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12/7 ニュースなスペイン語 Miedo al contagio:感染の恐怖

コロナ感染の恐怖は、職務上の物理的不在を正当化しない(El miedo al contagio de COVID no justifica la ausencia física laboral)――。先日、マドリード州最高裁判所(TSJM)が出した判決だ。つまり、コロナが怖いからと言って、職場に行かないのはダメ、ということだ。

当面、この判決はマドリード州のみに適応される。

原告の女性は、2008年から2020年までの間、非常勤職員(indefinida)として、とある会社の事務(tareas administrativas)を担当していた。しかし、会社側から4月30日付けで解雇(despido)されてしまった。

この解雇の正当性に対する州裁判所の判断が、冒頭で紹介したものだ。

上の判決には「但し書き」が付く。

ただし、企業側が常に必要な感染予防措置を取っている限り(siempre que la empresa asegure medidas de protección)。

裁判所は、この度、「企業側が組織的で、かつ、予防のための措置を取っていた(la empresa adoptó medidas organizativas y de prevención)」と認定する一方で、原告の女性に関しては、「契約不履行(incumplimiento contractual)」があり、これは「まぎれもなく重大(de indudable gravedad)」との判断を下したのである。

一体何があったのか。

判決によると、企業は次のような予防措置を取っていたという:

① テレワークを通常の業務形態(el teletrabajo como forma de trabajo habitual) として認めていた。
② 午前中と午後のシフトに分け、部内からひとりだけ、出勤することにしていた(turnos de trabajo de mañana y tarde y debiendo acudir un solo trabajador presencial por turno de trabajo y departamento)。
③ 来客を制限していた(la supresión de visitas)
④ マスクと消毒ジェルを配布していた(la entrega de mascarillas y geles desinfectantes)

一方の原告である女性従業員は、

➊ 緊急事態宣言(estado de alarma)下で、職場に行かないことに責任がある(por responsabilidad no ir a la oficina)との理由から、数回にわたって上記の②の業務を怠った。
➋ 家には病気がちな、そして高齢の両親がいる(padres mayores y enfermos)ために、感染が怖かった。

個人的には女性従業員の➊も➋も十分にうなずける。特に➋。しかし、裁判所の判断は違った。企業側の①~④の徹底ぶりもすごい。裏を返せば、このくらい企業は対策を打たなければ、裁判には勝てないという見方もできるだろう。

テレワークもだんだんと緩和されてきて、授業や企業も対面式が増えてきた日本にも、同じような訴訟が続くかもしれない。

良くも悪くも、マドリード州裁判所のこの判決を心に留めておこう。

写真はマドリード州最高裁判所(Tribunal Superior de Justicia de Madrid)のファザード。