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リカバリー能力アップのファクター

リカバリーに関するご質問にお答えしようとおもう。

質問1> ダブルヘッダーの際に考慮・配慮すべきリカバリーの要素があれば知りたい(トレーナー)

質問2> テニスは静→動の繰り返しでポイント間、チェンジコート間全て時間が決まっていて、その中でいかにメンタルを整えるか、リカバリー出来るかが重要になる。是非、リカバリー能力向上について中野さんの話を聞いてみたい(理学療法士)

 (両質問とも回答に含まれる要因が重複するため1つにまとめる)

回答> まず、リカバリーの原則について。
鍵となるのは脳疲労、血流(酸素)、水分。
これをベースとして、筋間の滑走や関節の位置、経絡などが加わる。

また、東洋医学的には回復を阻害する状態の代表格が「上実下虚」とされ、頭に熱がこもり、下半身の血流が滞ると回復は遅れることを指す。睡眠状態の悪いときなどもこれに該当する。

要するに、頭から熱を取り除き、お腹を含めた下半身の血流を高める必要性を意味している。下半身の重要ポイントは、お腹・腰・股関節・ふくらはぎ・足裏だ。

これらを前提として。
今回の質問リカバリーの条件となるのが「その後も動ける状態」であること。

リカバリーには大きく分けて以下の二つがある。

・直後に動ける状態
・その後睡眠など運動する必要がない状態

リカバリーを行う際はこの二つについて分類しなければならない。
例えば後者の場合、持続的なストレッチも適応だが、前者の場合にそれをやってしまうとパフォーマンスは低下する。

今回のご質問は前者の直後に動くためのリカバリーにあたり、
動ける状態を保つ、動きを回復する、ことが目的となる。

例えば筋の階層で考えるとその方法は原則としてバリスティックが選択される。
呼吸だと、前者は鼻から吸って口すぼめで吐く、後者は鼻から吸って鼻から吐くことを推奨している。
*これをそれぞれ分けて記載すると非常に長くなってしまうため、今回は主に共通項について説明

疲労や回復という現象は筋肉単体で起こっているのではなく、身体や動きを構成する要素が階層的に影響し合いながら起こっているため、それぞれの階層から考える必要がある。

▶︎脳
マインドフルネスなどでは筋の出力が落ちたり動きが悪くなる原因は、筋そのものの疲労よりも先に脳疲労が起こっているためといわれている。実際、複雑なトレーニングをやりすぎたりすると頭がぼーっとして速い動きや大きな力が出せなくなるケースにはよく出会う。脳疲労の回復には、頭の熱を取り去る、頭蓋・顔面や首の緊張をほぐす、眼球の動きのコンディショニングなどが有効。(早期リカバリーにはスマホなど目の疲労を起こすものは厳禁)
またアロマや美味しい食事など匂いのアプローチも効果が期待できる。

▶︎眼球
脳や首の動きと関連深い部分。眼球運動を担う筋群、視神経へのアプローチは必須。後頭部の硬さが出ているときは必ずとっておく必要がある。特に直前のゲームなどでミスをしたりメンタル的に良くない状況の際は、眼球運動が低下するので、頭の横側や耳をほぐしながら眼球運動が元に戻るのをチェックしてほしい。

▶︎内臓
お腹の硬さは腹膜が付着している背骨や骨盤の動きを阻害する。
大腰筋も近くを通過しているため、コンディショニングには不可欠な部位だ。
また、お腹が硬くなると横隔膜の動きが制限され、呼吸機能にも悪影響を及ぼす。スポーツでは特にヘソ下が硬くなる傾向があるため、指で深く押さえて痛い場合は必ず取り除く必要がある。簡単な方法として、指で押さえながら腹式呼吸で押し返すのを繰り返すと良いでしょう。

▶︎関節
強度の高い動きを繰り返すことで関節の位置が微妙にずれてしまうケースは多い。怪我や動きの精度に問題が出る温床になるだけでなく、血流にも大きな影響を与える。特に股関節の位置は必ずリセット必須、全身の血流を考慮するとその競技で動かす必要の少ない部位も動かしておく必要がある。 

▶︎筋・筋膜・皮膚
動きの中で緊張を起こしている部位の長さを確保すること、血流を確保するのは絶対条件。血流については特に大臀筋など大きな筋群、”第二の心臓”ふくらはぎは必須。ハムストなど筋間の滑走や筋膜との滑走、皮膚の柔軟性もリカバリーの対象として重要。これらに加えて筋の状態改善には水分も不可欠。

それぞれの根拠までは深く提示できず、専門的な観点からはとても大雑把な内容だが、これで最低限はカバーできるはず。(経絡については今回は省略)

何より重要なことは、「リカバリー能力」そのものを高めること。
リカバリーする、だけでなく、リカバリー能力を高める。
そのための身体づくりをする。
私はこれを体力を構成する3要素の一つとして必ず選手に指導している。
体力=容量×省エネ性×回復力
参照:体力を構成する三要素

JARTA Online Training Program ”リカバリー” では、今回紹介できなかった経絡も含めリカバリーの方法を全て公開している。大会や試合は疲労との戦いでもあるので、回復力は勝つためにとても重要。パフォーマンスや身体操作をいくら高めても疲労してしまえば十分な発揮は不可能だ。

リカバリーをマッサージだけに頼っている間は、リカバリー能力は決して高まらない。

リカバリー能力アップのための身体づくり。
勝つためには取り組む価値がある。

 



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