見出し画像

人事部長には二人の上司がいる

昨年の秋にいくつかの大学で話をさせていただきました。そのうちの1つで、人事の仕事について語りました。どうしても学生からだと、採用のイメージしかないんですよね。その中で「人事部長には二人の上司がいる」という話をしました。学生に伝わるかなと思ったのですが、感想シートを読むと結構、学生には響くものがあるようです。学生の心理がわかるような気もします。

画像1

今日はキャリアコンサルタントの国家資格の試験でした。私の教え子の皆さんもチャレンジしています。私がトレーナーをしているGCDFというキャリアカウンセリングのコースでは、倫理について学び考える時間をかなり多くとっています。これはとても大切なことです。プロフェッショナルをプロフェッショナルならしめることの重要な1つは、職業倫理を持つことです。キャリアカウンセラーと、単なる四方山相談の面倒見のいい人を差別化するのは、専門性と倫理意識なのです。世の中でプロフェッショナルとして認知されている職業には、必ず倫理規定といったものがあります。職業によっては、法律で定められているケースもあります。

刑法 第134条(秘密漏示罪)
第1項 「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」

医師法第19条  (応招義務等)
1 診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

画像2

さて、話を戻します。人事部長には二人の上司がいます。

1人はいうまでもなく、社長です。そして、もう一人は、企業内人事プロフェッショナルとしての職業倫理なのです。

仮に社長が法令に反する行為を求めてきた場合、人事パーソンとしての倫理感に明らかに反することを求めてきた場合、私たちはもう一人の上司である職業倫理と語り合い、そして従う必要があります。社長に物申さなければならないこともあります。もちろん、それを上手にやる必要もあるのですが。しかし、簡単に白黒がつく話ばかりではありません。実は人事という職業が扱う判断のほとんどはグレー色のものばかりなのです。すべてにおいて、グレーに濃淡があるだけなのです。ですから、必死に考えなければいけないことも出てきます。

画像4

人事部長の二人の上司、つまり社長と倫理が相反することがほとんどない場合、人事部長は非常に安定した環境の中で仕事を進めることができます。人事部長としての心理的安全性が高い状況だといえます。逆の場合はなかなかしんどい状況になります。ただし、企業内専門家としての醍醐味はそこにあるともいえます。そして、少しずつ一致度を高める努力を続けることになります。

人事だけでなく、法務、経理、監査など、私たち企業内プロフェッショナルがきちんと職業倫理を認識できているからこそ、社員は安心して仕事をすることができ、企業は大きな不祥事をまみれずにすむわけです。

画像3

※写真は昨日の「二郎長寿司」。久しぶりにタクシーで朝帰りでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?