アフターコロナ3~これからの国の運営と企業経営
現在、様々な方面に甚大な影響を与えている新型コロナウィルス。
いわゆる「コロナ禍」と呼ばれるこの問題は長期にわたると予想され、恐らく1年~数年をかけて徐々に収束をしていくと考えられている。
コロナ問題において経営者が直面する課題は財務的要因(資金繰り)や営業的要因だけではない。(無論、それらが最も大きいが)
現在、企業の行っているいくつかのコロナ問題への対応が、後になって経営、特に経営者のリーダーシップや求心力に大きな影響を与えるだろう。この困難な状況下において、優れたリーダーシップを発揮し、従業員の忠誠心を味方につける経営者もいれば、保身をむき出しにする事でそっぽを向かれてしまう経営者も出る。
悪い影響は総じて遅れてやってくる。従業員はコロナ禍においては転職が不利な為、直ぐに会社を辞める、という事は無く、大人しく従っているように見えるだろう。しかしコロナ問題が収束し、経済が回復しはじめる数年後、忘れた頃に一気に悪影響が出る事が懸念される。
経営者が問われる対応は多数あるが、以下の三つに注目してみたい。
①従業員及びその家族の生命の安全への配慮
②リモートワークへの対応の柔軟性
③アフターコロナを見据えた時代の変化への対応
具体的に一つ一つ検討してみよう。
①従業員及びその家族の生命の安全への配慮
パーソル総合研究所による、緊急事態宣言後の在宅勤務の導入率について
テレワーク実施率は全国平均で27.9%。1か月前の13.2%に比べて2倍以上
日本政府による緊急事態宣言の発令に伴い、劇的(約2倍)にテレワーク実施が増加している。かなりの動きが認められる。しかし、まだ全体で30%に満たない。これは一体どういうことなのか。
中小企業の場合、IT環境等が整備されておらず、実施が難しいという側面は否定出来ないだろう。完全な実施は大企業であっても難しいのは言うまでもない。本来、在宅勤務制度は慎重に吟味しながらIT部門と人事・総務部門が連携しながら進めなければならないプロジェクトである。それ自体は、従業員も理解している。
問題は経営者としてのスタンスがどこにあるか、だ。
難しい中でも、何とか週1回でも2回でも、在宅勤務を進めようとする努力の姿勢があるかどうか、だ。情報化社会において、リモートワークを実施する為の技術の情報はたくさんある。サービスを提供するコンサルティング会社も多数ある。無論、政府も補助金を出す姿勢がある。その中で何も着手しないのは余りに杜撰と言わざるを得ない。少なくとも事務系の仕事で在宅勤務を一切認めていない会社は、新型コロナウィルスに従業員が罹患した場合、安全配慮義務違反になりかねない。目先の利益を度外視してでも、従業員を守ろうとする姿勢があるか否かで経営者の度量が測れる。これは別に会社をつぶしても良い、という事ではない。スタンス、姿勢の問題だ。不確実性の高い状況下において、「何が正しいか(利益を得られるか、おいしいか)」ではなく、「自社は何を大切にするのか」という矜持を持っているかどうかが問われている。
②リモートワークへの対応の柔軟性
実際に突貫工事的に在宅勤務等のリモートワークに突入した企業が多いだろう。その中で、状況に対応できず、オフィス勤務を基軸とするマネジメントのパラダイムに囚われている経営者や管理職が多数いるようだ。
それが「在宅勤務は従業員がサボるから監視が必要」という考え方だ。
従業員は見張っていなければサボる、と考えている事自体、時代遅れだ。サボるのは魅力的な仕事を与えていない、仕事の使命を明確にしていない、アウトプットイメージを共有していないからに他ならない。部下との人間関係、信頼関係を構築できていない証拠だ。それを監視システムで生産性を高めようという発想自体が貧相だと言わざるを得ない。
他にも、直接顔を見て話さないと意思疎通が出来ない、というのがある。これも非常に状況に対応できていない考え方だと言える。既にテクノロジーは進化し、かなりのコミュニケーションをオンライン上で取れるようになっている。一方、同じ空間での体験を共有する事はもっと別の価値を生み出そうとしている。対面で会う価値がよりシャープに研ぎ澄まされて要求されてくる。対面で会う価値そのものは何一つ失われていない。一方で、対面でなくても出来る事はたくさん増えていて、その方がコストパフォーマンスからみて生産性が高いのだ。
リモートワークを始めとするオンラインでの意思疎通に関するそれ専用の考え方、作法に企業として順応できるか否かで、才能ある優秀な人材を自社に確保出来るか決まってくる。在宅勤務は「本気でやろうと思えば(完全でないにしてもほぼ)出来る」とわかってしまったので、毎日会社に行く必然性はもはや無くなった。コロナ後は働き方改革が一層推し進められることになる。当然、対応出来ない会社は淘汰されていくだろう。
③アフターコロナを見据えた時代の変化への対応
これは以前のnoteで書いた記事に近しい内容だ。
コロナ問題が私たちに問いかけている事は何か?
既に時代は20世紀の古いパラダイムから、新しいパラダイムへとシフトしつつある。新型コロナウィルスが世界や社会に及ぼした様々な経済的打撃と共に、人々にもたらした新たな気づきの存在を察知し、そこに照準を合わせて経営できるか、が重要な焦点だ。これは会社経営だけでなく、国の政治も同じだ。今、支持を集めている政治家もいれば、批判を浴びている政治家もいる。政治家の言動を観察すれば、どのようなパラダイムに立脚して発言しているかがわかる。これは個々の政策の妥当性とは異なり、政治的支持に影響する事だ。もはや利益(誘導)重視、拡大重視、規模重視といった20世紀のパラダイムの延長線上に21世紀の経営は無い事を当たり前のこととして自覚していなければ、恐らく2030年までの時代を乗り切ることは出来ないだろう。
そういう時代の節目に、私たちは今まさに立ち会っているのだ。
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