もう何もしてやれない日のために


「抱きなさい 子を」 ~ 浜 文子 ~

抱きしめなさい 子を
育児書を閉じ
子育てセミナーを欠席し

抱きしめなさい 子を
誰にも遠慮せず あなたの子を
しっかりと 抱きしめなさい

抱きしめなさい 子を
母の膝が 子供の愁い(うれい)の
すべてを除く その時代(とき)に

いつか母の膝は 子の悲しみに近づけない日がやって来る
やがて母の手が 子の涙を拭いてやれない日が訪れる

きっと来る その日
子が涙を拭う手に
柔らかな記憶の手が重なるように
痛む子の心が
温かな思い出の膝に包まれるように

母よ 抱きしめなさい 子を
もう何もしてやれない日のために
抱きしめる手が 子の未来に届くよう
幾度も 幾度も
抱きしめなさい

母たちよ
やがて別れる者として
あなたの子を 
しっかり胸に 抱きなさい

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「友達の前では、もう"きゃわちゃん”とか"天使ちゃん”と呼ばないで」

子供がほんの少し大人に近づいた瞬間。
ほんの少し親から離れたその瞬間。


娘は小学2年生。春から3年生。

あと何年、娘と手をつないで歩けるんだろう。
あと何年、おやすみのチューができるんだろう。
あと何年、ぎゅっと抱き締めて「おかえり」って言えるんだろう。

もうすぐ終わる。温もりで伝える親の愛。
もうすぐ終わる。言葉では伝えきれない親の愛。

今のうちに今のうちに。