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2023年もアニメの勢いが凄かった! (後編) 

前編では、2023年に放送されたアニメ作品がどんな視聴のされ方をしていたかなど、作品のカテゴリー毎に見てきました。

後編では、“アニメ作品が視聴されている時間帯から、どんな人が見ているかを類推することが出来る“という仮説を検証していきたいと思います。

前編をまだお読みでない方は、ぜひ前編もあわせてご覧ください。


視聴時間でアニメ作品の分類をしてみた

前編の、“アニメ作品が視聴されている時間帯から、どんな人が見ているか類推する事が出来る”という仮説を検証する為、各作品が録画と配信で視聴されている時間帯に応じてクラスタを作成、分類しました。
今回の調査では、約200のアニメ作品を調査対象としましたが、99.1%の作品をいずれかのクラスタに分類する事ができました。
 
アニメ作品の分類に用いたのは、K-means法といって距離が近いもの同士を、同じグループにまとめる手法です。
この手法では指定した個数の最適な重心を求めますが、どうしても距離が遠い作品ができてしまいます。そこで距離に応じて、分類する事を断念したり、分類されても考察の対象から外す対応をするものがあったことは付記しておきます。
 
作成されたクラスタは、「①家族みんなでそろって見るような作品」、「②大人ファンが多いが、家族で見られる作品」、「③メイン視聴者がこどもの作品」、「④アニメを好きな大人が見る作品」の4つです。

表1 クラスタ分析結果

録画と配信の視聴時間を元に分類をしましたが、視聴方法でも特徴がでましたので、2点ほど触れておきます。

1点目は「③メイン視聴層がこどもの作品」のリアルタイムの視聴割合です。50%を超えていますが、これはこども向けの作品の多くが、休日の午前中など、お子さんが視聴しやすい時間帯に放送されている事が、理由と考えられます。
2点目は「④アニメを好きな大人が見る作品」の録画視聴の多さです。こちらはいつまでも手元に置いておきたい、コレクション需要によるものと推察しています。
 
では、各クラスタにどのような作品が分類されたか、例を見てみましょう。
それぞれのクラスタに分類された作品数に応じて、作品例をピックアップしました。

表2 各クラスタの作品例

私たちとしては、概ねイメージ通りの分類になっており、無事に仮説どおりの結果になった?と考えているのですが、皆さんのご感想はいかがでしょうか。
 
もし、作品のイメージや作り手の意図していないグループに入っているものがあれば、そうなった要因の分析のきっかけになったり、当初計画とは異なる番組宣伝やプロモーション展開を検討するなど、新たな知見としてご活用いただけるのではないでしょうか。

なお、地上波で放送した後、「J:COM STREAM見放題サービス」で「見逃し配信」として配信された作品(かつ、放送と配信で名寄せができた作品)を集計の対象としています。「クレヨンしんちゃん」や「ドラえもん」などは、「J:COM STREAM見放題」で配信していますが、地上波の放送に対応した「見逃し配信」としての配信ではありませんので、対象に含んでいません。

各クラスタの作品特徴

「①家族みんなでそろって見るような作品」には、原作が少年向け週刊漫画誌の作品や、長年楽しまれているシリーズ作品が多く分類されました。
前者の例としては、『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』、「僕のヒーローアカデミア」、「マッシュル-MASHLE-」。後者の例としては、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」、「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」、「め組の大吾 救国のオレンジ」、「キャプテン翼 シーズン2 ジュニアユース編」があげられます。いずれも、こどもと一緒に見て楽しめるアニメだと受け止められていると推測されます。
 
「呪術廻戦」は呪いによって生まれた「呪霊」との激しいバトルが描かれたり、ストーリーに難しい部分があることから、大人ファンが多いクラスタに分類されると予想していましたが、お子さま含め広く受け入れられていることが分かりました。

また、「ブルーロック」はサッカーをテーマに扱った作品で、25時30分という遅い放送時刻や、推し活の盛んな作品であることから注目していましたが、家族みんなでそろって見るような作品に分類されました。
 
「②大人ファンが多いが家族でも見られる作品」は、「【推しの子】」や「文豪ストレイドッグス」のように、原作が青年向け漫画誌の作品。また、「薬屋のひとりごと」や「わたしの幸せな結婚」のようにライトノベルからコミカライズなどを経てアニメ化された作品。「SPY×FAMILY」の様にWebやアプリでの連載作品など、原作が多様です。こどもが自発的に見たいアニメというより、大人やティーンが見る作品が集まった印象です。話題作も多く、若者が見る作品の方が、SNSを介して拡散されるので、話題になりやすかったのではないかと考えられます。また、SNSでの話題性から、比較的ライトなアニメ視聴層も巻き込んで視聴されやすかったのではないでしょうか。「進撃の巨人」は少年誌が原作の人気作ですが、バトルシーンの激しさからか、こちらのクラスタに分類されました。
 
「③メインの視聴者がこどもの作品」は、大人が自ら見たいというよりは、こどもが見たい・こどもに見せたい作品が多い印象を受けました。ゲームとのメディアミックスや、玩具の展開が豊富な作品が多く、長期間にわたり放送されているのが特徴的です。「ポケットモンスター」や「プリキュアシリーズ」の様に、20年以上も放映され続けている作品もあります。
 
「④アニメを好きな大人が見る作品」には、ライトノベルやソーシャルゲームなどを原作とする作品、ラブコメや学園ものといったジャンルの作品が比較的多く分類されました。話題になっているから見るというよりは、作品ごとの熱いファンが、好きだからという自発的な動機で見ていたと考えられます。バーチャルYouTuber 「キズナアイ」を題材に制作された「絆のアリル」もこのクラスタでした。

最後に

今回は、2023年に放送されたアニメ作品(当社で見逃し配信をしたもの)の視聴実態調査を行いました。視聴ログを元に各作品の視聴のされ方を集計し、特徴の類似する作品ごとに分類することができました。

原作では大人向けの作品が実はファミリーで見られていたり、反対にこども向け作品が大人にも人気を博したり、意外な層にリーチしていることがありました。誰もが簡単にいつでもアニメを視聴できるようになったからこそ、原作ファン以外の意外な層にも、ファンのすそ野が広がりやすくなっていると考えられます。

また、視聴者の属性が見えたことで、「あのアニメがあの商品とコラボしているのは、こういう視聴層にアプローチをしたかったからか」と推察することもできます。

こういったデータから、マーケットのトレンド、あるいはその変化を察知するきっかけが何かつかめるのではないのでしょうか。
 
2023年から引き続き、2024年も音楽や映画など業界を超えてアニメが盛り上がっています。益々、アニメから目が離せない状況が続きそうです。
 
最後までこの記事を読んでいただき、ありがとうございました。
 
これからも当社が持つデータをもとに、さまざまな分析をして発表していきたいと思いますので、興味を持たれた方はアカウントをフォローいただけると幸いです。
 
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J:COM あしたへつなぐ研究所 
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<参考>
2023年度(令和5年)興収10億円以上番組 (令和6年1月発表)
http://www.eiren.org/toukei/index.html
過去興行収入上位作品
http://www.eiren.org/toukei/data.html
 
NHK 国民生活時間調査
https://www.nhk.or.jp/bunken/yoron-jikan/
ボストンコンサルティンググループ「第1 回メディア消費者行動調査

https://web-assets.bcg.com/e6/e4/6c5a337f4c6f8459c6490c91b813/bcg-media-consumption-survey-japan-2023.pdf


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