電気をつくる・売るだけじゃない!?日本ベネックスの「みらいの工場」
「事業活動で消費するエネルギーを、100%再生可能エネルギーで調達する」
世界的に影響力のある多くの企業では今、この目標が重要な目標とされ、達成に向けた様々な取り組みを行っています。(RE100)
日本ベネックスでは、長崎本社工場の屋上スペースを活用して太陽光発電所を設置し、2013年より再生可能エネルギー(電気)を創出しています!
本社屋上でつくられた電気には、売電用(売る)と自家消費用(つかう)の2種類があります。
売電用は発電した電気を電力系統へ流し、決められた単価で電力会社へ売り、自家消費用は工場の屋上でつくった電気をそのまま工場で使います。
今回は、環境エネルギー事業部・富田さんの案内で、東京事業所の庄司が、自社の発電所を見学しました!
1.発電所設備には何がある?
早速、太陽光発電の仕組みやベネックスの設備を見てみましょう!
富田:
メインの設備としては、太陽光パネル・接続箱・パワーコンディショナー(以下:パワコン/PCS)・トランス(変圧器)・キュービクル・引込柱があります。
富田:
パネル同士をケーブルでつないで、接続箱で一つにまとめてパワコンにつなぎます。
パネルで発電した電力は直流・低圧です。それをパワコンを通して交流に変換する。交流の方が送電や安全性の面で利点が多いからですね。
富田:
交流・低圧に変換したあと、系統に送電する場合はトランス(変圧器)で電圧を高めます。
どうして高圧にするかというと、電力を無駄なく送ることができるから。電線を通じて送電するときには、電力の一部が熱に変換されて逃げてしまうんです。
そして、熱に変換される量は電流の2乗に比例します。これがジュールの法則です。
庄司:
ジュールの法則……。習った気がするけど覚えていません……。
富田:
電力[W]=電圧[V]×電流[I] なので、電圧を上げれば電流が下がります。変圧器で電圧を上げることで電流が下がり、送電するときに熱として逃げにくくなります。
庄司:
なるほど~!おもしろいですね!!
富田:
高圧の電気ってものすごく危ないので、事故が起きたときに、その被害が他のところに及ばないように切り離さないといけない。
キュービクルにはいろいろな機能があって、発電所内の事故を検知したらその回路を遮断する、というのも重要な機能のひとつです。
富田:
構内にある電柱が引込柱で、外にあるのが連系柱。引込柱の上の方についているボックスよりこちら側はベネックスの所有で、その先は電力会社のものです。
ここが外界との唯一の接点なので、最後の砦といえます。構内で事故が起きても絶対に連系柱にいかないように、うちで処理しないといけない。万が一、連系柱のほうに影響が及んでしまったら、大変なことになってしまいます。
庄司:
ええ、怖い…。
富田:
うちで扱っている一般的な太陽光発電の設備はこんな感じです。
2.ベネックスの自家消費システム
富田:
売電用は、パネルから機器を通って引込柱・連系柱へと電気が流れていきます。
自家消費の分は、パワコンで交流に変換したら、トランスやキュービクルなどを通さずにそのまま工場に流しています。パワコンを通したあとの電圧のままで電気を使えるようになっているんです。
それから、工場で使われる電力の約30%は、屋上でつくった電力で賄っています。
庄司:
へえ~!たくさん発電できるんですね。
富田:
工場で使い切れないくらい発電したら、蓄電池にためます。
この蓄電池は上にのっている棒に秘密があって、それまでの蓄電池システムと比べると、同じスペースに2倍の電池を収納できるんです。実は特許も取ってるんですよ。
庄司:
特許ですか!?この棒にそんな力が……。
富田:
蓄電池もいっぱいになってしまったら、発電が止まります。消費しきれない分を電力会社に売れたら良いけれど、うちと電力会社間の取り決めで、自家消費用に発電したものは系統に流さないことになっているんです。
毎日、工場が昼休みに入って機械を使わなくなると発電が止まる。昼って発電量は増えるけど、蓄電池の容量もそこまで大きくないのでいっぱいになってしまって…。その電力を有効利用できないかっていうことを今考えています。
庄司:
蓄電池にためた電気は、どんなことに使われるんですか?
富田:
電気使用量を抑えるために活用しています。
毎月の電気料金は、「電力量料金」と「基本料金」の合計になっています。
「電気量料金」は使った分に応じて算出され、「基本料金」は1年間の最大デマンド(30分区切りの中でいちばん電気を使ったときの量)に基づいて算出されます。
例えば、工場をフル稼働させて30分間で平均600kWhを使ったとします。すると、他の時間に200kWhしか使っていなくても、600kWhが基準となって1年分の基本料金が決まる。1年のうち一瞬だけでも使用量が上がると、基本料金が高くなってしまいます。
そこで、電気を一気に使う時間帯を予測して、それに合わせて蓄電池から放電することで、使用量のピークを下げているんです。
庄司:
そんな使い方があるんですね。驚きです!
富田:
また、ベネックスでは電気自動車を5台持っています。
5台とも通勤時や外出時に使っていて、電力を有効利用しつつ、ガソリン代も節約しています。
3.「みらいの工場」プロジェクト
ベネックスは2018年より、住友商事と共同で「みらいの工場」プロジェクトに取り組んでいます。
庄司:
「みらいの工場」プロジェクトって、結局のところ何を指すんですか?
富田:
説明が難しいのですが…。
太陽光パネル、蓄電池、EV充電などを利用して、電力を効率的に利用したり地域全体の電力需給のバランスを保つ協力をしたりするモデル、という感じですね。
設備そのものというより、システム全体や考え方を指しています。
富田:
前提として、電気は発電する量と消費する量がイコールになっていないと、支障をきたしてしまいます。
そこでVPPという仕組みがあるんですけど、ベネックスはそれに対応して地域の需給バランスを調整するVPP実証にも参加しています。
富田:
簡単にいうと、発電した電気を蓄電池にためておき、地域の発電量が足りなくなったら優先的にその電力を利用する。
逆に地域の発電量が余っている場合には、電力会社からの電力購入量を増やして、蓄電池や電気自動車に充電する、という仕組みです。
4.系統の役割もできるパワコン
庄司:
今ある設備は、他にはどのように活用できるんですか?
富田:
仮に大災害が起きて一帯が停電になってしまった場合にも、太陽光で発電した電気を使って設備を動かせるようになっています。
パワコンには自立型と自立型でないものがあります。
自立型じゃないほうを使うためには他所からの電気がいるので、系統から電気をもらえなくなったら動きません。でも自立型のパワコンは系統から切り離しても使えます。
庄司:
自家消費用システムで使っているパワコンは自立型のものだけなんですか?
富田:
すべてのパワコンのうち、自立型のものはひとつだけです。
大きい自立型パワコンがあって、それが系統の役割をします。自立型パワコンから他のパワコンに電力をあげられるので。
庄司:
そうか~。自立型ひとつさえ動いていれば、全部使えるんですね!
庄司:
ここまで、発電所の仕組みやベネックスの取り組みを伺いました。
富田さん個人で言うと、普段どういったお仕事をされているんですか?
富田:
主に発電所の設計検討です。パネルの配置を考えたり、キュービクルの接続図を描いたり。
あとは、工場での消費電力量と屋上での発電量の予測を掛け合わせて、発電量を制御しようと挑戦しています。ただ、これが難しくて。
庄司:
工場で使う電力も日によって違いますよね。それに合わせて発電するって、大変そうです…。
富田:
発電量も天気予報からの予測なんです。
発電を制御しようにも、予測の中身に不確定な要素が多すぎて…。まだ成功していないんです。ただ、うまくいけば大きな成果になります。
庄司:
すごく難しいことをやってらっしゃるんですね…!
おわりに
私も富田さんと同じ環境エネルギー事業部で働いていますが、まだまだ知らないことだらけでとても勉強になりました。
ただ発電や消費をしているだけでなく、効率的に利用するため・地域のために活用するための仕組みが考えられていたりと、とても興味深いですね!
お読みいただきありがとうございました!
日本ベネックス コーポレートサイト↓↓
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