データで街を歩こう - 京都市バスのGTFSデータ公開が日常にもたらす小さな革命
こんにちは、日本データ取引所です。
先日、京都市バスのGTFSデータがオープンデータ化され、そのデータがGoogleマップに反映されたのをご存知でしょうか。
今回はこの事例をもとに、「データの標準化」および「データの公開」が私たちの日常生活を豊かにする様子を探ってみたいと思います。
京都市民である私自身の経験から
筆者は今、京都市に住んでいます(私たちの会社はフルリモート勤務が基本で、全国に社員がいます)。
京都市にはターミナル的なバス停がいくつかあり、市内中心部にある「四条河原町」はその一つ。筆者は四条河原町からどこかへ出かける際、Googleマップを開いて経路を検索するのですが、最近は経路に応じて正確なバス停の位置が表示されるようになり、これがとても便利です。
以前は間違ったバス停に行ってしまい、大切な予定に遅れることもありました。というのも「四条河原町」という名前のバス乗り場は、なんと11箇所もあるんです。
京都市バスだけでも「Aのりば」から「Hのりば」まであり、ほかにも京都バス、京阪バスなどの乗り場もあって、とてもややこしい。しかも、それぞれの乗り場はけっこう離れています。
従来のGoogleMapでは、バス停が四条河原町交差点のど真ん中にマッピングされていたように思います。この状況だと、まず近くの乗り場まで行き、そこに掲示されている「乗り場地図」を見て、自分の行き先に応じた乗り場を見つけ、そこまで歩いていく……という手順を踏む必要がありました。
ご存知のように京都は観光客の方も多く、ハイシーズンには四条河原町の交差点を渡るだけで一苦労。乗り場から乗り場まで歩くのは、思った以上に時間がかかります。「やっと乗り場にたどり着いたのにバスが目の前で行ってしまった。次に目的地に向かうバスはまた別の乗り場から出る……」みたいなケースもあります。
しかし、京都市バスのデータがGTFS形式でオープンデータ化され、Googleマップに掲載されたことで、このようなトラブルは解消されました。最初から正しいバス停がスマホに表示され、そこを目指して歩けるようになったからです。
GTFSとは? 何が便利なの?
GTFS(General Transit Feed Specification)とは、公共交通機関の運行情報を表現するための、世界標準のデータフォーマットです。このフォーマットは、バスや電車といった公共交通機関の時刻表・停留所・経路・運賃情報などを一貫して記述できる形式になっており、世界中の多くの地域でオープンデータとして公開されています。
データの標準化の主な目的は、異なるシステムやアプリケーション間でのデータの互換性を確保することです。各交通機関がGTFS形式でデータを整備することで、開発者はさまざまな交通機関のデータを統一された方法で扱えます。これにより、経路検索や旅行計画といったアプリケーションの開発が容易になるのです。
GTFSは主に、静的データ(GTFS Static)とリアルタイムデータ(GTFS Realtime)の2つの部分から構成されています。GTFS Staticは、時刻表や停留所の位置、運賃情報など、変化しない情報を含みます(一般的に「GTFS」と言うとこの静的データを指すことが多い)。一方GTFS Realtimeは、運行状況の更新や遅延情報など変動する情報を扱うもので、GTFS Staticを補完してさらなる価値を与えます。
経路検索アプリで、経路によって適切なバス乗り場が案内されるのも、電車の遅延に合わせて最適な経路がサジェストされるのも、こういったGTFSの仕組みのおかげ。毎日の便利な移動は、データの標準化とその公開・連携によって支えられている部分が大きいのです。
データの標準化がもたらすメリット
情報技術の進展とともに、データの標準化はますます重要になってきました。標準化されたデータフォーマットを採用すると、データの再利用性が高まります。つまり、開発コストの削減、イノベーションの加速、さらには異なるサービスやプラットフォーム間でのシームレスなデータ連携が可能になるのです。データの標準化は、デジタル社会における情報の流通と活用を促進する基盤ともいえるでしょう。
さらにデータの標準化は、新たなビジネスチャンスをも生み出します。例えば、京都市バスのデータを活用することで、観光案内アプリや移動支援サービスがより充実した情報を提供できるようになります。
データを組織の外に公開する意義
データの標準化はデータの価値を最大化する第一歩ですが、その真の力は、データが「組織外に公開」されたときに初めて解き放たれます。京都市バスのGTFSデータのオープンデータ化は、その完璧な実例といえるでしょう。データが公開されることで、開発者、企業、そして最終的にはエンドユーザーが直接恩恵を受けられるようになりました。
公開されたデータは、新しいアプリケーションの開発、サービスの改善、さらには社会的課題の解決に貢献する可能性を秘めています。例えば、京都市バスのデータがGoogleマップに統合されたことで、地元住民や観光客はより効率的に移動計画を立てることができるようになりました。これは、データの公開がいかに日常生活にポジティブな影響を与えるかの一例に過ぎません。
このように、ある組織のデータをハブにした他業種間の協業が、それぞれのサービス・業界の価値を高めるとともに、社会全体を豊かにしていくのです。
まとめ
データの標準化と公開は、現代社会におけるイノベーションの鍵です。私たち日本データ取引所は、あらゆる企業・組織のデータマネジメントをサポートし、各組織に眠っているデータの価値を最大化することで、社会課題の解決に貢献していきます。
また私たちは、無料で自社データを掲載、公開範囲を指定して出品できる日本最大級のデータマーケットプレイス「JDEX」も運営しています。ご興味を持たれた方は、ぜひ一度会員登録してみてくださいね。