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日本の神道・仏教〈3〉

日本の神道・仏教〈1〉
日本の神道・仏教〈2〉

⑤ 神儒釈道合一論

『ユーラシア大陸的宗教』という仮説

仏教は東だけでなく、西にも広がり、様々な形でヨーロッパに入っていることは、多くの宗教学者が指摘しています。
ユーラシア大陸的宗教とは、仏教がユーラシアの東端の日本から西端のヨーロッパまで何らかの形で広がることが出来たのは、それを受け入れる宗教的素地があったからではないかという仮説です。

日本の宗教史を見ると、少し不思議だと思うところがあります。

仏教が来て約千年経ってキリスト教が来ました。
このキリスト教により、死後の霊魂の存在と天国と地獄について説かれました。
それについて、民衆は別に不思議そうな顔をしなかったそうです。

ということは仏教の「天・人・アシュラ・餓鬼・畜生・地獄」という六界を輪廻転生するという事を民衆は信じていなかったんじゃないか?という事です。
転生すれば「霊魂だけの存在」はあり得ないはずなので、民衆は「ある」と信じていたらしい。
それを示す民話も少なくないし、幽霊は日本では常に存在し続け、現在でさえも多くの人に存在を信じられています。
仏教のように、死後に人が何かに転生してしまっては『四谷怪談』は生まれません。

四谷怪談(よつやかいだん)とは、元禄時代に起きたとされる事件を基に創作された日本の怪談。江戸の雑司ヶ谷四谷町(現・豊島区雑司が谷)が舞台となっている。基本的なストーリーは「貞女・岩が夫・伊右衛門に惨殺され、幽霊となって復讐を果たす」というもので、鶴屋南北の歌舞伎や三遊亭圓朝の落語が有名である。日本一有名な怪談といわれるほど[1]現代に至る怪談の定番とされ、何度も舞台演劇や映画、テレビドラマ化されてきたため、様々なバリエーションが存在する。
ウィキペディア

そして日本人は、天には美しい天人が住み、天女は羽衣をまとって空を舞うと思っていました。
こういった「羽衣」伝説もまた少なくないし、「仙人」という不思議な術で永久に死なない人もいるらしい。

いったいこういう民話や伝説や物語はどこから出ているのか?

実はこの「天人」とか「仙人」も道教の言葉なんです。
道教では宇宙の最高神は天皇=天皇大帝で、天上の神仙世界にある紫宮(紫微宮=紫宸殿)に住み、地上の皇帝と同じように官僚がいてその中の最高官僚が「真人」、下級官僚が「仙人」なんです。
そしてこの天上の天皇大帝は、官僚達に命じて常に地上を監視させ、その人の善を賞し、悪を罰している。

つまり日本では、この天上の政府を地上に反映した形でおくりなに天皇の称号を持つ支配者がおり、紫宸殿があるという形になっているんです。

「神の支配の形態を地上に反映させたのが地上の政府」という考え方はヨーロッパにもあり、エウセビオスは、キリスト教を公認したコンスタンティヌス帝の政府を天上の秩序の反映としています。これと似た考え方かもしれません。


天皇が生前にも「天皇」と呼ばれるのは近世のことで、それ以前はすべて「院」と呼ばれ、死後におくりなに天皇を付すのが普通で、例外は後醍醐天皇だけです。

このことは「天皇」とは死後の天上での称号であることを示し、死んだ後は天から「天皇大帝」として子孫の統治を見守るという考え方があったのでしょう。

そうなると、その究極にいるのは「天照大神」ということになりますが、しかし、日本では同時に鎮護国家の祈願の対象は「仏」です。

ここで統治神学として、儒釈道合一論が神儒釈道合一論となり、神社と寺院が一体化し、それを合理的に把握するのに 本地垂迹説ほんちすいじゃくせつが援用されても不思議ではありません。
道教的発想はこのような形で神道と習合し、広い意味で道教は仏教と同様にユーラシア大陸的な宗教的要素をもっていたから、神道との習合はごく自然な形で行われたのでしょう。

【感想】
今回は日本人の宗教観について全3回に渡りまとめてみました。
私は今回の学びによって、日本人がなぜいろんな宗教のイベントや行事を受け入れられるのかが分かってきました。

元々、ユーラシア大陸的宗教のように、仏教や道教には、いろんな宗教を受け入れられる素地があり、日本にはその道教の影響がある神道が元々あったので、この三つの宗教はその性質からお互いに融合しやすかったんですね。

そして道教と神道には、キリスト教と同じく「神の支配の形態を地上に反映させた地上の政府」がある。
仏教と道教も本地垂迹説で集合した。

こういういろんな宗教や思想が融合した文化があるのが日本。
こういう背景があるから、いろんな宗教行事もすんなり受け入れてしまえるのか…。

子供の時から度々思っていた疑問が解決した思いです。

参考にさせて頂いている本です。

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