10/25 ニュースなカタルーニャ語 Jo innovo:私の発明
本シリーズ始まって以来、初の試み。カタルーニャ語を取り上げてみた。
よくよく考えてみれば、スペインは多言語国家なのだから、この国を射程に収めた記事を書く以上、スペイン語以外も取り上げるのが本筋。今後はガリシア語とかバスク語も機を取り上げようかしらん。
さて、タイトルに挙げた「私の発明(Jo innovo(直訳は「私が発明する」))」はカタルーニャ州のバルセロナにあるバル・デブロン公立病院(Vall d’Hebron)と、大手薬品メーカーのロシュ・ファーマ(Roche Farma)が共同開催している発明コンクール。
今年で4年目(cuarta jornada)を数えるコンペの授与式が21日、バル・デブロン病院で開催された。
発明、と言っても、主催母体を見れば想像つくが、広い意味での医療に関わるもの。
4つのカテゴリ(categorías)に分かれている。
①患者と家族のケア(Atención centrada en el paciente y la familia)
②専門家の能力開発と福祉(Talento, desarrollo y bienestar profesional)
③持続可能性と社会的な責任(Sostenibilidad y responsabilidad social)
④組織、医療の質、安全(Organización, calidad y seguridad)
60を超える様々な発明から、最終決戦まで勝ち残った12名(12 finalistas)は各1票、そして、専門家(experto)たちから成る審査員(jurado)は計17票を投じることができ、4つのカテゴリからそれぞれの優秀賞、さらに、最優秀賞を1人を、選出する。
今年の最優秀賞はカテゴリ①の「小児科病棟患者に対して、血管カテーテルを挿入する際に、その不安を解消するためのアプリ開発(una aplicación para humanizar la colocación de catéteres venosos en los pacientes pediátricos)」というもの。
小生は医療については門外漢だが、親父がかつて心臓カテーテルを入れていたこともあり、あの大仰な管や装置がまだ印象に残っている。そのためか、今回の記事にハッとした。
大人はともかく、若い人(adolescentes)や それよりもっと小さいこどもたち(preadolescentes)は、いろいろな器具を見れば、さぞかし、不安を感じるかもーー。
そんな優しいまなざしは、やはり、看護師(enfermera)から出る。今回、最優秀賞を射止めたアイデアは、至って、単純明快。
動画を通じて、装着するカテーテルについて、あらかじめ説明をすることで、患者の気を紛らわし、リラックスさせる(distraer y relajar a los pacientes a través de vídeos donde se les explica previamente la técnica para colocarles un dispositivo)ーー。
ヒトは未知なるものに恐怖を感じる。逆に、カテーテルがどんな装置で、どのように装着されるのか、などの情報が前もって患者に伝わっていれば、その不安は軽減される、という発想。
優秀賞と最優秀賞の受賞者ら(antifices)にはマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)へのチケット(viaje)もプレゼント。同大ではいろいろな指導も受ける(acompañamiento guiado)という。
もうひとつ、②の優秀賞も面白い。これは、バル・デブロン病院のスタッフたちのカーシェアリング(carsharing para profesionales de Vall d’Hebron)のためのアプリ開発に関するもの。スタッフが車をカーシェアリングすることで環境への負荷を軽減するアイデア。カーシェアリング自体は日本でも広がりつつあるが、これを医療スタッフに限定したところが新しい。
バルセロナの一地方病院の発明コンペの話は、まず、日本ではまず報道されない。ましてや、正直に言えば、世界を揺るがすような発明でもない。でも、自分たちの仕事に誇りをもって、日々、小さな改善を考える人々がいることを知るだけでも、何か活力が湧いてくる。
写真は最優秀賞を受賞した看護師カルマ・アイナラ・ドゥナッ(Carme Ainara Donat(=真ん中))。手には副賞のマサチューセッツ大学への往復チケットを模した板を持っている。左が病院の最高責任者アルベートゥ・サラサール(Albert Salazar)。右がロシュ・カタルーニャ支部のマネージャー リタ・カサス(Rita Casas)。