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FIREBUG・franky代表対談。連続起業家のモチベーション、「熱狂度の高い渦をつくる」という想い

当社はエンタメの力で、スタートアップ企業のマーケティングをメインにさまざまなビジネスサポートを行ってきました。対談企画「Startup STORY」では、今回から新たにFIREBUG代表取締役CFO兼CIO宮崎が、いま注目を集める企業のトップを迎えてその時々のテーマで質問していきます。

今回のゲストは、ストリートブランド「WIND AND SEA(ウィンダンシー)」やバイオエタノール暖炉「EcoSmart Fire(エコスマートファイヤー)」などのライフスタイルブランドを展開する、franky株式会社 代表取締役の赤坂優さん。今回は赤坂さんが過去に立ち上げたエウレカの発行済全株式を売却した理由、2度目の起業で現在の事業を立ち上げた理由について話を伺います。

「一生、Pairsをやり続けたいかどうか」というVCからの問い

宮崎:赤坂さんは2008年にエウレカを創業。クラウドソーシングサービスの立ち上げや受託開発などを経て、2012年10月に恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs(ペアーズ)」をリリースし、2015年5月にはNASDAQ上場企業のの米国Match GroupにM&Aにより参画しました。エウレカを創業した時からイグジット戦略については考えられていたんですか?

赤坂:全く考えていなかったです。

宮崎:個人的には狙ってM&Aしている感じがしたのですが、そんなことはなかったと(笑)。どういうきっかけでM&Aすることになったんですか。

赤坂:Pairsをリリースする前は何のために会社をやっているのか、明確に決めていませんでした。やりたいからやっている。そういった感覚です。そうした中、Pairsをリリースしたところ、順調に会員数などが伸びていったんです。そのタイミングで初めて、サービスが伸びていった先にどうやらイグジットというものがあり、選択肢のひとつにM&Aがあるというのを知っていきました。

その後、2013年10月にPairsの台湾版「派愛族」をリリースしたところ、半年後には累計会員数が50万人を突破するなど順調に伸びていました。そこで共同創業者の西川順と「今後、会社をどうしていこうか」という話をし、イグジット戦略を本格的に考えるようになりました。
というのも、これから台湾以外の国や地域に進出していくにあたり、今の自分たちだけの力だとどうしてもスピードに上限がある。かと言って他の日本企業と組んだところで、グローバル市場での非連続的な成長につながるようなメリットを見込めるというわけでもない。そうすると、Pairsのさらなる事業成長のためには、海外の企業にエウレカがM&Aされるのがベストな選択肢になっていくのではないかとイメージするようになっていったんです。

VC(ベンチャーキャピタル)にも相談しにいきました。イグジット戦略に関しては、各VCでさまざまな意見があり、個人的にハッとするものもありました。
「一生、Pairsをやりたいと思っているなら続けた方がいいし、これじゃないかもと少しでも思っているなら売却し、時間を置いてもう一度挑戦してみるのもいいのではないか」という意見です。自分の中で「このままPairsを続けて、ここからさらにグロースさせることにコミットしていきたい」という思いよりも、「さまざまな領域や市場をターゲットに、ゼロからまた新たな事業開発にチャレンジしていきたい」という気持ちの方が強いことに気がつくきっかけとなりました。こうした経緯で、本格的にM&Aを考えていく流れになっていったのが2014年の後半でした。

Match GroupへのクロスボーダーM&Aの舞台裏

宮崎:2015年5月には米IAC傘下のMatch GroupにM&Aしたわけですが、当時はグローバルでマッチング事業をやっている最も大きい会社に買収してもらいたい、という考えがあったのでしょうか。

赤坂:当時、ある程度の金額感での売却を考えていて、それを現金で準備できる企業は日本だととても限られていました。なので、国内数社へプロセスレターを送りつつ、同時に海外ではFacebook(現Meta)、Google(現Alphabet)、Match Groupにも送りました。日本企業からはすぐに返事があったのですが、海外企業に関しては3社ともしばらく反応がなく。さすがに海外は厳しいかな……と思っていたんです。

その矢先、締め切りの前日にMatch Groupが「返信が遅くなったが、とても興味がある」というような返事があり、そこから連絡を取り合い、本格的に交渉を進めていくことになりました。
国内でも興味を持ってくださった企業が1社あって、その企業とMatch Groupを候補に交渉を進めていき、最終的にMatch Groupへ売却することを決めました。

宮崎:最終的にMatch Groupがいい、となった決め手はなんだったんですか。

赤坂:まず買収にあたっての提示価格が2倍ほど異なりました。それに加えて、Match Groupが保有しているアセットやノウハウを活用することで、Pairs自体もマッチングサービスとしてまだまだ伸ばしていけるのではないかと思い、すぐにMatch Groupにしようとなりました。

宮崎:売却後、想像通りに事業は伸びていきました?

赤坂僕たちが当時想像していた以上に大きく伸びました。

宮崎:先ほどアセットやノウハウの活用と言ってましたが、どこが良かったですか。

赤坂:前提として国内市場のポテンシャルが非常に高く、完全に追い風の環境が整っていました。そのためスタートアップから大手企業まで競合の参入も増えていった側面もあるのですが、そうした状況の変化においても中、グローバル市場で多数のマッチングサービスをグロースさせるなかでMatch Groupが培ってきたにマーケティングなどの豊富なノウハウを注入していただいたことで、国内最大級の恋愛・婚活マッチングサービスとして市場をリードし続けることができました。また、組織経営においても、M&A後の従業員向けSO(ストックオプション)の設計がとても秀逸で、当時のボードメンバーも含めてほとんどのメンバーが退職しないどころか、新たな目標を持って熱量高く業務にコミットし続けることができました。そういった点もとても勉強になりました。

その後は、M&Aが終わった時点でのボードメンバーたちへ経営権の移譲を進め、およそ1年後に彼らが正式に取締役に就任すると同時に僕は代表取締役を退任しました。2015年5月に発行済全株式を売却し、2016年9月に代表取締役を交代し、2017年10月に取締役を退任したという感じです。

赤坂氏が「2回目の起業をした」と思ったタイミング

宮崎:エウレカの取締役退任直後の2017年11月にはすでにfrankyを設立していますが、赤坂さんの中で「次はこれをやろう」という事業テーマは決まっていたんですか?

赤坂:それが事業テーマがなかなか決まらず、しばらくリサーチや情報収集に徹する時期が続きました。立ち上げから数ヶ月が経った頃、知人の紹介でスタイリストの熊谷隆志さんと会う機会があり、アパレル業界でのブランド経営とその課題について考えるきっかけとなりました。熊谷さんからさまざまな経験談やノウハウを伺ううちに、僕がこれまでIT領域で培ってきたマーケティング要素をかけ合わせることで、ブランドの新たな育て方ができるのではないかなと思うようになり、彼が立ち上げたストリートブランド「WIND AND SEA」をM&Aする形で、経営に参画することにしたんです。

その後、Shopifyを活用してオンライン販売をスタートしたり、旗艦店を東京・駒沢から中目黒に移してリニューアルオープンしたりしました。
ただ、ここでもやはりWIND AND SEAだけをやっていこうとは思っていなくて。WIND AND SEAで手応えを感じつつあった仮説をもとに、他の事業アイデアを考えていました。例えば、当時はプチプラ韓国レディースファッションの通販サイト「17kg(イチナナキログラム」が伸びていたこともあり、韓国に行って洋服の買い付けをしてみたこともあります。

宮崎:あとは医療系のサービスも考えられてましたよね?

赤坂:そうですね。2019年に入り、アメリカでオンライン医療サービスのD2Cスタートアップ、「Hims & Hers(ヒムズ・アンド・ハーズ)」が伸びていたので、医療×テックの切り口は可能性がありそうだなと思いました。遠隔診療も近いうちに解禁されるだろう、という見込みのもと、AGA治療のクリニック買収も検討したのですが、遠隔診療解禁の見込みが立っているというわけでもなかったので、悩んだ末に2019年末に検討をストップしたんです。そうしたら2020年に入るや否や国内もコロナ禍となり、厚生労働省が遠隔診療を解禁した。タイミングが合わなかったですね。

宮崎:赤坂さんの中で「2回目の起業をしたな」というタイミングはいつですか?

赤坂:2020年1月ですね。2019年末に遠隔診療は難しそうだと思い、そこから「自分たちの好きなことをやろう」という方向性に切り替えました。WIND AND SEAのようなライフスタイル系のブランドを増やしていくことにしたんです。

それで、2020年2月にバイオエタノール暖炉「EcoSmart Fire」を展開するメルクマールの買収に動き始め、3月にトラベルブランド「moln(モルン)」をつくることを決め、4月に愛犬専用パーソナライズケアBOX「Qualum(カルム)」(現在は休止中)と、古田諭史シェフをチーフプロデューサーに迎えた料理とワインの完全会員制サブスクサービス「tokotowa(トコトワ)」を仕込み始めました。1年ほどの準備期間を経て、2021年の夏頃をめどにすべてのブランドをオープンするというスケジュールで動いていきました。
結果的にmolnだけ2022年4月のリリースとなりましたが、それ以外のブランドはスケジュール通りにリリースすることができました

熱狂度の高いコミュニティをサポートするのがfrankyの役割

宮崎:frankyがやっていることを括ると、“D2C”なんですか?

赤坂:D2Cと言えばD2Cではあるのですが……。感覚としては、デジタルを活用して自分たちでブランドづくりに取り組んでいるという感じです。SNSが普及したことで、自分たち自身で発信することにより、オンラインでの集客がしやすくなった。SNS時代に適したブランドづくりをしているだけだと思っています。

宮崎frankyはオリジナルで生み出す事業と既存で立ち上がっていたものを傘下に収めてPMIで伸ばす事業、この両方にバランスよく取り組まれている印象があります。それは偶然そうなったのか、それとも領域を切ってテーマを探した結果、そういう形になるべくしてなったのか。どちらでしょうか。

赤坂:事業選定における意思決定のスタンスとして、「領域を切って、市場規模がこれくらいだからやろう」という感じではありません。もともと、その道のプロフェッショナルや熱狂度の高そうなコミュニティを形成しているキーパーソンとパートナーとして組ませていただきたいという方針を決めていました。結果的に、オリジナルで生み出す事業と既存で立ち上がっていたものを傘下に収めてPMIで伸ばす事業の両方に取り組んでいる形となりました。

なかでも特に、職人やクリエイターの方々と仕事をすることは決めていて。WIND AND SEAもそうですし、molnのプロダクトデザインもプロダクトデザイナーの柴田文江さんにお願いするところから始まっています。

宮崎:「frankyって何をやっているの?」と聞かれたら、なんと説明しているんですか?

赤坂:設立当初は「デザイン性の高いものをつくって、きちんと流通させて、世の中を美しくする」という風に伝えていたのですが、今やデザイン性が高いのは当たり前の時代なので、ほとんどあまり言ってなくて。本質を突き詰めていくと、熱狂度の高いコミュニティをサポートするのがfrankyの役割だなと。職人・クリエイター× frankyで新たな価値を創り出すことに取り組んでいます。

もう少し具体的に表現すると、「プロダクトが世の中で流行する文脈にきちんと乗せる」ということに注力しています。職人・クリエイターの方々のクリエイティビティのディストリビューションをfrankyが担い、YouTubeやTikTokなどのトレンドに適した形でモノとその価値がもたらす体験を届ける部分をサポートできればと思っています。

宮崎:ちなみにPMIは大変でしたか?

赤坂:大変な部分も多かったですね。ただ、frankyにはテック、アパレル、インテリアなど、多岐に渡るバックグラウンドのメンバーでチームを構成しているので、さまざまな領域で事業づくりに取り組むことができます。例えば、アパレルのバックグラウンドがあるのは明確な強みで、何かを作ろうと思ったら、すぐに着手できる。企画、生産、流通・プロモーションがどの分野でも可能なのは良いことです。一方で、すべての事業ドメインがアパレルであれば、あらゆるアセットを共通化することができますが、さまざまな領域で事業を展開しているので、それぞれアセットが分散しています。そこが苦労している部分です。

熱狂度の高い渦をつくることにチャレンジしたい

宮崎:赤坂さんはFIREBUGの株主でもあり、WONDERTAINER FUND(ワンダーテイナーファンド)にも出資してくれています。

赤坂:もともと、僕自身が若い世代の人たちが使っているものに興味を持っていました。特に、SNS利用が浸透するとともに各チャネルでインフルエンサーが生まれていく流れをとても興味深く感じていました。そんな風に、個がそれぞれのバックグラウンドや強みをベースに発信力を持ち、生活者の消費行動における態度変容に影響を及ぼす時代になってきているのを感じていたタイミングで、さまざまなアーティストやタレント、企業などとチームを組みながら「才能」をエンパワーメントするFIREBUGの存在を知り、これは面白そうだなと思いました。

宮崎:ちなみに今、赤坂さんがエンターテインメント系のスタートアップをやっているとしたら、どういう戦い方をしますか?

赤坂:まずYouTubeチャンネルを立ち上げます。そこで和服、着物、京都、駄菓子など、日本文化をもとにしたグローバルでウケそうなコンテンツを徹底的につくっていくと思います。そして、チャンネル登録者数が100万人ほどに到達する頃を目安に次の戦略を考えるといった流れです。

また、YouTube系のスタートアップの経営者と話していても、検索するプラットフォームがGoogleからYouTubeに変わっていっているのを感じます。僕自身も旅行を検討する際、Googleではなく、YouTubeで検索して情報を仕入れます。もともと文章だけを読むことに楽しさを感じにくいということもあり、動画や画像などのコンテンツで視覚的に情報をインプットする方が早くて心地よい。自分ですらそうなので、物心つく前からYouTubeを視聴しきたいわゆるデジタルネイティブ世代はもはやテキストを読まないと思うんです。そう考えると、10年後には明らかにメディアの主戦場が動画になっているはず。

それを踏まえると、リクルートの動画版みたいなサービスがあってもいいなと。そういう意味では、戦略のひとつとしてYouTubeチャンネルを買収しにいくのもあると思います。そのYouTubeチャンネルを起点にサービスをつくりにいくかもしれません

例えば、物件の周辺情報を動画で伝える不動産系のYouTubeチャンネルを買収し、そのチャンネルの登録者をターゲットにスマートフォン向けメディアを立ち上げる形で、動画プラットフォームからメディアへトラフィックを誘導するといったことも可能性としてはアリだと思います。

宮崎:ありがとうございます。最後にfrankyの今後の展望も教えてください。

赤坂コミュニティやカルチャーからブランドと熱狂度の高いファンを持つインフルエンサーが生まれる流れは今後さらに強まると考えています。frankyはそれらを支援する側にいたいと思っています。オンラインとオフラインを問わず、熱狂度の高い渦をつくることにチャレンジし続けていきたいですね。

赤坂さんありがとうございました!

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