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006 マーケティングと人事➀

どうにも日本がぐうたらしているので、自分もぐうたらしてしまい、そしてたまたま忙しいこともあり、仕事(本業&副業)以外のことをほとんどやらずに精神的ぐうたらをしてました。今日、新入社員研修を卒業していく新入社員の話を聞いていて、ぐうたらあかんなと関西弁で思ったので、とりあえず何かアウトプットしてみます。たまたま「人事とマーケティング」というお題があったので、それを整理してみます。

私が営業から人事に異動したのは、1990年10月かな。最初の仕事は新卒採用と新入社員研修を含む人材育成でした。採用担当2年目かな、採用のスローガンを決め、勝手に壁に貼ってました。そういうの好きなんです。で、それが「採用は愛とマーケティング」。当時の会社は営業時代に結構しっかりとマーケティングを学ばせていただけました。で、人事に異動すると、何となく人事という仕事が内向きでいけてない感じがして、自分は違うぞという思いもあったんだと思います。あと、やっぱり採用って「愛」なんですよね。特に新卒採用は。これに共感しない人は、新卒採用は向いてないかもですと思うくらい…。で、このスローガンを拾っていただき、「採用は愛とマーケティング」という連載をダイヤモンド・オンラインに書かせていただきました。それも6年前か。

でも、マーケティングは採用だけでなく、人事全般で大事な概念なんです。当時は採用以外の人事の仕事を内向きだと嫌がっていた自分、子供でした。2018年にHRカンファレンスで「人事担当者に必要なマーケティング力」というセッションにお呼びいただきました。なかなか面白いメンツでのパネルで、その後に打ち上げで門前仲町の「酒肆一村」で激しく呑み食いしたのも懐かしい。このカンファレンスの前に人事とマーケティングについていろいろ考えました。その後、また人事部長として転職。新しい会社へのチャレンジの数々は、新た市場に対するマーケティングそのものだなあとも感じた…。

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確かフリップ・コトラーのマーケテイングの定義。「マーケティングとは、顧客のニーズと欲求を見極め、自社が最大の力を発揮できるターゲット顧客を設定し、そのターゲット顧客にふさわしい製品・サービスを設計する事業活動のこと」。ってことは、何よりも最初に「顧客」の定義が必要ですね。人事の顧客とは誰か。あえて採用などは除外して社内マーケットに絞って考えると、社員と経営者の2つなんだと思います。大事なのは、2つだということです。その双方の顧客のニーズを見極めるのですね。それに対して、そのターゲット顧客にふさわしい人事制度・人事サービスを提供するということ。社員と経営者の利害関係は時に相反します。だって、社員は給料が高ければ高いほど嬉しい。経営者は野放図に出してはいられない、この関係はどうしても現実にあります。どちらにも偏らず、どちらにも忖度せずに、どちらにもおもねることなく、人事としての意志決定をするのです。今や大半の企業には労働組合等ありません。時に人事部は労働組合のように考え、経営者と同じ視座で悩むのです。何よりも、顧客を定義して人事の仕事やってますか。でないと、どんどんルーティン化していくんです。仕事って。

「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである」は、ドラッカーですね。初めて聞いた若い頃、なかなかしびれたフレーズです。人事でいえば何だろう。人事制度も面倒な規則も罰則も、目標管理制度なんかもなくても、社員がわくわくして率先して仕事をする組織をつくることでしょうか。そこに横たわるのは、まさにエンゲージメントされた関係でしょうか。

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人事とマーケティングが関連付けてあまり語られてこなかったのは、人事部という組織が独占企業体だったからです。だから、人事部員にはマーケティング意識なんか不要だったのです。公的セクターや権益独占企業のマーケティング感覚が弱いのと同じです。

社員は人事部を選べない。部門長も人事部を選べない。この人事部の提供する評価制度はいけてないから、違う人事部の制度を使うよなんてできません。今度の賞与計算は、複数の人事部をコンペして一番安い人事部から買うよなんていうのもできません。独占企業体は楽です。競争がないから。でも、下手をすると腐ります。役に立たないいけすかない権力機構になり下がります。それでは駄目です。会社がダメになる。健全な意識を持つには何が必要なのか。それがマーケティング的意識ではないかと思います。

独占企業体に育たない意識、まずは顧客意識、そしてコスト意識、さらには品質意識。これでは本当に駄目です。この3つの意識を持つために効果的なのは、自らが恵まれた独占企業体であることを理解した上で、マーケティング意識を持つことではないかと思います。マーケティング意識を健全にもてば、当然のように顧客意識、コスト意識、品質意識はついてきます。人事部にとって、顧客意識、コスト意識、品質意識は実に大切なものです。そして、これを突き詰めるのは本来、楽しいこと…。

まず、何をやるかといえば、1人ひとりが外に開けることでしょう。外を意識し、外の基準を意識し、外の常識を意識する。それをやって、初めて自社がわかります。自社の強み、アイデンティティというのは、外とのかかわりの中で浮き彫りにされます。そして、自分自身も。

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転職先の企業で人事部長をやるという立場に置かれた人はたくさんいるでしょう。まず、何をしますか。顧客の定義から考えて、顧客である社員と経営者をよく知るということは何よりも大切です。そして、もう1つ大切なのは、自らのブランディングかなと思います。人事の責任者が新しく来るということは、多くの組織で多少は関心をもって受け止められるものです。言い方を変えると「見て」くれているのです。早期にブランディングを上手にできると後がとてもやりやすくなります。無難なテスト飛行を繰り返している場合ではありません。いきなりトップギアでやれることをやります。アーリー・スモール・サクセスを早期に叩き出すことも大切です。それによって社内の関心が集まります。あの人と話してみたいと思っていただけます。

常にマーケットにアクセスしていなければ、良い判断はできません。人事部としては、多様な社員の声を常に聴いていることと、経営者の思いを理解していることです。多様な社員の声を集めることは容易ではありません。一番簡単な方法は、人事部の敷居を極端に低くすることです。こちらから声を集めに行くのではなく、声が集まってくるような環境をつくるのです。一言でいえば「日本一敷居の低い人事部」を創るのです。ここで集まる声は「価値」です。この声ののうねりを経営に伝えることは、人事部としての大切なコミュニケーション・エンジン機能です。これができるだけで、人事部の存在価値は出てきます。

あー、このテーマ、いくらでも書けそうな雰囲気です。今日は寝る時間が迫っているので、このあたりで終了です。

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【酒場写真シリーズ】熊本「鰻ぬたや」。最高の鰻屋でした。すべての客に対して、席についてから鰻をさばきます。そして合わせるのは燗酒。私が訪問したのはオープンから何カ月かたった日。もったいなくてオープン以来、1日も休んでないですと語られていたオーナー。どうされているでしょうか。次に熊本に行ったら、絶対に立ち寄りたい店です。博多は藤崎の「捏製作所」さんで呑んでて「明日、熊本に行くんだけど、燗酒のいい店ありますか」と聞いて教えてもらった店です。熊本行きたい、博多行きたい、捏製作所行きたい。

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