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葬式仏教の研究

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葬式仏教という日本の仏教のあり方を通して、日本の仏教の仕組みをあきらかにします。 高邁な教えから見た仏教ではなく、普通の人が仏壇やお墓に手を合わせるという、人の営みとしての仏教… もっと読む
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#全日本仏教会

8 僧侶を派遣するというビジネスが生まれた理由/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争⑦

8 僧侶を派遣するというビジネスが生まれた理由/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争⑦

 イオンとアマゾンが仏教界と対立した問題で、この両者が異なることがもう一つある。

 イオンの場合は、イオンのお葬式が僧侶を派遣していることは、あまり表に出していなかった(実際は行っている)。ところが、アマゾンの場合は、僧侶を派遣することそのものが商品として提示されたということだ。

 もちろんアマゾンが直接に派遣しているわけではない。前述の通り、株式会社よりそうという会社がその業務を行い、アマゾ

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7 全日仏は何と戦っていたのか?/「イオンとアマゾンをめぐるお布施論争⑥

7 全日仏は何と戦っていたのか?/「イオンとアマゾンをめぐるお布施論争⑥

 お布施をめぐって、イオンとの問題が二十二年に起き、五年後の二十七年、アマゾンとの問題が起きた。同様の問題は、それ以前もその間にもあったのだが、やはりイオン、アマゾンという巨大企業がここに関わることで、仏教界は大きな不安を感じたのは間違いないだろう。

 この二つの問題は、共通する要素が多いものの、中身を見ると、若干の相違点も見えてくる。

 まずイオンで問題になったのは葬儀であるが、アマゾン

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6 アマゾンでお坊さんを呼べる時代/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争⑤

6 アマゾンでお坊さんを呼べる時代/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争⑤

 仏教界がイオンと対立した五年後、今度は、仏教界とインターネット通販サイトのアマゾン・ジャパンとの間で騒動が起きている。

 平成二十七年十二月八日、アマゾンに、法事(年回法要)を行う僧侶を手配できるという「お坊さん便」というサービスが出品された。最初はアマゾンとお坊さんという組み合わせが新奇なこともあって、ネットニュースで取り上げられ、SNSなどで話題になっていたという程度であった。

 ところ

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5 お布施の目安は存在するのか?/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争④

5 お布施の目安は存在するのか?/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争④

 いったんここで、このイオンと全日仏の対立の論点について整理したい。 お布施というものがよくわからない、お布施をいくら包んでいいのか判らずに不安を感じる、といった意見は、以前からずっと言われてきたことである。

 金額がわからなくて不安ということだけではなく、お布施は高いというイメージもある。ただし、何が高いか安いか、ということは、主観的なところもあるので一概に言えないし、そもそもお寺によって金

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4 お布施の目安を歓迎した消費者/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争③

4 お布施の目安を歓迎した消費者/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争③

 全日仏では理事会などで、このイオンによるお布施の目安のホームページ掲載について「営利企業が、目安と言いながらも、布施の料金体系化をはかっていいのか」といった意見が出ていた。そこでさらに加盟各宗派から意見を集約した上で、ホームページ上からお布施の「目安」の削除を求める意見書をイオンに提出したのである。

 全日本仏教会の戸松義晴事務総長(当時)によると、

「布施をどう考えていいか分からないとい

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3 お布施にも明朗会計を!?/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争②

3 お布施にも明朗会計を!?/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争②

 ところが、葬儀社が葬儀費用をいくら明朗会計にしても、葬儀社にとってはアンタッチャブルとも言える、葬儀社が口を出せない領域がある。それは僧侶に渡すお布施である。

 日本では、ほとんどの人が仏教で葬儀を行う。近年は、直葬といって、宗教者を呼ばない葬儀が増えているといわれているが、それでも宗教者を呼ぶ場合、約九割が僧侶を呼び、仏教で葬儀を行っている。

 僧侶を呼んだ場合、当然、お布施を包まな

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