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8/29 ニュースなスペイン語 Concierto adaptado:バリアフリーコンサート

Conciertoは「コンサート」で問題ないだろう。

ただし、adaptadoは若干の説明が必要だ。Adaptadoはadaptar(合わせる)の過去分詞で「合わせた」という意味。

ということは、concierto adaptadoでは「いろいろな境遇の人ひとりひとりに合わせた」という含意だろうから、「バリアフリー」という訳に落ち着く。

「バリアフリー」に当たる表現は他にもあって、「sin barrera(障壁のない)」とか「accesible((皆が)アクセスできる」などをよく見かける。

今年も音楽の祭典「ソノラマ・リベラ(Sonorama Ribera)」が開催された。

ソノラマ・リベラは毎年8月(今年は10日〜14日)、カスティージャ・イ・レオン州(Castilla y León)で行われる。

今年は約150組のアーティストと14万人を超える観客を動員したと言われている。

また、2012年には、スペイン国内のフェスを表彰するイベントで「最優秀賞(Mejor festival de España)」を受賞したことがある。

名実ともに、スペイン最高峰の音の祭典だ。

例えるなら、スペイン版フジロックフェスティバル。

今年で25回目(25a edición)を数えるソノラマではバリアフリーを意識した試みが充実していたという。

ところで、スペイン語では障がいのある人を「personas con discapacidad;~ discapacitada」と表現するが、「persona con movilidad reducida(行動が制限されている人)」という表現も見かける。

閑話休題。

ソノラマ・リベラの会場には、障がいがある人たちのためのスペース(zonas accesobles)やバリアフリートイレ(baños adaptados)が配備されていたのことだが、他にも、いろいろな工夫があったそうだ。

聴覚に障がいがある人たちのために手話通訳(intérprete de lengua de signos)を付けるのは日本でも広がり始めた傾向のひとつ。

また、脳性まひ(parálisis cerebral)を患う人のために、振動ベスト(mochila vibratoria(写真))なる器具の用意もあったという(実際にコンサートで貸し出されたものと同一かどうかは分からないが…)。

Mochilaをここでは「ベスト」と訳したが、辞書に出てる意味は「リュックサック」。実際、腕を通して背負う感じ。

小生は日本でこのような器具を付けるコンサートがあるかどうかは、寡聞にして知らないが、なかなかのアイデアだ。

ゲームで没入感を味わうためのアイテムに、VRスーツというのがあるが、これに似ていて、楽器の音やアーティストの声を振動にして、脳性まひの人たちに伝える。

あるアーティストは次のように話す。

音楽を聞くことは権利であり、必要なこと。音楽は感じるものなのだから、音が聞こえるということだけに当てはめてはダメだ。だから、みんなが音楽を楽しむことができなければならない。音が聞こえても、聞こえなくても、だ。音楽は表現し、感じ、そして、伝えることなんだ(Escuchar la música es un derecho y una necesidad. La música es un sentimiento, no se puede encasillar solo como algo sonoro, por eso todo el mundo debe poder disfrutar de ella: escuches o no. Música es expresar, sentir y transmitir)

清々しい言葉だ。

太字にした一節は「音楽」を「スポーツ」や「学び」、「仕事」に変えても良い。

ソノラマ・リベラの主催者は今年のコンサートは100%バリアフリーと言うには「まだ、時期尚早(todavía es pronto afirmar)」としながらも、来年こそは「本当の意味での(de verdad)」バリアフリーを目指すと意気込んでいる。

いろいろな問題が山積のスペインだが、こういう優しい眼差しがある人たちがいる国だ。まだまだ安泰だ。

写真は人気シンガーソングライター(cantautora)のロサレン(Rozalén(左))と手話通訳者。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20220828/apuesta-festivales-sonorama-tumbar-barreras-frenan-su-musica/2398202.shtml