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中小企業経営書なのに泣ける本で、自分が大切にしていたことを改めて実感。

今年の1〜2月頃、私は自治体が主催する起業家塾に通っていました。

最初の頃は楽しかったのですが、回を重ねていくごとに自分の中に明確なビジョンがないのに通い続けることが疑問になり、経営者として大切なお金のことやマーケティングの講義が苦痛になってしまい、途中でドロップアウトしてしまいました。本当のところは経営の話が苦痛だったというより、自分の個人事業主としての過去を振り返ることが怖かったのだと思います。

その起業家塾の中で、先生のお一人がある本を紹介されていました。
その本が「日本でいちばん大切にしたい会社」という本です。
その時は「ふ〜ん、そんな本があるんだね。」ぐらいでした。

それから3ヶ月ほど経ったある日、図書館で経済や経営書を探していたところ、先生が紹介していたあの本を見つけたのです。
なぜかそのタイトルを覚えていたので、早速1、2巻を借りてみることにしました。

早速家に帰って読み始めると、ページをめくるごとに涙が止まらないのです。それは儲け重視ではなく、人を大切にして、社会に還元していく多くの会社の姿勢に心を打たれたからです。
最初は中小企業経営のノウハウ本だと思っていたのに、その内容は私の想像を遥かに超えた本でした。
あまりに面白くて勉強になるので、図書館で全巻を借りて読むことにしました。

2008年の第1巻より2022年まで現在8巻発売されています。

著者である坂本光司先生は法政大学大学院政策創造研究科の教授であり、これまで8000社を訪問してきた中小企業経営のスペシャリストです。

この本の中では一貫して、会社経営とは5人に対する使命と責任を果たすための活動である、と書かれています。

その5人とは誰か?順番に行くと、

  1. 社員とその家族

  2. 外注先、下請企業の社員

  3. 顧客

  4. 地域社会

  5. 株主

です。

「お客様は神様です。」と私たち日本人は思っていますが、この本で紹介されている会社は全て、社員とその家族を一番に大切にし、関連企業を大切にし、その次にお客様、次に地域社会を大切にする企業です。一番最後の株主は最初の4人を大切にしていれば必ず幸せにできると書いてあります。

まず働く人を大切にすること。

会社の経理についてもオープンにし、絶対にリストラをしない姿勢。大家族のような会社が多く、それらの会社には高い障がい者雇用率、高齢者就業、女性が安心して働ける職場が実現しています。当然離職率が低く、お客様のために社員一丸として知恵を絞り、高いサービスを提供している。そして地域に密着し、社会に様々な形で還元し、ボランティア活動にも積極的な企業が日本にこんなに存在するのかと本当に驚きました。

障がいのある方は就職するだけでも大変なのですが、社会の偏見や、企業に受け入れの準備ができていないため就労が非常に難しことが想像できます。しかしこの本で紹介されている多くの会社は、その人の障がいに合わせて仕事を新たに生み出し、高齢者には生産性ではなく、その人の人間力や存在そのものに価値を見出し雇用をしています。全員正社員として雇われ、自ら税金を納め、働く喜びを体感する、これは本当にすごいことだなぁと思います。

この本の中で「経営が悪化する原因は外ではなく内にある。」という文章が何度も出てきます。私はこの言葉が一番耳が痛く、そして心に残るものでもありました。

私のことについて少しお話をさせてください。

私は以前、医療や介護現場でエステをする仕事をしていました。個人事業主であったため中小企業とは少し違うのですが、なんとかそれでお金を稼がなければならないと必死だったのです。
日本ではまだメジャーな仕事ではないため、ボランティアとして働いている仲間が多かったと思います。それでももちろんいいのですが、私はなんとかこの仕事を日本で有給で働けるようにするために、まず自分が正職員として雇用される必要があると考えました。そうして前例を作れば後々に働ける人が増える、そう考えたからです。

でも現実はそうはいきませんでした。
同業者からは「あなたは医療者だから簡単に働けるのよ。」とエステティシャンとしては認めてもらえませんでした。またエステティシャンの存在価値を法人が軽視していたのも事実です。

1人で頑張っていたけれど、私はだんだん精神的に疲労して頑張れなくなってしまいました。その原因を時代や法人、美容業界のせいにしていました。
そしてその仕事を辞めてから腑抜けのようになり、やりたいことが何もなくなってしまったのです。

しかし私がその仕事を続けられなかったのは、法人のせいでも時代のせいでも美容業界のせいでもなかった。単に私に胆力と根性がなかっただけなのです。

あれから数年が経過し、この本に巡り合いました。
読みながら自分が仕事を続けられなかった原因を、私は常に人のせいにしてきたことを深く反省しました。と同時に、私はたくさんの人に支えられていたということに改めて気付かされたのです。

私がエステティシャンとして働いていた時、看護部長と医師である施設長が私の仕事を評価してくれ、給料アップのために本部に掛け合ってくれていたということを最近知りました。

そして利用者さんやそのご家族から心温まるお言葉を様々な形で頂戴し、一緒に働くスタッフが私の仕事の価値を認めてくれていたことを、自分のnote記事を読んで思い出しました。

そうだ、私は、

「あなたは大切な人です。」

と伝える仕事がしたかったんだと気がついたのです。

そして私に最も足りていなかったことは、これまで私を応援してくれた多くの人への感謝でした。フランスにいる時にも、日本に帰ってきてからも私はたくさんの方にお世話になり支えられてきたのです。私はまだその恩返しができていないので、その恩をいつか返せればと思っています。

起業家塾の時は自分が大切にしていたことを思い出せず、いかに利益を出すかということばかりにまた囚われて、自分を見失っていました。しかしこの本のおかげで自分が働く意味を再認識できたような気がします。

会社を作るとか経営者になるなど関係はなく、私は「あなたは大切な人だよ。」と伝えられる仕事をいずれしたいです。

この本は、経営者のみならず多くの方の働くヒント、生きるヒントになると思います。

私に大切なことを気づかせてくれた本。毎回涙で文字が滲んで読むのが大変でした。
こんな素敵な会社がたくさんある日本、まだまだ捨てたものではないと思います。

【参考】

【追記】
5月22日、noteから嬉しいお知らせが届きました。

ありがとうございます😭



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