことに迷うぐらいあてのない散歩だ。今日は左に歩き始めることにした。
都会に引っ越してからおよそ1ヶ月。しかも家からはほとんど出ていない。はじめて見る街並みを眺めながら歩く。

20分ほど歩いて見えてきた石階段を登り、住宅街を抜けてまっすぐ歩くと、桜並木を見つけた。
桜並木と言っても、花は完全に散って、緑一色になっている。
桜らしさは全くなかったが、今の僕はこっちの方が気に入った。

目にやさしい色とは思えないぐらい、突き刺さるような鮮やかな緑。
綺麗に晴れた青空のとのコントラストも相まって余計に眩しい。
木漏れ日、風、そして緑から感じるマイナスイオン。あらゆるものに全身が洗われるような気分になる。

今年の春は桜が見えなかった。
しかし、緑の葉が生い茂った桜の木は、力強い生命力で僕の新生活を励ましてくれるような気がした。

不安の中に灯る希望の色は、緑色をしているのかもしれない。

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