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立ち止まったからこそ出会えた等身大の自分。関野菜子さんと考える休職のススメ。

みなさんは休職と聞いてどんなことを思い浮かべますか?
「心や身体の調子が悪くなった時にするもの」というネガティブなイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし今回お話を伺った関野菜子(せきの ななこ)さんは、休職をとおして自分らしいあり方を見つけてきたと言います。

関野さんは、社会人3年目の現在までに二度、休職と転職をした経験があります。心の病を経験しながらも、背伸びをした選択で「今とは違う自分」になろうとすることをやめ、等身大の自分に合った働き方や暮らし方を見つけてきたそう。

どんな想いで選択を重ねてきたのか、お話を伺いました。

本記事は、ジブン研究が主催するオンラインイベント「Original Life Talk」ゲストへのインタビュー記事です。
「Original Life Talk」とは、日常生活の中で感じる自分自身や人との関係性への違和感や疑問についてオープンに語り合える場を、当事者との対談形式で実施するオンラインイベント。3月25日の本イベントに先立ち、ゲストの関野さんにインタビューしました。

以下、
(な):関野菜子(話し手)
(ゆ):原田優香(聴き手)

憧れと期待で飛びこんだ、一度目の就職

ゆ:学生時代の就活はどんな想いで挑んでいたの?

な:新卒で大手百貨店に就職しましたが、初めは大学の先輩の勧めもあり、軽い気持ちで短期のインターンシップに参加したんです。そこで、バイヤーさんのお話を聞いたときに、ただ物を買ってくるのではなく、作家さんと一緒に物づくりをして、作家の魅力を引き出す仕事なんだと知りました。もともと物づくりが好きだったから、かっこいいなと。世界を相手にした仕事に飛びこんでみるのもいいと思って、第一志望に決めました。
他にも何社か受けましたが、第一志望に受かることだけを考えていろんな対策をしながら就活を進めていました。結果、その百貨店に就職することができました。

ゆ:就職してからはどうだった?

な:とても楽しかったです。まず婦人靴の販売を担当したのですが、お客様の足の悩みを聞きながらその人に合う靴を一緒に探すんです。お客様の「ここならきっと良いものが見つかる」という期待に応えられるのが嬉しかったし、「この会社の人としてここにいる」ということが誇らしかったです。

大企業への違和感と休職

な:その後、入社2年目で部署の異動がありました。一緒に働く方は素敵な人たちでしたが、お客様と直接話すことが少なくなり仕事の内容自体は以前より楽しめなくなっていました。
そんな2年目のはじめにコロナが到来して。緊急事態宣言で百貨店は休業になり、1ヶ月間の自宅待機になりました。その期間に、「このままの働き方で良いのか?」という気持ちが湧いてきました。当時関わっていたジブン研究の運営も楽しくて、「仕事ってこういう、お互いを尊重して感性を活かし合える感覚なのかも」と思ったし、大企業特有の自分ではどうすることもできない大きな構造の中にいる感覚に、違和感が大きくなっていったんです。
休業明けに復帰しましたが、休業中に抱いた違和感がどんどん大きくなっていって、ある朝、身体が動かなくなってしまいました。そこからは行ったり休んだりを繰り返して、休みがちになっていきました。

ゆ:その頃の気持ちの変化はどうだった?

な:体が動かないとか、気持ちが落ち込むとかは初めてだったので、絶望でした。「自分がこんなことになるなんて」って。会社の人にいじめられてるとかでも悪いことがあったわけでもなかったですし。「絶望」がくっついていて、重たい感じでした。

ゆ:それが続いて休職を決めた?

な:その頃から、メンタルクリニックに行き始めました。周りに休職経験者が多かったから、積極的に話を聞いたり、クリニックの先生に自分の話を聞いてもらったりしていました。いろんな人の話を聞いて2年目の夏から、4ヶ月間休職をすることにしました。
周りに相談した時に、「休んで良かった」、「休んでも大丈夫」という言葉をたくさんの人がかけてくれたのが、休職を決心するうえで大きかったです。


休職中の過ごし方

な:落ち込んでる期間もあったけど、コーチングスクールに通ったりしてなるべく人と話すようにしていました。そのうちに転職したいと思った会社に受かり、復職はせずに退職しました。

ゆ:退職する気持ちが固まったきっかけはなんだったの?

な:休職してすぐの時、信頼している知人に「とりあえず十和田湖に行ってきたら?」と急に言われて(笑)一週間くらい行きました。そこで出会った湖畔のみなさんが、好きなことを好きなだけやってそのうえで暮らしも楽しむような生き方をしていたんです。
私も好きなことをやりたい。でも、何をやろうかと湖を眺めながら考えていた時に、前から好きだった写真をやろうと思いたちました。

でも、写真家になるにはいろいろなことを乗り越えなければいけなくて。私は写真の学校を出たわけでもないですし、当時の自分にとってはかなりハードルが高いと感じたんです。
そんなときに、未経験OKの映像会社の求人を見つけました。人気も高そうだったので受からないだろうなと思ったけど、受かってしまって。映像業界は全く未経験の私が、社員3人の小さな映像会社で働くことになりました。社長の「家族みたいなチームをつくりたい」という気持ちにすごく共感していたから、自信はなかったけれどワクワクしていました。

ゆ:違和感にしたがって休んで、心の声を見つめているうちに次の道が見つかったんだね。

十和田湖の風景


背伸びをしない選択へ

ゆ:実際に新しい映像会社で働き始めて、どうだった?

な:楽しかったです。なんかもう、異世界でした。社長はプロ中のプロだし、携わる仕事も大きくて、こういう世界もあるんだって毎日が発見の連続でした。

ただ、入社してすぐにすごく忙しい時期があって。その期間は文化祭気分で走り抜けたけど、その後エネルギーが切れてしまいました。また身体が動かなくなってしまったんです。一度目の休職のときの絶望よりももっと深い暗闇に落ちていくような感覚で、「また、ダメなのか」と自分を責めました。社員3人の会社だったので、一人一人の責任が大きくて行かないとどうにもならないことがたくさんあって、それが大きなプレッシャーになっていました社長は私のことを考えて接してくださっていたけど、心がとても不安定で日常的なコミュニケーションも難しく限界を感じたので、2ヶ月間休職することになりました。

ゆ:休んでからのその後の決断は?

な:現在住んでいるシェアハウス(ウェル洋光台)との出会いがその後の決断に大きく関係しています。そのシェアハウスは仕事の関係で出会って、2週間のお試し滞在をしたんですが、住んでいる人みんなが無理をしていなくて、良い意味で”普通”でした。働いていなくてもいいじゃん、と言ってくれて、肩書きで人を見ないし、何者かにならなくてもありのままを受け入れて、愛をもって一緒に暮らしていける人たちだと感じたんです。

その時に、ウェルに住みたい、もう背伸びはやめて正社員ではない働き方を選ぼうと思いました。今は週4日で、雑貨屋さんのオンラインサイトの運営をする仕事をしています。正社員募集だったけど、「契約社員で雇ってもらえませんか?」と自分からお願いしました。

大好きなシェアハウスの窓辺

ゆ:正社員から違う働き方にするのは、勇気も必要だったんじゃないかなって思うんだけど。

な:逆に可能性が無限大になった感じでした。バイトを組み合わせても良いし、選択肢はいくらでもあるなって。全部なくなったとき、不思議と新しい情報やご縁が巡ってくるんです。働きながら転職、副業の人もいると思うけど、一度休職するとその期間は仕事のことは考えないで、好きなことに集中できる。そのなかで出会ったもの、感じたものは純度が高いんです。

休職したことで、罪悪感とか、他の人と比較して焦ったりしたこともありました。でも、なんとか生きていける。周りのサポートのおかげもあって考え方もかなり柔軟になりました。

休職中に開催した写真展


人生全体で等身大の自分を大切にする

な:振り返ってみると、今までは背伸びをした選択をしていました。ハードだな、向いてないかも、とわかっていたけど、今の自分じゃだめだから、背伸びをして自分を変えなければいけないと思ってわざとそういう環境に飛びこんでいました。背伸びして違う自分になろうとして選んだ環境は、結局続かないし、もっとぼろぼろになってしまったんです。だから今回は自分の等身大を見つめ選択することを意識しました。

最初の就職も第一志望だったので、憧れのその世界に入れたワクワクはすごく大きかったし、純粋に仕事に没頭して楽しかったです。でも今は、エネルギッシュ、ワクワクというより、日常を大事にしたい、日々の自分の状態を見つめていたいと思っていて。目線が今に向いて、豊かさに奥行きが出てきたなと感じています。

本業の仕事だけではなく、絵を描く、写真を撮るなど、自分の好きな「表現すること」を思い切りやれていることに豊かさを感じます。等身大の自分でいることを大切にしたら自然の流れの中でチャレンジしたり、成長できたりするのだと思います。
心のなかの表現したいものに合わせた仕事や暮らしをこれからもっと模索したいと思っているし、そうできるはずだと自分を信じることができるようになりました。

初めてつくった絵本 


休職は自分らしいあり方を見つける近道

ゆ:最後に、休職したい、休みたいけど怖いと感じている人や悩んでる人に、伝えたいことはありますか?

な:私が悩んでいた最初の頃に周りが言ってくれたみたいに、「休んでも大丈夫だよ」ということを伝えたいです。長い人生の中の数か月とか半年なんて大したことないなって、今では思えるんです。休みたいという自分の声に気づけているなら、いったん休んだ方が、長い目で見た時に自分らしくあることへの近道なんじゃないかなと思います。困ったことがあれば助けてくれる人は周りにいるはずだし、私も含め休職したことがある人に相談するのもいいかもしれません。
いろんなことを言ってくる人もいるけど、安心できる言葉、信頼できる人の言葉だけ聞いてれば良いということも伝えたいです。

あと、私は休職中旅に出たり、人と話したりと動いていたタイプですが、動かないでじっとしていたほうが良い人もいて、過ごし方はそれぞれです。でも、落ち込んで休職した場合は特に、脳が勝手にネガティブになるから、安心できる場に身を置いてほしいです。自分がなんにもしなくても心地よいと思える場所や人と出会えると良いなと思います。


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最後までお読みいただき、ありがとうございます。

休職という選択肢に興味のある方、少し立ち止まってみたい方、自分の等身大のあり方について考えてみたい方など、ぜひイベントにご参加ください!
イベント当日は、参加者同士での対話の時間や関野さんへの質問タイムもございます。
皆様とお会いできますことを楽しみにしております。

▼イベントページはこちらです。

▼お申し込みは、下記のグーグルフォームよりお願いいたします!


話し手:関野菜子(せきの ななこ)
https://note.com/cororonn

聴き手:原田優香(はらだ ゆか)

編集  :  宮本夏希(みやもと なつき)


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