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2023年もアニメの勢いが凄かった! (前編) 

年末の第74回NHK紅白歌合戦では、「【推しの子】」や「呪術廻戦」、『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』などから6曲。さらにディズニーメドレーと、アニメ関連の歌が歌番組の華の一つとして定着しました。

また、2023年の映画興行収入はトップ3がすべてアニメ作品。興行収入10億円越えした邦画アニメは12本を数え、邦画の全体の4割を占めます。
まさに、アニメが国民的コンテンツの一つになったと言っても過言ではありません。

今回はJ:COMのデータを活用して、2023年に放送されたアニメを振り返ってみたいと思います。


まずは、2023年にJ:COMで放送されたアニメ作品のなかから、注目作をピックアップすると以下の様な作品が並びます。

表1 2023年放送 アニメ注目作品(50音順)

みんなのアニメ視聴方法(2023年まとめ)

このようなアニメはどの様に視聴されているのか。2023年のJ:COM TV契約世帯の内、「J:COM STREAM見放題」にご加入の世帯を対象に調査を行いました。

「J:COM STREAM見放題」とは、日本初上陸のParamount+に加え、韓国・中国ドラマ、見逃しアニメ、地上波の人気コンテンツ等、幅広いジャンルの作品が視聴できる、定額見放題パックです。

アニメ作品を視聴方法別に集計すると、72.7%が録画もしくは配信で視聴されており、リアルタイムの放送視聴は27.3%に留まると分かりました。

図1 J:COM STREAM加入者の視聴時間構成比

このような結果になった理由について、まずはアニメの放送時間が関係していると考えられます。2024年現在、土日の朝や夕方はこども向けアニメが複数放送されていますが、民放キー局のゴールデンタイム(19時〜22時の間)ではほとんど姿を消し、「ポケットモンスター」だけとなりました。

一方、遅い時間帯のアニメは、1997年に「新世紀エヴァンゲリオン」が深夜帯に再放送され、高視聴率を記録して以降、大幅にその数を増やし現在に至ります。

次に理由として考えられるのが、テレビ視聴スタイルの変化です。NHKの国民生活時間調査によると、20〜30代が平日テレビに費やす平均時間は、2000年の187分から、2020年の151分へと減少。これに対し、録画番組の視聴は1995年の92分から、2020年には130分へと増加。好きな時間に視聴できる、録画視聴の割合が大幅に増えたことが分かります。

さらに、J:COM STREAM見放題のような動画配信の普及により、テレビという縛りが消え、パソコンやスマートフォンなど、好きなデバイスでアニメ作品を視聴できるようになりました。

以上の様に、深夜でも視聴されるアニメ作品の性質と、好きな時に好きなデバイスで見られる、視聴スタイルの変化の相乗効果により、若年層のテレビ離れと言われるなかでも、アニメ作品が盛り上がっているのではないか、と考察します。

配信と録画の視聴のされ方を詳しく見てみるとどうなるか

アニメ作品が録画視聴や配信視聴で多く視聴されていることがわかりました。では、より具体的にどの様な見られ方をしているのか、『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』を例に詳しく見てみると、非常に興味深い結果になりました。

地域により放送開始時間が異なることがあるため、関東エリアの約4.5万世帯を対象に調査しています。

同作は、全国フジテレビ系列にて日曜日の23時15分より放送。J:COM STREAMでは45分遅れの24時より配信されていました。日曜の放送開始から翌月曜日までの視聴率の推移を見ると、追いかけ再生で見たり、翌日録画視聴したり、同じ作品でも多様な視聴の様子が見て取れます。

図2 『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』の視聴率推移

視聴率が山になっている時間帯(上図ピンクで囲った箇所)を3つ取り上げて、視聴世帯の家族構成で分解したものが次のグラフです。

図3 ピーク時間帯別の視聴世帯構成比

①放送直後から始まる視聴率の山では、「こどものいない世帯」と「成人したこどもがいる/親と同居世帯」で半数を超えており、大人が夜更かしをしていたことがわかります。「小学生以下のこどものいる世帯」も、親世代が楽しんでいたとするのが妥当でしょう。

②15時半~16時半の山では、小学生以下のこどものいる世帯が3割を超えます。これは下校したこどもが視聴していたものと考えています。また、山になっているのはJ:COM STREAM視聴だけなので、こどもが配信での視聴を好むことが分かります。

③の19時~21時のゴールデンタイムになると中高生のこどものいる世帯も増え、家族で視聴をしていたものと想定されます。こちらは、録画視聴もJ:COM STREAM視聴も山となっています。

視聴者の属性と視聴時間帯の関係

それでは、ほかの作品はどのように視聴されているのでしょうか。先述の通り『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』は、大人からこどもまで広く視聴された様子なので、ファミリー向けアニメとしました。

比較対象として、特定のターゲットを対象にしていそうな作品を独断と偏見でピックアップして並べたものが以下です。今回は放送の直後に限定せずに、各作品が視聴されていた時間をグラフに示しました。

図4 作品別の視聴率推移

女性大人向けアニメとしては「わたしの幸せな結婚」をピックアップ。こちらは明治・大正期を彷彿とさせる世界を舞台にした、ユニークな設定のラブストーリーです。オンライン小説が原作で、様々なメディアミックスを経てアニメ化されました。こちらは、午前中からお昼と、遅い時間の両方に山があるのが特徴です。

また、人気バラエティ番組の「逃走中」を原案とした、オリジナルアニメ「逃走中 グレートミッション」をこども向け作品としてピックアップ。同作は日曜日の朝9時に全国フジテレビ系列にて放送されており、もともとこの時間帯はアニメ激戦区ですが、放送と近い時間帯に視聴の一番高い山があります。
 
この様に、作品の性質に応じて視聴されている時間帯に違いが生じるのであれば、“アニメ作品が視聴されている時間帯から、どんな人が見ているか類推する事が出来る”と言えそうです。
 
後編では、この仮説を検証するため、アニメ作品を分類することができるかを試してみました。2023年に放送された作品を実際に分類しているので、後編もぜひご覧ください。
 
ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございました。
 
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<参考>
2023年度(令和5年)興収10億円以上番組 (令和6年1月発表)
http://www.eiren.org/toukei/index.html

過去興行収入上位作品
http://www.eiren.org/toukei/data.html
 
NHK 国民生活時間調査

ボストンコンサルティンググループ「第1 回メディア消費者行動調査https://web-assets.bcg.com/e6/e4/6c5a337f4c6f8459c6490c91b813/bcg-media-consumption-survey-japan-2023.pdf



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