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キャリア支援が仕事の質変える ~日経産業新聞 HRマネジメントを考える 第28回 (2023.03)

日経産業新聞「HRマネジメントを考える」の再録、第28回目。もう少しで追いつきます。今日は、現場のキャリア支援の話です。これがうまく回れば、いろいろなことが良くなります。そのために、人事部やキャリコンが役割を果たすことが大切ですね。
「HRマネジメントを考える」のバックナンバーをまとめたページを作りましたので、ご興味があれば過去のもご覧ください。

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日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2023.03)
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キャリア支援が仕事の質変える
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 意外と認識されていないのです が、2016年の職業能力開発促進法改正は大きな変化を私たちに求めています。労働者に自らのキャリア 開発と能力開発への責任を促し、企業には従業員へのキャリアコンサル ティングの機会確保と能力開発支援を求めたのです。「セルフ・キャリ アドック」も努力義務化されました。  
 今の若手社員は学生時代にしっかりとしたキャリア教育を受けています。上の世代とは違って、自分のキャリアを自分で考えることは当たり前になっています。同時に、大学のキャリア教育の限界も引きずってい ます。  
 働く日常を伴わない大学でのキャ リア教育では、なりたい自分を考えることがどうしても中心となりま す。日々の状況に自分を適応させたり、上手に現実と折り合いをつけたり、今の仕事の中に自分が将来やりたいことのタネをみつけたりということは、教えることができません。  
 しかし、多くの働く人にとって、自らのキャリアを構築するというのは、このような泥臭い日常の中にあるはずです。これを仕事の中で理解させる役割は、会社側に委ねられているのが現実です。  
 人事部が用意する研修だけで容易に腹落ちする話ではありません。結果として現場のマネジャーがこの役割の多くを担うことになります。マ ネジャーの役割に、職場内訓練(O JT)による部下育成だけでなく、部下のキャリア形成支援が加わったのです。  
 上司ができることはたくさんあります。部下との対話の中で日常の仕事についてのフィードバックをして、部下のリフレクションを促すことがまずは大切です。しっかりとした内省は仕事の中での成長にもキャ リア自律にもつながっていきます。  
 今、目の前の仕事をきちんと意味づけする支援も大事です。昨日までは単なる作業に見えたことが将来につながるプロセスに変わることもあります。  本人の志向性や希望も取り込んだ担当業務のアサインや、ネットワークづくりの支援も重要です。営業配属になった部下が人事の仕事に強く 興味があるとします。上司には異動を決める権限はありません。しかし、採用面接に同席させたり新人の育成係に任命したりと、それにつな がる役割を与えることは可能です。  
 上司が自分のキャリア形成を支援してくれていると実感することで、部下からの信頼は高まります。部下のキャリア支援のためには部下のキ ャリアに関する志向や思いをきちんと把握しておく必要があります。  
 上司と部下のキャリアに関する対話は、日常業務の打ち合わせとは切り離した時間と場所でじっくりとす ることが効果的です。リアルな現実と上手に自らを適合させながら自分 のキャリアを考えられるようになると、キャリア自律に一歩近づきます。キャリア自律と日常の自律的な仕事は深くつながっています。上司が部下のキャリア形成支援に取り組 むことで、部下の自律的な働き方は 必ず促進されるはずです。  
 ただでさえ役割過多にあえいでいるマネジャーの皆さんに加わった部下のキャリア形成支援という新しい 役割に積極期かつ効果的に取り組む ことにより、結果的に自分の仕事の 質も変わります。こんな挑戦が日本中の職場で始まっています。


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