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ポジティブじゃなくていいんじゃない?

「ポジティブ疲れ」
という言葉があります。

「ポジティブなのはいいこと」だから、

ポジティブな感情を持ち、
ポジティブに考え、
ポジティブに行動する。

それが
「成功」の秘訣だ。
そんな風潮があります。

でも、そんなにいいことなら、
なぜ人は
「ポジティブに疲れてしまう」のでしょうか


私は、世間の風潮とは裏腹に
常々思います。

「ポジティブじゃなくていいんじゃない?」


突然ですが、

車のレバー
イメージしてみてください。

私も含め、今はほとんどの方が
オートマなので
オートマで話を進めますね。

マニュアル愛好家の方は
都度読み替えていただければと思います。


レバーのところには、
「D」とか「2」とか「R」とか
書いてあります。

これは、
車の動作の状態を示しています。

「D」であれば、車は前進しますし、
「R」であれば、車はバックします。

普段使うのは、
この2つ。

しいて言うなら、
「2」とか「L」くらいでしょうか。

でも、よくよく見ると
使うことがないと思えるのに
どの車にも書かれている文字があります。


それは、「N」です。
(マニュアルの方は中間位置)

車を運転される方は、
レバーに「N」という文字が
あることをすぐイメージできますね。

この「N」使ったことありますか?

この「N」は、
ニュートラルという状態です。

ニュートラルとは、
「中立、中間」
の意味をもつ言葉。

車の場合、
ここにレバーを置いたところで、
車は前にも後ろにも進みません

ギアが噛み合っていないので、
アクセルを踏んでも
無駄にから回るだけ。

通常運転していて、
ここにレバーを入れることはないです。


しかし、よく考えてみれば
前進とバックを切りかえるとき、
必ずこのニュートラルを通っています

調べてみると、Nを経由せずに
前進とバックを切りかえる形だと、
切りかえるための部品が傷むのだそうです。

違う動きに切りかえるわけですから、
いきなり正反対にするのは負担です。

一度ニュートラルという
前進でも後進でもない中立の状態にすること

逆にスムーズな切りかえを生むようです。


さて、ようやくタイトルのお話です。

車の前進と後進、そしてニュートラル

この関係は、
ポジティブ/ネガティブと
共通するのではないでしょうか。


ご想像の通り、
ポジティブが前進
ネガティブが後進(バック)
です。

冒頭に書いた通り、

ポジティブが前進だから
ポジティブに考えないとね!

と言いたいのではありません。

たしかに、ポジティブな考え方・捉え方は
人生を生きるための推進力となるように
思います。

しかし、
ネガティブな考えをしている人が
「ポジティブになれよ!」と言われたり、

あるいは
自分がネガティブな考え方をしているときに
(ポジティブになろう!)と強く思ったりしても

大抵うまくいかないように思いませんか?


少なくとも私はそうです。

ネガティブな思考のときに
「ポジティブになれよ」と言われても

(そうは言っても)と思って
頭に反論が浮かびます。

(ポジティブになろう)と思って、
ポジティブな考え方を頭に浮かべても

すぐにさっきのネガティブが否定します。

うまくいかないのです。

それを「根暗」とか「ひねくれもの」とか
性格の問題にしてしまうのは
とても簡単です。

(私がひねくれものであることは
 否定できませんが)

でも、問題にするのは簡単だけど、
性格の問題は解決が困難です。

私は、
ネガティブからポジティブへの急転換が
うまくいかないのは、

性格の問題ではなく
心のしくみの問題なのでは?
と考えます。


思い出してほしいのですが、
DとRを切りかえるには、
ニュートラルが必要です。

ポジティブとネガティブを
切りかえるには、

同じように
ニュートラルが必要なのでは

ないでしょうか。


例えば、

何か嫌なことがあった。
それについてネガティブな思考が
頭を支配している。

その時、
「嫌なことじゃなくて嬉しいことだった!」
なんて急転換のポジティブは心の負担です。

それよりも、
「嫌なことがあった」じゃなくて
「◯◯ということがあった」という事実を
ニュートラルに見てみる。

ニュートラルに見てみると、
ネガティブにしか思えなかったできごとも
「違う捉え方ができるかも」と思えてくる。

そうすると心も落ち着いて、
自然とポジティブにつながる方向へ
心が向いていく。

この方が、
心の動きとして自然ではないでしょうか。


心をニュートラルに持っていくには、

紙に書き出す、
誰かに話す、
目を瞑って深呼吸する、
一度置いておいて運動する

などなどの方法があります。

いずれにしても、
「ネガティブなこと」という捉え方から
一度離れてみることで、
ニュートラルに持っていく方法です。


ちなみに
ストア派の哲学の考え方では、
世の中のできごとは、ほぼ全部
善悪無記(よくも悪くもない)です。

それによい悪いをつけているのは
私たち人間の思考です。

そう考えると、
ニュートラルもつかみやすかもしれません。


世の中は、ポジティブを賞賛し
ネガティブを批判します。

根暗は否定され、ネアカが好まれます。

だから、
「ポジティブはいいこと」
「ネガティブは悪いこと」

そういう短絡的な風潮が
あるように思います。

だから、私たちは必死に
ポジティブに考えようとし、
ポジティブに振る舞おうとします。

しかし、
光には影あるように、
ネガティブも必要です。

前進しかできない車は、
なんと危ない車でしょう。

「ポジティブはいいこと」と思って、
「自分はポジティブな人間だ」
と考えてしまうと

ネガティブな思考になったときに
「ポジティブに考えられない自分は
 ダメな人間だ」

となりかねない。

「ポジティブ/ネガティブな捉え方」
があるだけで、

「ポジティブ/ネガティブな人間」
がいるとは思わない方が
私はよいのではないかと思います。

どちらもあるのが人間です。


さらに車になぞらえるなら、
「運転がうまい人」って
バックが上手ですよね。

前進はほとんどの人ができますが、
バックで駐車するとか
そこで運転の技術を見ませんか?

ほんとうに自分の心と
うまく付き合っている人は、

「100%ポジティブ」じゃなくて
「ネガティブ上手」な人だと思います。

「ポジティブな自分」で
「ネガティブな自分」を否定するのではなく、

「ネガティブな自分」を受け容れて
ニュートラルにうまく戻せる人。

それが私の思う
「ネガティブ上手」


だから、
ポジティブじゃなくていいんじゃない?

「ネガティブ上手」になれば。


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