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018 思考停止ワードの誘惑に負けない

人事部長引継ぎシリーズ第18回です。
最近した人材育成からみの商談で面白い体験をしました。思考力を高める研修企画の商談なのですが、年配の先方のコンサルの方は、「結局、何をやっても、変わるかどうかは、人によりますよね」「いろいろ施策は考えるにしても、やっぱり最後は運だからなあ」といったようなことを本気で連発されるのです。これ、典型的な思考停止ワードです。ものごとを外側の安全地帯から見ているコミット感皆無の発言です。以前の日本はこれでも仕事ができたんだよなあとレガシー感が溢れ出します。懐かしい。でも、本当に以前の日本はこのノリで仕事ができていたんです。若手の皆さん、ごめんなさい。とにかく、久しぶりにこういう方にお会いできて、とてもすがすがしい感じがしました。
私達はヤクルトスワローズのピッチングコーチのように、今いる戦力で明日のビジネスを組み立てることを真剣に考えなければいけません。「人によるからな」などと言っている余裕はありません。そして、確かに経営に運の要素はあります。しかし、運は発想力と努力で手繰り寄せられるものだと信じで時を惜しまず知恵を絞り続けています。これが右肩上がりではない今の日本の現実です。隣の会社と同じものをより安く早く作ればもうかった時代は半世紀前の過去です。そして、思考停止ワードの呪縛から離脱できなかったのが、まさに失われた20年の日本だといえます。ここから抜け出せていない人が、まだ日本には多くいるのです。だから抜け出せないのですが…。
と思考停止ワードのことを書いていて、筒井康隆が「48億の妄想」あたりでマスコミの思考停止ワードについて書いていたなあと思い、ちょっと別の切り口からの話題を入れようと思い、インターネットを検索してみたら自分のブログがヒットしました。グロービスのクリシンに通っていた15年前の夏のブログです。ちょこっと引用しますね。
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「思考停止ワード」で思い出すのは、大昔から筒井康隆がニュースのアナウンサーや解説者があれこれと伝えた最後に「大変に考えさせられる内容ですね」とか、「私達としてもしっかりと考えていく必要があります」といって締めくくるのに対して、やはりマスコミ独特の「思考停止ワード」だといっていたと記憶しています。「考えねばいけません」というのが、「これ以上考える気はないから終わるよ、どうせ僕達、無責任だもん」と聞こえるんでしょうね。
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同じようなコメントを私たちは吐き出していないでしょうか。それにしても、過去のアウトプットに触れると、果たして今の自分は15年前の自分と戦って勝てるのだろうかと、時折、思います。ちゃんとまだ成長できているだろうか。学び続けているだろうか。そんなことも考えます。10年前、15年前、20年前の自分はなかなか手ごわいです。でも、負けずに戦い続けます。それが心を老化させずに生きるということだと思うので。

話が横にそれました。思考停止ワードで3つ目の話題です。もう1つ別の切り口からです。
人事における思考停止ワードというのを、これも10年ほど前から主張しています。その3つとは、マネジメント、コミュニケーション。リーダーシップです。この3つ、安易に使い過ぎなんです。カタカナ言葉はすべてそうなのですが、曖昧な概念の中で、なんとなくわかってようにさせてしまう魔力があります。「結局、マネジメントがうまくいっていないということかな」「あの課は課員同士のコミュニケーションが悪いのが課題だよね」「結局、彼はリーダーシップが弱いんだよな」。ね、わかったような気になるけど、まったく解決に結びつかないですよね。まさに思考停止ワードです。「だからどうするの」がなくて終わってしまうことがいかに多いことか。このことを「ひねもす」の回の酒場学習論(タイトル: 三鷹「ひねもす」とカタカナ人事言葉)にも書いているので、ご興味があればお読みください。

「ひねもす」です。正月営業の時かな。

コミットのないレポートや企画書には思考停止ワードが陳列されています。次の瞬間からアクションに出るイメージのかけらも生まれません。キャリコンの実技試験の口頭試問とかで、「クライアントの課題は自己理解不足です」とかいってしまう方、それもある意味では思考停止ワードです。その先に思考を進めないといけません。何についての自己理解が不足しているのか、が大事です。
「結局、何をやっても、変わるかどうかは、人によりますよね」。これは正しいです。でも、それを言い放って終わりでは何もできません。だから、我々はどんな工夫と努力をして、少しでも変わりたいと思う人を増やすのかに知恵を絞り切るのです。そんな思考法ができるような人を育てたいという商談で放たれた言葉だったので、なおさら面白く感じたのです。

岐阜城から。凄い城だった。信長の思いも凄いと思った。

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