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国立台湾大学に乱立するMBAの全体像をテキトーにまとめてみました

こんにちは。会社員 兼 国立台湾大学Global MBA(以下GMBA)現役生のJinです。

「マジメなやつは極端から極端に走る」

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正義感が強く度が過ぎるほど潔癖で、あることをきっかけに正反対に走った仙水忍に対しての浦飯幽助のコメントです。

世代的に幽遊白書のこのセリフを思い出すことがあるのですが、当時小学生であったボクはこの言葉に感化されて何事もテキトーにこなすようになったのかなーと思います。まあ、これは今後のなにかの伏線であるはずもなく、言ってみたかったから言っただけという話なのですが。

そんな真面目ではあるものの力を抜くところは抜くメリハリがあるやつらが多く集まり、最近注目度が高まる国立台湾大学GMBAですが、実は台湾大学にはGMBAだけでなく、多くのMBAプログラムがあり、それぞれ特色を出しているので、台湾大学内でもどのMBAプログラムがよいのかという検討も出来るかと思います。台湾大学内でもMBAがいろいろあって、メリットデメリットを勘案したなかで結局GMBAがなんでいいのというところまで解説できればと思います。

他MBAと多少の交流はあるのでなんとなく知っているという部分はありますが、他MBAの授業を受けたわけではないので、表面上の情報にならざる得ないところもあることをご了承ください。

まず、組織図として台湾大学の下に管理学院(College of Management)があり、ボクの所属するGMBAは管理学院内のひとつのコースです。管理学院には管理系の学士・修士・博士が含まれていて、管理学院内を厳密に細分化するとまとまりきらなくなるので、ここでは学士と博士は除いた「修士のみ」をまとめます。

Global MBA(企業管理碩士專班/通称:GMBA)

台湾大学及び管理学院で唯一、全ての授業を英語で提供しているMBAプログラムです。他の記事で詳細は説明しているので、ここではあっさりいうと、台湾大学管理学院における外国人の受け皿的な修士課程で、「海外への知名度向上戦略における顔となるプログラム」ともいえます。留学生向けの台湾MBAとして知名度トップ、台湾人からの知名度も同大学EMBAと並んでトップ。授業料およそNT$55万(約200万円)、1学年定員60名。詳細は下記のリンクをご参照ください。

国立台湾大学(NTU) Global MBAの日本人在校生サイト

GMBA公式ホームページ

2021年合格者 新米管理職弾丸トラベラーさんのブログ

2021年合格者 Jasmineさんのnote

2021年合格者 トーイエさんのnote

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Executive Master of Business Administration(管理學院碩士在職專班/通称:EMBA)

1997年に成立した高給管理職向けのMBAであり、台湾大学管理学院の稼ぎ頭、花形MBAです。基本的に授業は中国語ですが英語も使います(欧米の教科書や資料を使うことがよくあるそうです/以下、中国語コースは同様)。基本的にはローカル向けのプログラムですが、外国人も入学可能です。ミニマムの職歴が10年ですが、実際の年齢層は31-40歳16%、41-50歳58%、51-60歳24%、61歳以上2%と、職歴でいえば20-30年のシニアマネジメントが中心です。GMBAもEMBAと交流がありますが、EMBAと比べたらGMBAはジュニアクラスと言えます。GMBAもディスカッションは多いですが、経験豊富なシニアが集まるEMBAは座学を極限まで減らして実践的なディスカッションがさらに多く、人脈形成に主眼をおいていると聞きます。日本人卒業生もいるようです。EMBA生徒専用ラウンジが明らかにGMBAより高級です。

生活費等を除く卒業までの学費と諸費用はおおよそNT$200万(約780万円)となるので、香港やシンガポールのMBAと同水準かそれ以上です。内約は学期毎の登録料NT$168,000×6学期+単位毎NT$11,130×卒業必要単位数36単位+その他(クラス費、交際費、雑費)約NT$50万程度とのことです。ちなみにGMBAは1年2学期ですが、EMBAは1年に3学期という違いがあります。

EMBAは下記のようにさらに細分化されています。

商學組/定員43名 會計與管理決策組/定員24名 財務金融組/定員30名 國際企業管理組/定員43名 資訊管理組/定員24名
2021年度EMBA募集概要 (1台湾ドル/3.92日本円 2021.05.13以下同様)

日本人卒業生のブログ発見しました⇒ 台湾大学院受験奮闘記 1 ~ まずEMBAとは何かから

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格付け機関Eduniversalでは2019年東アジア6位。(2017年同4位)

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Entrepreneurship and Innovation MBA(創業創新管理碩士在職專班/通称:EiMBA)

台湾で唯一の起業家向け3年制のMBAで、かなり独自路線を走っているようです。基本的に授業は中国語ですが英語も使います。乗り入れ可能なGMBAの選択科目でEiMBAの学生とプロジェクトチームを組む機会がありました。台湾人の社会人学生でしたが、普通に英語上手かったです。海外の大学出身者もいるようです。定員30名。応募要件は3年以上の実務経験が必要ですが、年齢層は幅広く20代から50代までいるようです。1年2学期制。働きながらの社会人向けのコースなので必修科目は平日の午後7時から午後9時45分まで、選択科目は週末とその都度。学期毎の登録料NT$33,600×6学期+ 単位毎NT$12,000×36単位=NT$633,600(約250万円)が卒業までに必要な費用の目安です。EiMBA生徒専用ラウンジがGMBAよりおしゃれです。

最新の情報では2021年入学生は男女比半々、平均年齢36歳、採用された学生は非常に優秀で多才であり、情熱と起業家精神を持ち合わせている。有名大学を出ているというだけでは採用に直結しない、つまりはどれだけ起業家に向いているかで採用しているとのこと。

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臺大EiMBA介紹

格付け機関Eduniversalでは2019年世界49位

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Master of Business Administration(工商管理學系暨商學研究所碩士班/MBA)

つまり一般的なMBAです。フルタイムの学生のみで、就業経験の条件なしなので学部から直接入学可能です。基本的に授業は中国語ですが英語も使います。海外育ちの台湾人も在籍していて、こないだTSMCに就職決まってました。留学生も募集しています。MBAの生徒がGMBAのTA(ティーチングアシスタント)をしていてゴルフイベントなどでも交流しました。定員約60名。ボクの理解が正しければ卒業までの合計費用は約NT$31万(約120万円)です。

内約:授業料と費用(基本単位料を含む)NT$51,580×4学期+学雑費NT$25,440×4学期 +学校間選択科目の各単位料金NT$3,220(もしあれば)

概要:商學研究所修課說明(108學年度起入學新生適用)

修士及び博士課程の標準学費表 碩、博士班每學期學生收費標準

格付け機関Eduniversalでは2019年東アジア9位。

Master of Accounting(會計學系暨研究所碩士班/別名:MBA in Accounting)

会計に特化したMBAです。基本的に授業は中国語ですが英語も使います。就業経験は問わないと理解しています。ここの学生2名がGMBAの会計クラスでTAをしていたので交流がありました。社会人学生で親切且つ普通に英語も上手でした。理解が正しければ卒業までの合計費用は約NT$31万(約120万円)です。

内約:授業料と費用(基本単位料を含む)NT$51,580×4学期+学雑費NT$25,440×4学期 +学校間選択科目の各単位料金NT$3,220(もしあれば)

京都大学からダブルディグリープログラムで日本人留学生の受け入れ実績もあります。日本人留学生の記事

修士及び博士課程の標準学費表 碩、博士班每學期學生收費標準

格付け機関Eduniversalでは2019年東アジア3位。

Master of Finance(財務金融學系暨研究所碩士班/別名:MBA in Finance)

財務に特化したMBAです。基本的に授業は中国語ですが英語も使います。
就業経験は問わないと理解しています。理解が正しければ卒業までの合計費用は約NT$31万(約120万円)です。

内約:授業料と費用(基本単位料を含む)NT$51,580×4学期+学雑費NT$25,440×4学期 +学校間選択科目の各単位料金NT$3,220(もしあれば)

格付け機関Eduniversalでは2019年東アジア4位。

Master in International Business(國際企業學系暨研究所碩士班/別名:MBA of International Business)

国際ビジネスに特化したMBAです。基本的に授業は中国語ですが英語も使います。就業経験は問わないと理解しています。理解が正しければ卒業までの合計費用は約NT$31万(約120万円)です。

内約:授業料と費用(基本単位料を含む)NT$51,580×4学期+学雑費NT$25,440×4学期 +学校間選択科目の各単位料金NT$3,220(もしあれば)

格付け機関Eduniversalでは2019年東アジア8位。

MBA of Information Management(資訊管理學系暨研究所碩士班)

情報管理に特化したMBAです。基本的に授業は中国語ですが英語も使います。就業経験は問わないと理解しています。卒業までに必要な単位数29。定員58名。ボクの理解が正しければ卒業までの合計費用は約NT$31万(約120万円)です。

内約:授業料と費用(基本単位料を含む)NT$51,580×4学期+学雑費NT$25,440×4学期 +学校間選択科目の各単位料金NT$3,220(もしあれば)

格付け機関Eduniversalでは2019年東アジア4位。

國立臺灣大學EMBA 臺大-復旦EMBA 境外專班課程

3分の1を国立台湾大学で、3分の2を中国の復旦大学の2か所で学ぶ越境EMBAです。基本的に授業は中国語です。卒業単位数36。中華圏で国を跨ぐプログラムなので現在の状況で動きずらいというのはあります。費用は恐らく上述のEMBAと同等かそれ以上と理解しています。

卒業生がロータリークラブの会長をしていて、こちらの台復EMBA卒業生で作ったエンジェル投資家が集まるスタートアップアソシエーションの資料のリンク貼り付けます。

管理学院以外で台湾大学に存在するその他MBA

管理学院ではなく元々社会人向けの夜学を前身とする進修推廣學院のProfessional Master's Program in Business Administration (事業經營碩士在職學位學程 / 通称:PMBA) 基本的に授業は中国語で行われ、社会人経験3年以上が条件。働きながらを前提に授業は週末が中心。1年3学期制。定員30名。

NTU SPECS 臺灣大學進修推廣學院│NTU School of Professional Education and Continuing Studies

実は深堀するとさらに他の院からもMBAも出てきたのですが、キリがないのでこの辺にしておきます。。。農業経済EMBAとか。。。中国語読むの疲れました。。。。

まとめとちょっとした考察

こうして並べてみると台湾大学内にMBAが乱立しているのがよくわかりますね。たくさんあるのは知っていましたが、まとめてみて思ってた以上の乱立具合だったことがわかりました。各MBAの1学年定員は30~60名程度、合計すると500名程です。在学期間が2年と仮定すると同時期に約1,000名のMBA生が在籍することになります。

乱立によるデメリットとして考えられるのは、分散することによってひとつひとつの規模が小さいのでMBA世界ランキングに参加するための資金の確保や宣伝広告費がかけられないということや、台湾大学内でどのMBAがランキングに参加するか競争が起きることくらいでしょうか。ランキングが全てではないですし、高い方がメリットがある側面は否定できないですが、逆にいうと台湾大学MBAは広告宣伝費などが授業料に跳ね返ってきていないともとれると思います。管理学院のMBAは基本的に全て同じ校舎です。

欧米MBAと比べるとだいぶリーズナブルではありますが、台湾大学のMBAは台湾内では最も授業料の高いMBAであり、特にEMBAに関してはNT$200万(約780万円)でシンガポールや香港と比べても同水準か高額です。一方でGMBAに関しては使用施設や教授陣もEMBAとほぼ同じなのでクオリティーが高いにも関わらず卒業までの学費が約NT$55万(約215万円)程度で非常にリーズナブルであるというのは学生にとって大きなベネフィットです。

英語でMBAを学び多国籍な人脈を築きたいならGMBA、中国語が出来てローカルの人脈を築きたいなら選択肢が豊富で専門性を極められるということになります。

また、細分化されているからこそ少人数クラスでアットホームさを保つことが出来るため、結束力は強くなることも考えられます。また他のMBAとも交流があるためより多くの人脈形成のチャンスもあります。

そんなこんなで注目度上昇中のGMBAですが、ツイッターやその他ネット上に台湾大学GMBAの応募可能なTOEICスコアは750や800と記載されているものが散見されます。実際には「台湾大学の留学生向けの条件」としてだしているものと、「GMBAとしての条件」を同時にクリアする必要があるところ、トリッキーなのはGMBAは「大学側が基準を出しているのでGMBAとしては特に基準を設けない」というなんともフレキシブルな姿勢をしているので、授業は英語のみのプログラムであるにも関わらず中国語のMBAプログラムと同じ基準という現象が起きているような気がします。実際の在校生は英語母語レベルの学生が約7割であることや、近年出願者が増えている背景を踏まえるといろいろ乖離があるように感じます。最低基準でも出願は出来るけど合格は保証されていないということになります。

在校生統計データも「ある一時期のデータ」を公式ホームページに記載しているだけであって、近年のデータは反映されていないと考えます。例えばわかりやすいのは公式ホームページ上のStudent profileで「職歴の最大値16年」になっていますが、入学年度によるかもしれませんが、ここ数年は各学年40代、50代の生徒も数人いるので職歴の最大値でいうと30年前後にはなるはずなのですが。。

ちなみに「GMBAはフルタイムの学生のみ」という、GMBA生でない人が言う間違った情報もいくつかみかけますが、少なくともボクは2011年入学で働きながらパートタイムで2014年に卒業したGMBAアラムナイとも繋がっています。

もしかしたら台湾大学内にMBAが乱立していることが外部へ間違った情報が伝わるひとつの原因なのかもしれませんね。


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