高校「化学」は有機化学の単元で仕上げに:芳香族化合物の音色が聞こえる?
(2024.4.15加筆)
はじめに
春まっさかりのなか。まったくいまの季節とは関係ないのですが、アブラゼミの暑い鳴き声が騒々しかったのに、いつのまにかツクツクボウシが鳴くようになると秋が近づいた証拠です。朝晩が涼しくなってきます。
高校「化学」は有機化合物が出てくると山場です。これから習う人もいるかな。ベンゼン環が出てくると「ああ、化学を勉強してるなあ」という感慨も湧いてきます。有機化合物の話にはいると生活に身近な物質が多いですから興味が出てくるかもしれません。
それに反して有機化合物の名称や構造はより複雑怪奇。ここで化学への好悪がわりとはっきりわかれてきますよね。ルールがわかっておもしろいと思う人がいる一方で、ベンゼン環を見るのもいやというヒトがわたしの友人にもいました。残念ながらそのままおとなになってしまうようですね。
きょうはそんな話。
2次試験はここが山場
さて、なかには化学を大学入試の2次試験まで必要という人もいるでしょう。共通テストで9割以上ほしいという人もいるでしょう。いずれにしても有機化学の分野はその重要ポイント。
そこで、時間のあるいまのうちに芳香族化合物、つまりベンゼンの誘導体(ベンゼンから反応経路で合成できるもの)のさまざまな経路と相互関係を構造式でA4の紙にまとめる作業を進めてください。
「あれっ、それなら学校の先生からプリントでいただいたよ。」それでもかまいません。でも勉強すると「先生のここをもっとこうしたほうが覚えやすいはず」と思うはず。善は急げ、思い立ったら吉日。すぐに実行あるのみ。
大学で化学系にすすんだわたしは、学科のなかまたちのそれぞれが受験の際にそういったオリジナルのものをつくって勉強したと話すのにおどろきました。似たようなことをやっていたようです。
芳香族化合物の反応経路
それでは具体的に説明します。A4の紙のまんなかにベンゼン環を構造式で1cmぐらいのサイズで書きます(このくらいじゃないと1ページに収まりません)。四方にそれぞれおもな反応経路をたどって書いていきます。(この時点でそれほど多くないことに気づくでしょう)
このうちもっとも太い柱(つまりよく出るところ)は、
ベンゼン➡ベンゼンスルホン酸➡ナトリウムフェノキシド➡フェノール➡サリチル酸➡アセチルサリチル酸(もしくはサリチル酸メチル)
の経路でしょう。たとえば、「ベンゼン➡ベンゼンスルホン酸」の➡の上には硫酸を、下にはスルホン化と書きます。以下同様です。この「太い柱」なかのフェノールはクロロベンゼン、クメンからもできますからその経路もいれてください。
そして、
ベンゼン➡ニトロベンゼン➡アニリン塩酸塩➡アニリン➡(➡アセトアニリド)➡塩化ベンゼンジアゾニウム➡(➡1-フェニルアゾー2-ナフトール)➡p-ヒドロキシアゾベンゼン
の経路も重要です。こちらは化学実験でおなじみかな。アゾ色素は色がきれいで実験できたら思わず声が出ますよ。
ほかにもベンゼンからはトルエンやシクロヘキサンの経路もありますよ。
注意することなど
ここで耳の痛い話をひとつ。この経路図ができて満足する人がいますが、なんのためにつくるのだっけ?そう、反応経路を覚えるためですよね。すべて書けるまで肌身離さずもち歩きスキマ時間で覚えましょう。もちろん使う試薬や触媒なんかも随時おぼえてくださいね。
そのうえでおのおのの官能基の特徴を整理したり、各原子の電子の状態(たとえば極性)などを理解すると化学反応の奥深さとおもしろさが格段にじんわりとわかりますよ。もちろん上の化合物名を見て「なんのこっちゃ?」という人は有機化合物の最初のページから読みなおすことをさきにやってくださいね。
それから脂肪族化合物の相互関係も一覧表にできますよ。そちらもやってみてください。一連の合成高分子の合成法もならべて整理するといいかも。
季節がうつりかわり…
クマゼミ➡アブラゼミ➡ツクツクボウシ(地域で違うかもしれません)のように鳴き声で季節がうつろいでいきます。そしてせみの鳴き声が聞こえなくなる頃、夜にはチンチロリンと秋の虫の鳴き声が…。
このころ有機化合物にはじめて接するヒトがじつは多いかも。さまざまな有機化合物のもつ音色を聞きわけられそうですか? この単元、慣れるのにそこそこかかるもの。どうせならば春さかりのいまのうちにこうしてひととおり学んでおくと秋の追いこみが楽になります。
目がなれると有機物質の反応がさまざまな官能基で決まると気づけますね。まるで秋の虫がさまざまな音色で鳴くように。いそがしくなる秋よりも余裕?があるいまのうちのほうがたのしみつつまなべる化学の作業のお話でした。
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