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オンラインでの「職場力」~意図的なフォロー必要 ~日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2020.09)

日経産業新聞水曜日のリレー連載「HRマネジメントを考える」、曜日とタイルとを変えて連載の継続が決まりました。ありがたいことです。それにしても随分とアーカイブの紹介が飛んでいました。もうこんなテレワークも1年以上、すっかり日常です。冒頭のセミナーは去年の5月のことですが、今、読み返すとこんな思いをしていたのが逆に新鮮です。

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日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2020.09)*************************************
オンラインでの「職場力」意図的なフォロー必要 
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先ごろオンライン講演会に登壇し、私を含む3人でパネル討議をする機会がありました。話し手も聴講者も全員がオンラインでの参加です。討議中は聴衆の反応が見えず、やりにくさもありましたが、3人の息が合ってエキサイティングな時間を過ごせました。
しかし講演が終わり、主催者が会議システムをオフにした途端、プツリと画像が切れて自宅に1人でいる自分に引き戻されました。聴いてくださった人々の反応も分からないままです。
リアルな講演会であれば、終了後に参加者から感想をいただいたり、名刺交換をさせていただいたりといった時間があります。ですがオンラインでは「プツリ」です。100からゼロに瞬時に切り替わる感じです。
これはオンライン会議でも、オンライン飲み会でも同じ。登壇者にとってセミナー後に参加者と交流する時間は、他では得がたい「余白と余韻の時間」なのですが。
私はふだんテレワークをしていて不便だと感じることはないのですが、この余白と余韻がなくなることの影響は、実はかなり切実なのではないかと思っています。
会議でのプレゼンテーションに失敗して落胆しているメンバーがいたとします。同席したマネージャーであれば、会議室から執務室に戻る廊下で一声かけるはずです。
会議でいいプレゼンができたメンバーに対しては、会議室を出た後や自席についた後などに、ねぎらいと称賛のコメントを伝えるでしょう。会議が終わったあとの余韻と余白の時間です。
オンライン会議では移動時間が不要ですから、合間の時間を飛ばして連続して会議を設定することが可能です。営業担当者の商談も移動時間を気にせずアポイントを設定できます。生産性の向上が可能でしょう。
半面、余白と余韻の時間は皆無になります。会議後に同僚と連れだって会議の話をしながら執務室に戻るのは、貴重な余韻の時間です。今あった会議をしっかりと振り返る機会でもあります。
同僚との雑談等も含め、今までの職場には良くも悪くも余韻と余白の時間がありました。それが日本のホワイトカラーの生産性が低いと揶揄される理由の1つだったのかもしれません。
ですが、そんな余韻と余白の時間こそが、単なる空間であるオフィスを大切な「場」であると私たちに感じさせてきたのではないでしょうか。
もちろんオンライン会議であっても、プレゼンに失敗した同僚を気遣って会議後にチャットで声をかける上司もいるでしょう。物理的な場を共有していない場合は、これを意識して意図的にやらなければいけません。
職場で浮かない顔をしている同僚がいれば誰しも気にしますが、「今、あいつは独りの部屋で落ち込んでいるかもしれない」との想像力を働かせる必要があるのです。
「さっきは、ちょっと言い過ぎたかな」と気になって、遠目でメンバーの様子をうかがうと、自分の席で涙を見せています。すると近くの先輩が、すかさずフォローを入れてくれる。これが「職場」の力でしょう。
オンラインでは会話が終わった1秒後の相手の姿を見ることはできません。5秒後に机に突っ伏して大泣きをしても誰も気づかないのです。職場という場の力、そこにある余韻と余白に頼れない中で、私たちには意図的かつ基本に忠実なマネジメントが今まで以上に求められています。

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