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問題解決の決定版!~読書猿『問題解決大全』

ブログ/SNS界隈で人気の読書猿氏が著した、問題解決技法の辞典である。

古今東西37の問題解決技法を並べ、それらの起源を紐解き、俯瞰し、敷衍する。知の殿堂であり、知のツールキットの決定版。
特筆すべきは、本書が、ただ単に手法を紹介するのに留まらず、人類が歴史上いかにして”問題”に取り組み解決を目指してきたかについての一つの通史として成立している点であり、緻密なリサーチに支えられた知識社会学的文献でもあるという点だ。

本書によると、世の中の問題は「驚くほど見過ごされており」「その複雑さは過小評価されている」ものの、「解決難易度は著しく過大評価されており」かつ「解決者自身の複雑さは過小評価されすぎており」「過剰に"手法的"解決が試みられており」「大半はそもそも解決すべきでない」という。

人類の知の歴史はそれ即ち生存への闘争の歴史であり、本書において「問題解決」そのものすらも徹底的に相対化され尽くしたその先に、あまりにも生身で”生モノ”な人間という機構の悲哀が浮かぶ。
人が問題と向き合うとき、向き合う当事者そのものと全き独立した「問題」が存在する、ということは少ない。問題を織り成す全体の中で、問題と常に相互作用する「人間」を捉え、人や認知という切り口からも問題を解きほぐしていくべきとする視点の転換には、深く唸るしかない。

具体的な技法については、もう本書を買って皆さんで読まれるのが良いのだけれど、ひとつだけ。
No.36「ピレネーの地図」。
この項を読むだけでも、本書は十分に元が取れる。別の山の地図でも、無いよりはマシなのだ。

400p、2000円弱のかなり重い本だし、リファレンス的に使えつつも一足飛びに実践的効果を発揮するかは正直かな~り使い手次第な部分も大きい。
しかしそれを加味した上で、過去100冊ぐらいのこの手の問題解決本を読んだ中で、本書がベスト"ソリューション"であるように思う。
長らく個人的マイベストだった名著『イシューからはじめよ』は僅差で首位陥落。

2020/02/26追記:
↓noteで本書の技法No.6「ティンバーゲンの4つの問い」をちょろっと紹介した。



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