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高校と大学の「化学」の接続のむずかしいところのひとつ:電子のようす


はじめに

 過去に大学で教えたのち高校生の学習をサポートし、ふたたび研究サポートで大学生たちと接し、けっこうむずかしいなあとかんじること。それは高校と大学との内容の接続。はっきりいって「化学」に関していくつかおもうところがある。

きょうはそんな話。

つながっていない?

 高校生にはじめて「化学基礎」もしくは「化学」をおしえていて説明しづらいのが各元素の電子軌道や電子スピンに関してのあたりとそれらが関係する化学反応やエネルギー状態のところ。

ここではあまり深入りできない。教科書はじつにさらっと触れているにすぎず、あまりに中途半端。もちろんそれをくわしくやったらほかの単元の時間にさしさわる。ほかももりだくさんだから。

カリキュラムの都合?

 そのあたりは大学の物理化学や量子化学の範疇になる。高・大のどこで切るかはたしかにむずかしい。うまく高校と大学のあいだで繋がらない。高校の内容ではおそらく教わるほうはしっくりこないし、あまりに中途半端な気がする。

ただし高校生がつかう市販テキストのなかにはあくまでも発展として、コラムなどでとりあげる参考書もあるにはある。

発展の範疇ではありながらすんなり理解するには必須ではないかと生命科学をとりあつかう立場でいながら、化学を高校レベルで素養とするならばやはり重要な要素のひとつと思う。

高校のころは

 進学した高校は国公立大学に3けたほど進む学校だったが、このあたりは教わっていた。当時の走り書きのノートの一部。

高校時代の電子軌道と電子スピンの走り書き

大学には化学科を選んだ。ところがあてにしていた高3の化学の教師の授業は支離滅裂で板書もなくメモすらとれずまったく理解がすすまずけっきょく独学だった。その状態で受験で化学の方面をめざそうとしたのだから無謀といえる。上はとなりのクラスの友人からべつの教師のノートを借りて休み時間に走り書きしたもの。

授業はもっぱら中3のころから視聴しつづけた教育テレビ(当時の通称)の高校講座(化学)。この番組を4年間ちかく夜間に見つづけたのが大きい。なにしろ東京の有名な都立高校(西高校など)の先生たちが名をつらね、実験が多くとてもわかりやすかった。

ノートを見直すと…

 高校の友人から借りたノートの内容はなかなかくわしく、しかものちの大学の化学科の最初の授業とうまく接続。その理由は上のように当時の高校のカリキュラムに今はない電子軌道や電子スピンについてとりあげていたから。そのおかげで大学の専門の授業にスムーズにつながり困らなかった。

当時は高校でそつなく授業できていたし、それだけでなく実験も充実していた。納得できずに実験助手の先生にお願いし、放課後におなじ実験をふたたびやったり、関連のものをおこなわせてもらったり。実験助手は化学・生物・物理・地学それぞれにおられていろいろと質問できた。

発展で物理との境界あたりも知って納得(あくまでもとなりのクラスのノートだが)。

高校時代の電子のエネルギー準位にかんする走り書き

ところが現状はそうではない。いろいろな機会をつうじて高校の先生にお話をうかがう。以前と現在とでどうしてちがうのだろうとよく話題にあがる。わたしが聞けた現役の先生方のお話によると、さまざまなこうした発展内容をとりあげる余裕がないという。さらに人員が整理統合され実験に時間が割けずほぼやっていないにひとしい学校が見受けられる。

同時に目をむけたいのが、すでに中学でついていきにくい生徒たち。さらに高校でどう学ばせるかか。化学といえども幅がある。同時にこちらもつねに内容の精査がもとめられる。

内容の選別

 どうもカリキュラムの取捨選択の見直しが必要と思う。大学生たちのようすから補習が必要なのは明白。高校内容をそれなりに履修しているにもかかわらず選んだ学科の内容への接続が科目のみならず教科の段階でおぼつかない。

何をくわえて何をけずるかその選択がむずかしいのはよくわかる。むかしはなかった教科や指導も多い。そのなかでやりくりするしかない。その一方で大学のほうも手をこまねいてばかりでは済まない。

おわりに

 学部学科の教育内容の多くは高校のこうしたカリキュラムの見直しにつねに合致しているとはいいがたいし、改訂が進んでいるとも思えない。旧態依然のままといったほうがいいものも見受けられそう。

高校をはじめとする高等教育をもとめ進学する時代になった。大学をめざす若者もふえた。学力は多様でおこなわれる教育への配慮ももとめられる。

いずれにしてもまなぶのは生徒や学生たち。スムーズに身につけられるのが当然でもとめられる。研究パートのお手伝いをしている先生はみずからテキストを出版されるほど熱心な方。わたし自身がこうして気づいて遠くで声をあげるだけでなく、もっと気づいたことをつたえて、効果的に改善にむけてうごかないといけない。

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