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葬式仏教の研究

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葬式仏教という日本の仏教のあり方を通して、日本の仏教の仕組みをあきらかにします。 高邁な教えから見た仏教ではなく、普通の人が仏壇やお墓に手を合わせるという、人の営みとしての仏教… もっと読む
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#檀家

10 ある一周忌のエピソード(山田太郎の場合)/葬式仏教という宗教①

10 ある一周忌のエピソード(山田太郎の場合)/葬式仏教という宗教①

 山田太郎は、ごく普通の会社員である。

 一年前、静岡の実家に住んでいた母親が亡くなって葬式を行った。父親は十年前に亡くなっていたので、喪主は太郎だった。

 そして今回、一周忌を行うことになった。やはり施主は太郎である。場所は、お墓のある静岡のお寺、お経はそこの住職さんに読んでもらうことになった。

 その日の朝、新幹線で東京から静岡に向かう。太郎と太郎の妻、大学生の娘の三人である。子どもは他

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9 戒名をめぐる仏教と社会のズレ/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争⑧

9 戒名をめぐる仏教と社会のズレ/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争⑧

 実は全日本仏教会では、このイオンとの間に騒動があった約十年前にも、似たような問題が起きている。

 それは平成九年六月二十一日の朝日新聞の朝刊に、浄土宗宗務総長で作家の寺内大吉氏(ペンネーム/本名は成田有恒)と宗教学者の山折哲雄氏の対談が掲載されたことがきっかけだった。

 対談のタイトルは「戒名はいる? いらない?」である。

 対談では、それぞれの立場から、戒名の意義や歴史などについて

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8 僧侶を派遣するというビジネスが生まれた理由/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争⑦

8 僧侶を派遣するというビジネスが生まれた理由/イオンとアマゾンをめぐるお布施論争⑦

 イオンとアマゾンが仏教界と対立した問題で、この両者が異なることがもう一つある。

 イオンの場合は、イオンのお葬式が僧侶を派遣していることは、あまり表に出していなかった(実際は行っている)。ところが、アマゾンの場合は、僧侶を派遣することそのものが商品として提示されたということだ。

 もちろんアマゾンが直接に派遣しているわけではない。前述の通り、株式会社よりそうという会社がその業務を行い、アマゾ

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