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【関東大震災と朝鮮・中国人虐殺】~あれから100年~ 日本社会は変われたのか?

1923年の関東大震災から今年で100年。各地で追悼行事や当時を振り返る集会が行われる。100年前のあの日、警察や政府が流したデマを信じ、日本人が行った朝鮮、中国の人々への虐殺行為への謝罪や償いはいまだなされていない。現在も政府や行政はこの問題を隠蔽する。最近の例では、小池百合子東京都知事が虐殺被害者の慰霊に使う予定だった公園の使用を不許可にした。私たちに問われていることは何か?
被害者たちに連なる同胞の思いを聞いて、日本人は改めて考えねばならない。

(編集部)

朝鮮人強制連行を記録する会  金 治明

 1923年9月1日午前11時58分に、相模湾北西部を震源地とするマグニチュード7・9の大地震が起こった。この地震で東京・横浜および関東地方では、家屋の3分の2が火災で焼失し、死者は9万9331人、負傷者は10万3733人に上った。
 運悪く震災時はお昼時で、食事の準備で炊事する多くの家庭から火事が起こり、火災を大きくしてしまった。震災による余震が続き、人々の不安は増すばかりだった。
 だが、絶対に忘れてはならないことは、この大地震の混乱のドサクサに紛れて軍隊、警察、自警団によって社会主義者や労働組合の活動家たちが殺害されたこと。そして「朝鮮人や中国人が、井戸に毒を入れた」「朝鮮人が暴動を起こした」「(朝鮮人、中国人らが各所に)火をつけ(日本人の家から物資を)略奪、(女性たちを)強姦している」「(朝鮮人、中国人などが)爆弾を持っている」などの流言飛語により、朝鮮人約6000人、中国人700人以上が虐殺されたことだ。
 これらは9月1日の夕方から東京や横浜など、関東各地に流布された。重大なのは単なる民衆の流言飛語ではなく、日本の官憲から発せられたものであることだ。民衆に朝鮮を植民地支配し、強烈な差別意識を植え付けていたからだ。そして帝国政府は軍隊、警察力を投入し、民間人は自警団を組織し、多数の朝鮮人、中国人を虐殺した。
 このジェノサイドから今年9月1日で100年。ちなみに、日本政府は9月1日を「防災の日」として、自衛隊、警察が主導し、海上保安庁、消防庁などが米軍と連携して防災訓練に名を借りた「有事」を想定した訓練を行っている。その目的は、国内の「内乱鎮圧」と「朝鮮有事及び中国侵略」を射程に入れた「治安出動演習」を、全国的に行うことだ。

朝鮮敵視の日本にG7も同調

 岸田政権は、朝鮮国による人工衛星を「事実上の弾道ミサイル」と決めつける。「衛星」発射後に飛行物体が日本領域に落下する事態に備え、石垣、宮古、与那国、那覇自衛隊駐屯地にPAC3や迎撃ミサイルを搭載したイージス艦を配備し「破壊措置準備命令」を発令した。どこの国の衛星発射実験に対しては、一度も「破壊措置命令」など出されたことなどないにも拘わらずだ! このような世界的に見ても異常な「破壊命令」に対してマスコミもこぞって危機感を扇動しており、大いなる陰謀を感じてしまう。
 軍事専門家は、「ロケットから分離した落下物を、PAC3で撃ち落とすことは不可能だ」と言う。もし、その万が一に備えるならば、韓国が今年5月25日に発射した人工衛星も今回の飛行ルートとほぼ同一であり、マスコミは報道すべきだったが、岸田政権やマスコミは一切報道しなかった。
 ましてや政府は、PAC3の配備や「破壊措置準備命令」の発令はしなかった。韓国や日本など、アメリカ追従の国に対しては、公表もせずに「人工衛星」を打ち上げても日本政府やマスコミは報道すらしないが、朝鮮国の人工衛星の発射に対しては「国連安保理決議違反」と大げさに騒ぎ立て、脅威を煽っている。いかなる国であっても人工衛星を打ち上げる権利を有しているにもかかわらず、日米韓国等(の国)は強力な「制裁措置」を取り続けている。
 アメリカ、日本、韓国、G7諸国など、かつての朝鮮、中国、アジア諸国の植民地宗主国は、このようなダブルスタンダードを平然と認め、制裁措置を強化している。

政府や報道に騙されるな 朝鮮・中国人を敵視するな

 これら欧米帝国主義国は、「自由で平等な開かれた民主主義国家と法の支配」を標榜しているが、「北朝鮮バッシング」を煽り、積極的に加担している事実について、マスコミは一切触れることはない。
 朝鮮国は国際機関に人工衛星の発射実験を公表し、日本政府にも衛星の飛行ルートを通知した。しかし、それに対してあたかもミサイルが北海道から沖縄までの日本の上空を飛行し、着弾・爆発するかのような、根拠もない意図的な報道がなされている。
 日本政府は朝鮮国の人工衛星の打ち上げ実験を「人工衛星と称する弾道ミサイル」と決めつけ、マスコミを上げて大キャンペーンを張り、全国にJアラートを鳴らし、新幹線まで止めた。
 そして、市民たちに「人工衛星と称するミサイルが打ち上げられた模様です。頑丈な建物の中に入るか、地下室に避難し、身の安全を確保してください」と何度も何度も繰り返し放送した。
 岸田政権とマスコミはテレビ、ラジオ、携帯、スマホや地域の防災無線を使い、あたかもミサイルが着弾するかのように避難を呼びかけ、危機感を煽っている。
 このようなデマキャンペーンは、関東大震災時に流された「朝鮮人が攻めてくる、井戸に毒を投げ放火をしている」とのデマの「流言飛語」に底通するものがある。
 日米韓国政府は朝鮮半島、中国近海の領域に接近し、ミサイルを発射し、核弾頭搭載可能な戦闘機を飛ばし、朝鮮、中国を攻撃する合同軍事訓練を連日強行している。
 これらの戦闘行為は朝鮮、中国に対して軍事的圧力=挑発を行なっているのだ。そして、「台湾有事」「朝鮮危機」を煽動し、(日本政府の)ミサイルの配備を正当化し、戦争態勢作りと軍備強化をしている。
 しかし、マスコミ等はこの米日韓の軍事訓練を正しく、客観的公正に報道してはいない。
 そして、朝鮮国がアメリカ、日本、韓国に軍事訓練の中止を申し入れても無視している。さらに悪質なことに、朝鮮国が自国防衛のために「戦闘態勢」を構えると、あたかも朝鮮国が米日韓国に攻撃して来るかのように、大袈裟に騒ぎ立てている。
 そして、岸田は日本国民に「朝鮮、中国の核ミサイル攻撃から守る」と国土防衛意識と日本民族主義を煽っている。そしてそれは、関東大震災時と同様に、朝鮮人と中国人への民族差別排外主義を組織した侵略戦争体制の構築なのだ。
 私たちはもう(政府やマスコミに)騙されてはいけない。私たちは関東大震災で何を反省し、何を学び改めていくべきか? その歴史的事実を謙虚に受け止め、二度と朝鮮、中国人に対して大虐殺を、その間違いを犯さないようにすることが大切なのではないか。

(人民新聞 9月5日号掲載)

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