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オンライン、自主性を育む ~コロナ下の新人研修 ~日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2021.03)

ご依頼を受けて、ちょこちょこ書いていたもののアーカイブをこちらでしておこうと思うのですが、なかなか過去分が追い付いていません。。今日は日経産業新聞の連載19回目です。数年前から6~7名でリレー連載のようなものを書いてます。2カ月に1回くらい担当がまわってきます。各内容は広い意味でHRに関係があれば何でもOK。

今回は昨年の新入社員研修を前にしたタイミングの記事です。コロナ禍で研修のあり方の変化を余儀なくされながらも、研修の本質的なことを学ぶという経験を私たちはしました。それにしても、新入社員研修ほど人事パーソンとしてやりがいのある仕事はないかもしれません。他者の仲間と新入社員研修談義をすればするほど、人事って素敵な仕事だなぁと実感します。

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日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2021.03)
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オンライン、自主性を育む ~コロナ下の新人研修
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人事担当者にとって4月は組織改正や異動・昇格・昇給・目標設定などで非常に多忙です。新卒の新入社員を迎える月でもあります。

新型コロナウイルス禍の影響で、1年前のの4月は瞬く間に時が過ぎました。次から次へとやってくる新たな課題への対処に忙殺されました。えたいのしれぬ感染症を前に、社員を守り、事業を健全に存続させるために会社は何をすべきかを真剣に考えました。テレワーク環境を整える一方で新入社員研修への対応にも追われました。

政府の緊急事態宣言を受けて大半の企業はオンラインでの新入社員研修を強いられました。日本中で壮大な社会実験が始まったようなものです。幸い今の若者のIT対応力は高く、まごつく担当者を横目にオンライン研修自体は比較的、順調に進みました。

新入社員研修の大きな役割は、➀学生から社会人への円滑な移行、➁社会人としての基礎的スキルの習得、➂自社に関する詳細な理解、の3つです。研修の担当者はオンライン用に日程を組み替えたり、集団作業の内容を再構成したりと大忙しでした。

「新型コロナ禍だからできない」「オンラインだから無理」などといった言葉は研修担当者の頭には浮かびません。これから受け入れる新入社員へのあふれる思いとプロ意識が彼らを突き動かすのです。もはや緻密にデザインされた学びの場を提供することはできなくても、新入社員に協力を仰ぎながら共同作業で研修を実施した企業も多いことでしょう。

嵐のように過ぎ去った昨年の新入社員研修から、私たちは多くの本質的なことを学びました。

1つは緩くデザインされた研修の良さです。研修は主催者が押し付けるものでなく、参加者と一緒につくる「場」です。これを強く再認識しました。新入社員研修はある程度きちんと準備をしがちなのですが、昨春はその余裕がありませんでした。

例えばチームに分かれてオンラインで議論する際は研修担当者もすべてに目が届きません。議論が始まれば参加者の自治に委ねるしかないのです。新入社員を信じて委ねるのです。

この自治の機会が、主体性と自主性と仲間意識を思った以上に醸成しました。緻密にデザインしきれていない場だからこそ、チームの関係性さえ構築できれば研修効果は高いことを学びました。

2つ目は春に縛られない日程です。新人研修は詰め込み教育になりがちです。入社直後にまず基本的なな知識やスキルを徹底的にたたき込むのです。これには配属すると再たび全員集めるのが難しいという事情もあります。でも、オンラインなら時間と場所はそれほど問題になりません。入社時研修は期間を短縮し、年間計画の中で必要な時期に必要な知識をオンラインで伝授すればいいのです。この方が浸透しやすいのは当然です。

最後は新入社員も担当者を観ているということです。日々奮闘している研修担当者の姿を見ることで、自分たちに注がれている会社の期待や担当者の愛情を肌で理解します。外部の研修業者に丸投げしたり、過去のマニュアルを棒読みしたりする新人研修では意味がありません。

今年ももうすぐ新人研修の季節が来ます。オンラインの採用活動を経て、これまで一度も会社に来たことがない新人たちもやってきます。新たな気持ちで彼らに対峙しなければなりません。

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