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自分の仕事をデザインしよう ~日経産業新聞 HRマネジメントを考える 第29回 (2023.06)

日経産業新聞連載「HRマネジメントを考える」の再録、遅れた分の取り戻し、第29回目です。去年の6月まで来ました。あと、もう少しです。
「やることを決める人」と「決められたことをやる人」について、書いています。初めて課長になる時、課長から部長になる時、ここのトランジションをどう乗り越えられるかと大きな相関がある話です。
バックナンバーは、こちらです。よければ、ご覧ください。

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日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2023.06)
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自分の仕事をデザインしよう
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部長や課長などの組織マネジャーにとって、一番大切な仕事は何でしょうか。それは「決めること」です。メンバーから挙がってくる案件の判断はもちろん、組織の目標や今期の取り組みなど、「何をやるか」を決めることが重要な役割です。  
組織には「やることを決める人」と「決められたことをやる人」がいます。組織階層を上がるにつれて、やることを決める仕事の比率が高まります。担当者は、もっぱら決められたことをやる立場であり、優秀な 担当者は実績を認められて課長に抜てきされます。課長になると、やることを決める役割が加わります。自分の課に旗を立てるのは課長自身であり、どんな旗を立て、どこに向かうかを考えて決めるのです。  
やることを決めるというのは自分 の仕事をデザインすることです。しかし、この権利を自ら放棄している課長もいます。今の課長は様々な仕事が降ってきて、実に多忙です。仕事をこなすことで精いっぱいになり、自分の仕事をデザインすること なく荒波にもまれ続けます。決まったことをやるだけで忙しく日々を過 ごし、働いている気にもなれてしま いますが、これではそこから抜け出 せません。  
部長は課長と違い、企業組織の1つの機能を統括する立場です。企業 の未来のために、自分の担当領域でやることを決める立場です。企業にとって、やることを決める人材の育成は重要事項です。意図的に育てな いと、人は日常の慣性に身を委ねて今まで通りの仕事、つまり決めらたことをやるのに甘んじがちになり ます。  
やることを決める人材になるために、まず必要なのは「決める意思を持つ」ことです。やることがきちんと決められた仕事に慣れてしまうと、自分で決めようとする意思は芽生えません。一方で方針はあっても手順の細かい指示がなく、周囲の力を借りて四苦八苦してやりくりする経験をした人は、おのずと日常で細かいことを決める習慣がつきます。  
自分で意思を持ち、決める経験を積み重ねるのは、やることを決める人になる必要条件です。上司が部下を育てる際には、これを意識する必 要があります。しかし、時に親切な上司はこんな部下の成長機会を奪ってしまいがちです。  
やることを決める人材になるために一番必要なスキルは相手の話を聞き、気持ちを感じ取る力です。自分で決めるといっても、好き放題に白いキャンパスに絵を描くわけではありません。上司を含めた多種多様なステークホルダーのニーズや思いを束ねた上で決めるのです。独りよがりの判断はあり得ません。  
発想力と論理性も必要です。発想力は磨くのが難しい能力ですが、人と違うアイデアを出すからこそ、その人の存在価値があります。しかし 完全に斬新なものは不要です。他者のアイデアを組み合わせれば、それはもうオリジナルになります。発想力を磨くには、これまでを疑うクリティカルな目線が大事です。相手にわかりやすく論旨を展開し、相手を 説得するためには論理性を持つこと も必要になります。  
まずは目の前の小さなことからでも自分の仕事をデザインしてみましょう。若いうちから、この姿勢で仕事に向かうことは大切です。それは間違いなく自分の成長にとってプラスになります。

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