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長崎ヴェルカの中山さんとトレーニング器具を開発した話

日本ベネックスはプロバスケットボールB.LEAGUE所属の「長崎ヴェルカ」のオフィシャルパートナーを務めています。

ある日、長崎ヴェルカのディレクター・オブ・スポーツパフォーマンス中山佑介さんから「トレーニング器具をつくれませんか」というお話をいただき、突如としてはじまった長崎ヴェルカオリジナルトレーニング器具開発プロジェクト。

日本ベネックスは66年以上ものづくりをしてきましたが、「トレーニング器具」はこれまで一度も製作したことがありません。そんな未知への挑戦に立ち向かった日本ベネックスの営業マン、鵜林さん。今回はプロジェクト推進者の鵜林さんに開発秘話を聞きました。まずはこんなお話から。



1.トップアスリートですから

プロジェクトを推進した営業部の鵜林さん


――:
長崎ヴェルカオリジナルトレーニング器具がついにできたんですね。

鵜林弘樹(以下、鵜林):
できましたね。いいものができたと自負しています。

長崎ヴェルカの中山さんと一緒に開発したオリジナルトレーニング器具


――:

長崎ヴェルカの中山さんから「トレーニング器具をつくれませんか?」とお話をいただいたとき、率直にどう思いましたか。

鵜林:
そうですね…。まさかトレーニング器具をつくるとは思いもしませんでした。でも、つくったことがないものを「ああでもない、こうでもない」といろいろ考えてつくるのは好きなんです。

――:
バスケやヴェルカのことはもともと好きだったんですか。

鵜林:
息子が2人いて、どちらもバレー部でして…。バスケよりもバレーボールを観ることが多いですね。決して「バスケが好きじゃない」ということではないです(笑)。

――:
ああ(笑)。中山さんのつくりたい器具のイメージ図を見て、どう思いましたか。

鵜林:
器具の構造自体はシンプルだったので「できる」と思いました。

中山さんのイメージ図。最初からとても具体的でした。


――:
ちなみにこのトレーニング器具はどのように使うのですか。

鵜林:
アイススケートのように、板の上を滑ってトレーニングします。


――:

イメージ図を見た後、すぐにいくつかの製作パターンを考えて、つくりはじめていましたよね。スピーディーに対応していたので「きっと鵜林さんはヴェルカファンなんだな」と思っていました(笑)。

鵜林:
…すみません(笑)。製作方法のアイディアが浮かんだときに作っておきたくて。

今回はトップアスリートがトレーニングで使用する器具なので、物の強度を高める必要がありました。強度を最大限に高めるために、まずはいくつかパターンをつくって検証したほうが良いと思いました。

というのも、市販品だと、トップアスリートの強い衝撃に耐えきれず、壊れてしまうみたいです。

――:
トップアスリートですからね…。

壊れやすいストッパーは、複数のパターンで成形し強度を何度も確認


鵜林:

とりあえず体重100kg以上の選手が激しく使っても壊れないようにしようと。

――:
想定は体重100kg以上の選手(笑)。

鵜林:
はい(笑)。やっぱり壊れたり、破損したりして怪我をするのは絶対にNGなので、強度はかなり慎重に検証しました。



2.たった一人の熱狂

――:
強度以外で気を付けた点はありますか。

鵜林:
本体の横につけるストッパーは軽さと強度を両立させるためにアルミを用いてつくりましたが、アルミは溶接で熱を加えると歪みが出やすいんです。だから、なるべく溶接をせずに曲げ加工を工夫して強度を高めました。

それでも溶接をしないといけない部分もあったのですが、職人にがんばってもらい歪みを出さずにきれいに成形できました。

――:
一度目の試作品ができた後、すぐに中山さんに試作品を見てもらいましたよね。

鵜林:
はい。どんな反応をするかドキドキしていましたが、「いいですね」と言っていただけて安心しました。

中山さんは試作品を実際に使用しながら「ここを修正してほしい」とはほとんど言わず、「こういう機能をつけたい」といろいろとアイディアを出してくださいました。

――:
つまり、強度や品質は基本的にOKだったと。

鵜林:
そうですね。その場でいろいろとアイディアが出るのは、さすがだなと思いました。わたしも「すべてに応えたい」とその一心でした。

――:
すごく細かい部分にもこだわっていますが、そのあたりの話も聞かせてください。

鵜林:
えーっと、どの部分ですか。

――:
もっとアピールポイントがあるじゃないですか!例えばストッパーを固定するボルトを簡単につけられるように…

鵜林:
ああ、ガイドですか。ストッパーの内部が空洞になっているので、ボルトを差し込んで固定する際に、何かしらガイドがないと固定しにくいんです。なので、アルミの板で筒状のガイドをつくり、ストッパー内部に仕込んでいます。

ストッパー内部に仕込んだガイドがあることでスムーズに脱着可能に

鵜林:
それと、太めのボルトを採用しているのでボルト自体が折れることはないと思いますが、さっきも言ったとおりトップアスリートの強い衝撃が加わることが前提なので、ガイドがあることでボルトも衝撃から多少は守れます。つまりガイドは一石二鳥です。

――:
そういうエピソードを自ら話してほしいです(笑)。他に工夫した点はありますか。

鵜林:
うーん…なんだろう。トレーニングで使うので、製品に選手の汗がつく可能性がありますよね。なので一度「アルマイト処理」という表面処理を施しています。アルミ自体はさびにくい素材ですが、アルマイト処理をすることで、よりさびにくくなりますし、アルミの色もきれいに見えます。

それから、ストッパーの表面は「ヘアライン加工」といって、板表面を手作業で研磨してまっすぐな模様をつけ、美しく見えるように仕上げています。

表面をよく見ると横に線が入っているのがわかる


――:
細かい工夫がいくつもありますね。それは何ですか。

鵜林:
ああ、これですか。今回はボツになりましたが、こういうハンドルの装着も考えていました。

ボツになったがどや顔をきめる鵜林さん


鵜林:

器具の本体は20kg以上あって、長さも2m以上あるので、持ち運びが大変ですよね。だから、何かしらのハンドル的なものを本体の両端につければ持ち運びもスムーズにできると思い、サンプルを取り寄せました。

――:
なんでボツになったんですか。

鵜林:
てっきり2人で持ち運びすることを想定していましたが、中山さんが「一人で持ちます」と、おっしゃって(笑)。「これを一人で!?」と驚きました。

――:
両端につけると腕が届きませんね(笑)。

鵜林:
うん、想定外でした。

――:
先日、ヴェルカの新アリーナ内にあるトレーニングルームへ納品に行きましたね。これからヴェルカの選手たちがこれでトレーニングをすると考えると、うれしいですね。

鵜林:
うれしいです。細部までクオリティーを追及して製作したので、自信をもって納品できました。ヴェルカのみなさんにも満足していただければこれ以上ない喜びです。

新アリーナのトレーニングルームに納品

――:
新シーズンは鵜林さんもアリーナで試合観戦してくださいね。

鵜林:
はい、ぜひ行きたいと思います!



後日、チームスタッフの方より髙比良選手が使用している写真とお礼の動画をいただきました!ありがとうございます!

日本ベネックスは新シーズンも長崎ヴェルカを全力で応援します!!

(お読みいただきありがとうございました!)


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