キャリア教育とポートフォリオ
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キャリア教育とポートフォリオ

こんにちは、Japan Education Lab 代表の古谷です。
いま、学校教育の中でポートフォリオ化が注目されているのを皆さんご存じでしょうか?元々はクリエイティブの世界で自身の成果を対外に公開するものとして用いられてきた言葉ですが、学校のICT化が進み、探究学習などのいわゆる答えのない問いを授業として扱っていくことが増えてきた中で、教育の中でも生徒のためのポートフォリオ作成を求められるようになってきました。

【教育用語におけるポートフォリオ】
教育用語におけるポートフォリオとは、「成果物のファイル」と考えるとわかりやすい。学生や生徒一人ひとりに専用のファイルやケースを準備しておき、提出されたレポートや試験の答案用紙、活動記録や評価データなどを入れれば、それがポートフォリオになる。それを学生や生徒に対する評価に用いることで公平で確実な評価が行えるという性質のものである。

高大接続のために大学入学者選抜改革の中にもポートフォリオを使った選抜に関する事項が入っており、高校生は学校の授業や行事、部活動などでの学びや自身で取得した資格・検定、学校以外の活動成果や学びを記録することで、出願時に利用できるとされています。

今回はキャリア教育とポートフォリオを絡めた内容を書きました。評価や入試を基準にするとポートフォリオはハードルが高いような気もしますが、キャリア教育でのポートフォリオは誰でも簡単に実施でき、効果も見込めるため、多くの学校で少しずつ形ができればと思っています。

ポートフォリオの役割

そもそも教育におけるポートフォリオの前提的な役割として、『学んだ事項の記録を通して、学びのプロセスを明らかにする』ということが考えられます。
どういうことかというと、微積分が苦手な子がいたときに、ポートフォリオがない場合、微積分の全体像が苦手だと捉えがちになってしまうおそれがありますが、学びのプロセスが明らかになっていると、どの単元でつまづき始めて今に至るのかが自分で発見・理解することが出来ます。ポートフォリオがなくとも、自分で小テストや定期テストの結果から把握することもできますが、タイムリー性に欠けます。学習内容の理解に課題を感じた瞬間にどう振り返るのかをポートフォリオは示してくれています。
とはいえ学習だけに限れば、ICTで解決することも可能です。

こちらのようにつまづきからどこに戻るかを解決してくれるサービスはいくつかあります。では、このようにICTが充実しつつある状態で、なぜポートフォリオなのか。私が思うに、教育においてポートフォリオがはたすべき役割は大きく2つだと思います。 

〇 非認知能力の育成、分析、評価
〇 自分だけのデータベース

個を育てることが求められている今日の学校教育において、顕在化させないといけないことはたくさんありますと思います。その中で、ポートフォリオによって支援できる内容は上記のように考え得ています。ポートフォリオを作成し、自己肯定感や有能観などの定量化が難しい項目を把握・評価することを通して、学校での教育に大きく役立てることが出来ると思います。また、自分だけのデータベースをきちんと保管しておくことで、振り返りや他社との共有が簡易となり、振り返ることの有効性を自身で理解し、実践していくことが普段の生活で可能となります。

キャリア教育における重要性

現在のキャリア教育では授業や進路指導、学校生活などにおいて、どれだけ生徒のキャリア観が醸成されたかを測ることが出来ません。そこで必要になるのがポートフォリオです。

ポートフォリオイメージ

一例として、図のようなものをポートフォリオを考えました。

【生徒の成長過程】
通知表やテスト結果から自身のレベルを把握することが出来ますが、ポートフォリオ化してほしい部分としては、学習過程や様相をメタ的に捉えたものとなります。自分がどういう勉強をした、どんな観点で授業のノートまとめをしたという記録は今後の勉強の参考にもなりますし、入試勉強の際にも活用することが出来ます。
また、プロジェクト型の学習では様々な力を形成したり、価値を身に着けることが出来ます。やるだけではなく、プロジェクトでの経験を次にどう生かすのかを考え、アクションプランをたてることで、未来志向的にポートフォリオを扱うことが出来ます。

【自分自身のこと】
この項目についてはほとんどの学校で行われていますが、前後関係とらえきれている学校は多くないと思います。時間的展望というのですが、過去・今・未来の自分を結びつけることがどこまでできているのかという話です。自分はどういう原体験から進路先を考えたのか、そもそも原体験がなく進路先を決定したのか、または将来の夢や今の関心から進路先を決定したのかなど。時間にまたがって紐づける工程やロールモデルとの出会いや価値をポートフォリオ化することで、自身の進路決定に今以上に意味づけをすることが出来ます。

【対話の記録】
進路面談を記録することはとても重要なことです。先生にとってはもちろんですが、生徒にとってどういう論理で進路を考えたのかアウトプットする場はとても少なく、先生と話して初めて考えるという生徒もいるかと思われます。そんなとき、どういう話をしたのか、自分はどう考えて発言したのかを箇条書きで記録するだけでも、今後自分が進路について考えるときにはとても役に立ちます。
また、生徒同士で進路について語り合う場面もあるでしょう。おそらくそれを先生が感知することはできないのですが、些細な発言ややりとりから、進路がはっきりするということもあります。そういうこともポートフォリオにし、自分だけのデータベースとして保管すると効果が見えてくると思います。

状態をつくる

さて、これまでポートフォリオの重要性や用途を考えてきましたが、如何せんすぐにやるというのは中々難しいと思います。このように新しいものを取り入れて実施するためには、”状態をつくる”というフェーズが必要になってきます。学校の中で先生と生徒がどう状態をつくることで、最大限の形でポートフォリオに取り組むことが出来るのか。

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私が思うにポートフォリオを最大限に活用するためには、ポートフォリオを活用する以前に上記の3ステップを通ることが必要だと思います。ポートフォリオもそうですが、何か新しいものを取り入れていくときには、どれだけ有用性を感じてもらうかが1つのポイントになってきます。ポートフォリオを使ってどうかというよりも、本質を元から追っている状態の中で、それを革新的に進めるたり、より能率的にすべきにはどうしたらいいのかと感じ始めるタイミングでポートフォリオというソリューションが見えると一番いいのかなと。

さて、上記のステップの中でよく抜けているなと感じるのが、自発的なステップバックです。これはどういうことかというと、教科的な側面でもよくある瞬間ですが、単元の理解が追い付いていないと感じたときに、自発的に「前に戻ろう」、「この部分を再理解するために、ノートをまとめ直そう」という感覚が乏しいと思います。これは教科外、例えばキャリア教育も同じでワークシートがワークしていない、要するにその日書いておしまい、次にそのワークシートを活用する瞬間がないので、ステップバックがほぼないように思われます。

ステップバックは悪いことではなく、前の自分を今の自分に投影する大きな効果があります。ここがうまくできると、内発的動機付けにもつながっていくと感じられます。

キャリアパスポート

さて、キャリアパスポートはご存じでしょうか?
おそらく学校関係者の方々は知っていると思いますし、すでに活用されている方もいるかと思われます。

キャリアパスポートとは?
学校から高校までのキャリア教育に関わる活動について、学びのプロセスを児童・生徒自身で記述し、蓄積した記録を振り返ることができるポートフォリオのような教材
文科省発行:キャリア・パスポートって何だろう?

一言で言えば、キャリア教育用のポートフォリオとして定義されているのが、キャリアパスポートです。実はこれも中々活用まで難しいところもあります。というのも、文科省側から様式が出ていますが、いつどの場面、どういう生徒状態の時に、どんな様式を利用すればいいのか分からない側面があり、中々手を付けられない先生が多くいます。

公にキャリア教育で必要だと言われていることは”見通し”です。弊社の観点ですが、キャリアパスポートを推奨している最もたるところは、定期的に生徒に見通しを持たせる場面を学校生活の中で生み出して下さい。というところにあると思います。よく見通しを持たせても、将来どうなるか分からないのだから意味がないのじゃないかという意見もありますが、見通しを考えさせる癖付けはかなり重要なことだと思います。人生のどの場面でも、自分の将来や目標を考える瞬間は何回も訪れます。その時に見通しを立てようと思うのか、今はいいかと思ってしまうのでは全然違うので、そこで見通しを考えようと思ってもらうためには、少なくとも中高の段階でキャリアをイメージするのはとても重要だと思います。

そういった意味でキャリアパスポートはやるべきだとは言えますが、別にキャリア教育のポートフォリオをキャリアパスポートに100%準拠すべきだとも思いません。あくまでもキャリアパスポートは推奨されているものなので、学校の生徒の様相に合わなければ、無理に使う必要もないと思います。例えば、キャリアについて意識が全く芽生えていないということであれば、大きな枠が用意されているワークシートを使うのはとても困難です。まずはキャリアに関する行事や授業でアウトプットしているものを溜めていくことから始め、徐々に前項にあるような状態を作ったうえで、必要になったタイミングでキャリアパスポートのメソッドを使っていくといいと思います。

ICTの活用

キャリア教育での活動をポートフォリオにしていくなかでICTの活用はかなり効果的です。デジタルネイティブの子たちにとって、ある種ICTであることのほうがより活用が進むということも考えられます。

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こちらがEdtechのカオスマップです(引用元:スタディサプリ株式会社

主に右上の『授業支援』の箇所にあるサービスとGoogle for Educationそして、Microsoft Teamsがポートフォリオのために効果的な活用ができるかと思われます。

ここでは、G Suite for Education、Microsoft Teams、そしてスクールタクトについてご紹介します。(他のサービスの機能でポートフォリオに使えますよ!と教えてくれる方がいましたら、是非ご連絡ください)

G Suite for Education
G Suite for Educationにおいてポートフォリオはクラスルーム機能とドライブ格納機能を用いることで実現することができます。基本的にG Suite for Educationではクラスルーム機能の中で生徒と課題などをやりとりすることができます。ドライブと自動連携されているため、クラスルーム内でやりとりした課題は自動保存されます。
授業の形態に合わせて、ドキュメントやスプレッドシートを用いた多様なアウトプットをドライブに格納することで、生徒はいつでも閲覧することが出来るので、振り返りが習慣化していれば、自身のデバイスから閲覧し、授業中や家庭でいつでもポートフォリオを活用することが出来ます。

Microsoft Teams
Microsoft TeamsにはOneNoteという機能があります。いわゆるノートなのですが、先生側は全生徒のノートを表示することができます。1枚のノートを配るだけにはなりますが、生徒がそこに自分が学んだ軌跡を記録するようになると、それだけでポートフォリオとしての効果が出ると思います。
また、SharePointを使いこなせば、有用なキャリア教育のフィードとして活用することができ、個人の観点だけでなく、クラスや学校全体の集合知を形成していけますので、生徒が普段の学校生活でもキャリアを考えるいいきっかけをつくりだすことが出来ます。

スクールタクト
スクールタクトは授業支援クラウドに特化したサービスです。先生から生徒へ向けて課題を配信し、その課題を一斉型・協働型・反転・個別の形で生徒の状態に則した授業スタイルを展開することができます。スクールタクトにはデフォルトでポートフォリオ機能が備わっており、生徒が自ら取り組んだ課題は自動でポートフォリオ化され、いつでもどこでも自分の課題を振り返ることが出来ます。
また、キャリア教育において必要なことは他者の意見や考え方を自分と照らし合わせてみる。ということなのですが、スクールタクトの協働学習機能を用いることで、他者の考えを元にインタラクティブなやりとりを実現でき、キャリアについて友達と話す風土を作ることが出来ます。

最後に

ここまでお読みいただきありがとうございます。
ICTの利用でも同じなのですが、多忙化が進む学校現場で全部を新しく作り変えるのはとっても難しい話だと思います。だからハイブリッドをというのも理解できるのですが、まずは活用するために自分のタイミングをつくるところから始まります。ポートフォリオも同様で、作成が目的ではなく、生徒が活用して進路選択に幅をもたせることが学校側の目的になります。そこまでイメージ化できていない中で、他のことに追われていれば実現するのはかなり難易度が高いでしょう。まずは学校・先生側の土台をつくり、あくまでも余裕が出てきた中で取り入れ、検証し、思案していくのが大事かと思います。

Japan Education Labはこのような悩みをもった先生方や学校の支援を惜しみなくしていくつもりですので、いつでもご相談いただければと思います。

これからの取り組みも、ぜひこのnoteでチェックしていただけますと幸いです。

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