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映画『イン・ザ・ハイツ』は何故アカデミー賞有力候補なのか?徹底解説!


アカデミー賞と映画

ハリウッドにある多くの映画プロダクションが、アカデミー賞受賞を期待する作品を主に秋頃から公開するその時期を、アメリカのエンタメ界では「オスカー・シーズン」と呼ぶ。しかし、今、全米の映画業界でこのオスカーシーズンを迎える前にも関わらず、早くも来年のアカデミー賞候補がでたと話題になっている。

今年度のアカデミー賞作品賞を受賞した『ノマドランド』では名優フランシス・マクドーマンドが、自身の生き方や考え方、ファッションなどライフスタイルのすべてを投影して、「孤独」という物語を描いた。実在のノマドたちのなかにマクドーマンド自らが身を投じ、彼らと路上や荒野で交流し、砂漠や山、森の中へと分け入り、深い絆を結ぶ。ドキュメンタリーとフィクションの境界線を軽々と超える、全く新しい表現ジャンルが切り開かれたと世界中から注目を浴びた。

今年のアカデミー賞は様々な環境に規制が敷かれた中での特別な一年とそれを総括した受賞作品のセレモニーであった一方で、アメリカ全土が「復活の年」と掲げる、来年のアカデミー賞は盛大に祝われる一大セレブレーションになるであろうと期待が寄せられる。

ついこの間まで、業界全体が非常に困窮した状態に陥っていた。映画館は閉鎖され、世界中の映画プロダクションが倒産の危機に晒された。まだまだ先行きが不透明なところはあるものも、業界の温度感が、夏の幕開けと共に一気に上昇してきていることは確かであろう。アメリカ国内では、劇場のチケットブースが営業を再開し、映画館にも人々が戻ってきた。迫力の大画面とサラウンドシステムの臨場感を、そして他の人々と同時共有する感動という「空気」を求めて。


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