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【コラム】フランス政府vsアマゾン?! --書籍配送有料化についての攻防

オンライン書店の台頭でリアル書店の数が年々減少している昨今ですが、そのリアル書店の減少を食い止める策の1つとして、2021年12月16日、フランスで新法が可決されました。

可決されたのは「アマゾンの書籍配送料」を巡る新法です。

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●どんな新法なの?
では、その新法とはどういったものなのでしょうか。
注目すべきは大きく下記2つの項目です。

① 書籍の配送には「最低料金」の配送料を設定しなければならない。
② 「最低料金」はフランス政府によって設定される。

つまり、フランスでは今後、フランス政府がアマゾンで購入される書籍の配送料を決定し、それに伴った配送料設定をアマゾンが行うことを義務付けたことになります。

では、なぜアマゾンに対して新法が制定されるに至ったのでしょうか。

●新法設立の背景
2014年にオンライン書店は書籍の無料配送を法律で禁じられました。
これはオンライン書店での書籍割引による優位性を、配送料で相殺することを目的として設立された法律です。

一方、これを受けてアマゾンは配送料をわずか1セント(=0.01ユーロ)とすることで、実質無料での配送を行ってきました。

フランス文化の1つとして考えられているリアル書店を守るために2014年の書籍配送料有料化の法律は制定されましたが、うまく機能していなかったことが今回の新法制定の背景にありそうです。

また、1981年のラング法では新刊書籍の割引価格上限を最大5%と設定されています。
今回の新法で配送料を自由に設定できなくなったことで、書籍の価格競争がより一層困難となりました。

ちなみに、フランス政府が設定する配送手数料は、3ユーロ(約3.40ドル、約390円)から5ユーロ(約5.65ドル、約650円)となる見込みで、顧客が負担することになります。

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今以上にリアル書店、オンライン書店、どちらの書店での購入が安価なのか、到着が速いのか、便利なのか…様々な角度から検討しての書籍購入が行われることが想定されます。

この新法によって、オンライン書店の価格優位性が無くなった場合、リアル書店の売り上げは伸びるのか…注目したいところです。

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