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広東磁器:香港の秘やかな文化遺産(港式廣彩-滄海遺珠/Canton Porcelain - Hidden gems in Hong Kong)

ここのところ、本職もだがウィルス禍以降あまりにも色々な出来事が起き過ぎて、Twitter140文字以上の文を認めるのが物理的にも心理的にもなかなかハードル高かったのだが、新鮮な気持ちのうちに書きたいという心も少々湧き上がってきたのでそろそろシノワマニアの本分に戻ろうと。


最近、広東磁器の絵付ワークショップに通っている。

きっかけはやはりこのウィルス禍で、幸い香港は全体ロックダウンは経験せずに済んでいるものの、遠出=国境越え、海外旅行、が基本な狭い香港のこと、リフレッシュにできるアクティビティは限られているのが現実。

出来ることはとりあえずやってみた。少々手の込んだ料理、レストラン店内で人数制限のかかる中友人(当然お互い行動パターンを分かり合えている人たちに限る)と食事、ひとり飲茶、ハイキング(郊外x屋外x運動、でマスクが外せる)、香港内未踏の地訪問、etc.。

そして本来「餅は餅屋」で基本手仕事がアウトソーシングされがちな香港でも、とうとうDIYや様々なクラフト関係のアクティビティが流行り始めた。何度も言うが、我々香港住民は「何処かに行くこと」でリフレッシュする手段が本当に限られているのだ。
それに伴い各ジャンルの工房やギャラリーなどが一般向けにワークショップを開く機会が増え、以前から気になっていたシノワズリ満開な広東磁器(廣彩)を扱う歴史ある工房「粵東磁廠(Yuet Tung China Works)*」もこの機にワークショップ開設と知り、この旧正月あたりから通い始め。


*粵東磁廠(Yuet Tung China Works): 中文リンクで失礼。いつか別の機会にきちんと翻訳するつもり ↓

歴史の深さやその販売体制などは既に日本人観光客向けのガイドブックでも取り上げられているので今は触れないが、ほぼ1世紀前に広東省から出てきて以来、香港製陶業界の栄枯盛衰を生き抜いている素晴らしい工房である。都市部の工業ビルの中に窯を持っているのも香港らしい。

↓ 工房兼店舗。此処に窯がある。


それにしても我々みたいなド素人にも、普段製品に使用している宝石原料の顔料絵の具を使わせてくれるので恐れ多い。例えば、緑、黒、黄色は翡翠、赤は珊瑚、と言った具合なのだ。

例えば、このお皿。初級編なので流石に下絵アウトラインは既成のものだが、グリーンもイエローも、どちらも翡翠の顔料。筆で皿の上に色を載せたり線を描いたりしていくのだが、何せ石が原料で水に溶けているわけではないのでどうしても均一に色を載せるのが難しい。

逆に言えば、グラデーションを作るのには最適。

一作ごとに段々楽しくなってきた。

当然ながら廣彩=広東磁器には伝統的デザインや様式美があり、典型的なものは見出しのCanton Rose(牡丹花)や蓮の花等花鳥風月各種、言わずと知れた公雞碗(雄鶏柄のお碗、南洋辺りではアヤムボウルAyam Bowlで有名ですね)、美女に子供、そして吉祥シンボルの胡蝶、トンボ、桃、蝙蝠に白菜…etc.。

一方で、その名の通り広東発祥の伝統工芸ながら何故冒頭の「港式(香港スタイル)」に変化を遂げているかと言うと、香港そのもの同様に東情西韻(East Meets West)を経て自由な発展を繰り返しているから。例えば伝統的な縁の文様の中に英国式のエンブレムや紋章が施されたり、西洋の花(上記のお皿などは典型的に東西各種の花が入り交ざっている)が描かれたり…。

従って、わたしたちを導いてくれるしーふー(師傅、マスターの意)もかなり自由にやらせてくれるのが良い。

わたしも、伝統的なものから(こちらは縁起物の白菜。初の全面手描き。何せワークショップが週一なので完成まで延べ2か月くらいかかった) ↓

少し和柄っぽいデザイン(鯉も蓮池も一応中華系モチーフなのだが、水紋書いたら和風になった)を取り入れたものまで ↓ 

まだまだ細い線や規則的な曲線(円など)が均一に描けない、など課題は山積みだが、実は窯で焼きつけるまではいくらでも修正が利くのが磁器絵付けの良いところ。精進精進。

いつかこういう ↓ 美しいものが描けるようになったらいいなと願いつつ…

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