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【短編ホラー】(1)4月1日

「世界中の誰より、君を愛しているよ」
「……ありがとう。私もよ」

「今度の休み、一緒に桜でも見に行かない?」
「まぁ嬉しい。でも、私が一緒で良いのかしら? それに、今年は天候の関係で桜の開花が遅れていて、まだ見頃では無いみたいだし」

「良いんだよ。満開になる前の桜を見ておきたいんだ。それと、君以外に桜を見に行きたい相手なんて居ないよ」
「……わかったわ。そういうことね。あなたがそう言うなら信じるわ」

「良かった。僕は君を心から愛しているし、君以外の女性には全く興味が無いよ」
「まぁ、それは嬉しいわ」
「まさか嘘だと思ってる? 僕は浮気なんて一度もしたこと無いのに」

「大丈夫よ、信じてるから。あなたが浮気なんてするはず無いもの。あなたは本当にマメで誠実な人だもの」
「君は心配性だね。まあ、そこも可愛らしくて好きだけど」

「ところで、さっきから携帯が鳴ってるみたいだけど、出なくて良いの? 普段の着信音とは違うみたいだけど」
「……え。そ、そうかい? 僕にはよく聞こえないけどなぁ。ど、どっちにしても仕事の電話だと思うから、出なくて良いんじゃないかな。ハハハ……」
「仕事の電話なら、すぐに出た方が良いんじゃないの?」
「いやいや良いんだ。そ、それよりさ。こっちとこっち、どっちが良いと思う?」

「それって指輪のカタログじゃない。急にどうしたの?」
「もちろんプレゼントするに決まっているじゃないか」
「まぁ嬉しい。私はこのブルーが良いわ」
「えぇー。そう? 絶対にピンクの方が可愛いと思うんだけど……」
「私は青色が好きだってこと、知ってるでしょ?」
「え? あ。そ、そうだっけ? でもさ、君もピンクみたいな明るい色を身につけた方が、女性らしくて可愛いかなぁ……なんてね」
「……そういうこと。あなたがそこまで言うなら、私に聞かなくてもピンクを買ったら良いんじゃないかしら?」
「そ、そうだよね! いやぁ、届くのが楽しみだなぁ」

「あなたは本当にマメね。素敵だわ。わざわざプレゼントのことまで私に聞くなんて。いっそのこと、殺してやりたいほど愛しいわ」
「おいおい。殺すだなんて随分と物騒な表現だなぁ。でも、そういう発言も君の照れ隠しから来る愛情表現だということはわかっているからね。何より、君になら殺されたって構わないよ。本望さ」

「ありがとう。ねぇ、あなた時計を見て? ちょっと前に日付が変わって、実は今日は4月2日なの」
「え? あぁ、そう。じゃあ、さっきの電話も気になるから、今日はもう帰ろ——」

「本当に"私になら殺されたって本望"なのよね? 私が何も知らないと思って、偉そうに……」


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