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通常学級担任のための発達障害児教育入門編6

第5章 Webを使ってみよう

Webにおける特別支援教育コンテンツの活用


特別支援教育の情報化

 各家庭では、すでにインターネットを手軽に利用できる環境が整えられつつあります。こうした環境を利用して、情報を手に入れようという考え方が普及したのは、学校より、家庭の方が早かったように思えます。家庭で携帯電話からスマートフォンの活用へと変化したスピードは、学校でラップトップパソコンがタブレットに変化したスピードをはるかに凌駕していました。
 インターネット上の特別支援教育サイトも当初は、特別支援学校の先生や家庭の保護者向けに特別支援に役立つコンテンツが必要ということで立ち上がっています。インターネットのツールの変化はコンテンツのデジタル化という課題に今も直面しています。インターネットの中で便利なコンテンツを使える環境を作るということはとても多くの時間と資金が必要なものだと思います。先生たちが手に入れたい教材もセキュリティーや校内ルールにより市販のものを購入せざるを得ないことや教育委員会レベルでの購入コンテンツを利用せざるを得ないことは理解できるのですが、どこかで「先生が欲しいと思うコンテンツをすぐに作ってくれる仕組み」(アメリカや中国ではこうしたシステムがすでにできているということを聞いたことがあります。)があればいいのにと思う気持ちがあります。
 教材をコンテンツビジネスとしてとらえ、学校をマーケットとしてビジネスモデルを作ろうとする人たちがいることも理解できるのですが、特別支援教育は多分そうしたこととは相いれることがない部分があるように思います。特別支援教育に関する世の中の認識も大きく変わってきていると実感しています。だからこそという気持ちはあるのですが、長い道のりがまだあるように思います。仕方のないことなのかもしれませんが自宅や公立学校のコンピュータから教育のために必要な情報を得て必要なコンテンツを活用するという当たり前のことができていないネットワーク環境に少し違和感がありました。保護者や教員が必要とするコンテンツの「自発的な活用」が必要だと思います。
 特別支援教育に於けるコンテンツの「自発的な活用」という特性は、ポータルサイト構築当初の保護者ユーザのWebスクーリニングコンテンツの利用に顕著に見られ、「我が子の障害の認知」や「関係機関や学校との協働意識」という意識に大きな変化が見られました。
 一方、職員室の先生たちの机の上にインターネットにつながるコンピュータがおかれているという環境の整備は現在も進行形ですが、特別支援を必要とする各児童の課題の抽出→分析→手だてという流れの中で小中学校では、課題の抽出→分析において、Webにおける特別支援教育コンテンツが有効であるという認識は広がりつつあります。
 筆者らは特別支援教育を必要とする児童・生徒への支援のアプローチとしてWebにおける特別支援教育サポートシステムの構築に関わってきました。
 その中で、学校現場に於けるいくつかの課題とその課題解決の方法として活用できた部分について述べてみます。
 学校・園の特別支援に関わる担任や先生は直接スキルや情報を手に入れたいと思っているのに手に入れにくい環境にある、ということが一つの壁になっていることが理解できると思います。支援体制はできつつあるのですが通常学級ではよほどのことがない限り人と手間をかけられてないという現実があります。
 こうした小学校の通常学級担任が適切なスキルを獲得できないことにより、深刻な課題が派生する場合があるので、まず前段階として、そのことについても少し考えてみます。
 特別支援教育を行う場合に「○○の勉強をしっかり、教えてほしい」というような教科の学習での要請としの構造を持つ場合があることは否めないのですが、そのようスタイルを特別支援教育の支援構造としてとらえることに筆者は少し違和感を持っています。
 特別支援教育は学校だけが担う児童生徒へのサービスではなく本来、社会も家庭でも担うべき視点としての連携が必要であると筆者は考えています。
 義務教育を終えてもなお、親は子を育てなくてはならないという責務があるはずですし、社会もまた、そのための努力は引き続き行うべきことだと思えるのです。医師が患者に施す治療や処方箋の内容を説明するのと同様、特別支援教育においても、実際の授業で使用する教材や教育方法に対する子ども、保護者の方への説明責任が当然生じていると考えられています。
 とりわけ、学習理解の困難な児童・生徒に対する適切な対応がポイントとなるわけですが、特別支援を必要とする児童・生徒への対応を分掌として経験年数の浅い通常学級担任や特別支援教室(通級指導教室や支援学級)の担任を兼務する学校に一人しかいない特別支援コーディネータにその全てをゆだねる場合もあり、そのことには限界があると考えられています。
 そして、最も重要なこととして、通常学級の担任は、学校や先生に対する数多くの要請や、地域社会・保護者への応対などで、間違いなく忙しいのです。若い先生たちの中には教職に就くこと自体が3Kの仕事という意識が広がり負担感を感じる先生も見られ、先生の働き方改革が模索されています。こうした状況の中で通常学級における困った感を持つ児童への対応という新しい状況への転換期がかさなることにより、技術や知見の継承がスムーズに行われていないように見受けられます。だからこそ、こうした「子どもたちへの気づき」をもたれた保護者や支援者、先生へのへの直接的なスキル・情報の伝達手段が必要であると考えWEBサイトの構築等を模索してきました。

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