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初夏を感じる140 letters

こんにちは。
Twitterでは140 letters という名で、140字の小説やエッセイを投稿している者です。
だんだん暑くなったり、雨の日が増えたりと、春の終わりと夏の近付きを感じる季節になりました。
そんな爽やかな季節の心地よさを感じられそうな140字小説/140字エッセイを書いたので、変わりゆく日常に疲れたときにでもご覧ください。

breeze

この時期の風に吹かれるのが好きだ。自分が主人公みたいな気分になれるから。昼は清涼飲料水のCM、夕方はドラマのワンシーン、夜は小説の一節……自分に酔ってしまうぐらい心地いい風が、今年も吹いてきた。



夜風の心地

夜風が熱を帯びてきた。あまりにも気持ちよくて、今夜だけひっそり外に出かけてみる。「世界にふたりだけになったみたい」なんて言いながら、少しだけ離れて歩く。そばにいるのに触れられないもどかしい距離感も、今日はこの夜風のおかげで心地いい。



静かな夏

夜風の暖かさに、夏が近づいているのを感じた。今年の春が静かに終わったように、きっと夏も静かに過ぎてゆくのだろう。浮ついた気分になれないのは残念だけど、見栄を張らなくていい夏というのも、一度くらいは悪くない。



日曜日、昼までベッドでゴロゴロしていたら、ふと部屋が暗いことに気付いて、カーテンを開ける。よく晴れていたから窓も開けてみたら、世界が変わったように爽やかな風が入り込んできた。
なんで今までこの窓を開けなかったんだろう。すぐ手が届くところにあったのに。



カルピス

昼下がりの散歩中、家の近くの自動販売機で、250mL缶のカルピスを見つけた。久しぶりに一本買って歩き出す。幼い頃、父と芝生広場で遊ぶたびに買ってもらっていたのを思い出す。汗で火照った顔に冷たい缶を当てるのが好きだった。一口流し込んで感じたのは、あの頃と違う甘酸っぱさ



若楓

近所の公園で、楓の木が緑の葉を茂らせている。秋を待たずとも今が一番美しいんだと主張するように、凛として力強く立っている。木漏れ日をたたえ、青々とした生命力を放つ初夏の若楓は、僕に何か伝えたかったのだろうか



五月雨

「五月雨」
そんな言葉が似合う、さわやかな雨だと思っていた。涼しくて、しっとりしていて、今日という日に潤いをもたらしてくれているようだ。まさか五月雨が、旧暦五月の梅雨のことを言うなんて。そんなことはつゆ知らず、今日も五月雨を爽快に歌いあげた曲を聴いている。



雨上がり

雨上がりのアスファルトの匂いがすると、この匂いが好きだという一節が国語の教科書に載っていたのを思い出す。「雨上がり」という言葉が好きだ。雨が止まるだけじゃなく上がるところに、物語を感じる。ただの晴れの日とも違う。雨上がりの日は、少しだけ地球を身近に感じられる。


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