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残された時間をどんな人生にしたいか(RestoreTheSnyderVerseの是非について)

鯔のつまり、人生の残り時間というのを考えると、闇雲にスナイダーヴァースの再興だけを求めるのも違うのかなという気がしてきてしまうのです。

▼年齢とクリエイティビティ:

ザック・スナイダーは2021年3月で55歳になりました。

一般的に日本での定年退職は65歳が通例だと思いますが、フィルムメイカーを生業としている人達は気力や体力がどのくらいまで持つものなのでしょうか。もちろん70歳を超えてもなお精力的に活動を続けるモンスターもいますが、彼らとて30年前と比べれば仕事のペースが落ちたり、作風が静かになったりしていると思います。

クリストファー・ノーラン(51)
ドゥニ・ヴィルヌーヴ(54)
ザック・スナイダー(55)
クエンティン・タランティーノ(58)
ジェームズ・キャメロン(67)
スティーヴン・スピルバーグ(75)
ジョージ・ミラー(76)
マーティン・スコセッシ(79)
リドリー・スコット(84)
クリント・イーストウッド(91)

2021年12月31日時点で計算

で、スナイダーに話を戻すのですが、このまま #RestoreTheSnyderVerse と叫び続けることが、果たして彼にとって本当に良いことなのでしょうか。

勿論それはファンにとっての悲願でもあります。当初発表された #DCEU の計画が #WarnerBros . に無惨に破壊されて悔しい思いをしたファンが、最初に示されたゴールを奪還するために挑んでいる戦いでもあります。

しかし大作スーパーヒーロー映画はクリエイターにも俳優にも映画会社にも、多大な金銭と時間を費やすことを要求します。この代償を見つめると、話は簡単ではなくなってきます。

▼スナイダーとWB(ワーナー・ブラザース)の歴史:

スナイダーが #DCEU を立ち上げた2014年、彼はまだ48歳でした。まさに壮年期の働き盛り。彼はDCコミックスの世界を元に壮大なユニバースの設計図を描いて、自身でも2年に1本のペースで合計4本の映画を監督する予定でした。

当初の計画(太字はスナイダー監督予定)
Man of Steel - June 10, 2013
Batman V Superman: Dawn of Justice - July 17, 2015

Suicide Squad - August 5, 2016
Wonder Woman - June 23, 2017
Justice League Part I - November 17, 2017
The Flash - March 23, 2018
Aquaman - July 27, 2018
Shazam! - April 5, 2019
Justice League Part II - June 14, 2019
Cyborg - April 3, 2020
Green Lantern Corps - June 19, 2020

ScreenRantより引用

しかしスタジオの意向が絡んできてトラブルが続き、思うようにクリエイティブを発揮できず、活動はずいぶん長期化しました。

2013年:MoSが公開される
2014年:DCEUが正式にアナウンスされる
2015年:BvSの公開が1年延期される
2016年:BvSを劇場版ではスタジオに短くカットされて賛否両論になる
2016年:SSの本編をスタジオが予告編制作会社に編集させて駄作になる
2017年:娘(当時20歳)が自殺してしまう
2017年:JLの現場から降板させられる
2017年:JL(ウェドン版)が公開されて失敗の責任を押し付けられる
2017年:ファンによる #ReleaseTheSnyderCut が活発化する
2018年:スナイダーカットの存在をWBが否定しまくる
  (3年にわたる長く苦しい戦いが続く)
2020年:ZSJLの制作が決定するも追加撮影の一部は拒否される
2021年:ZSJLの公開直後にCEOが公式声明でトリロジー完結を強調する
2021年:ZSJLの好成績をWBがとにかく隠蔽する
2021年:人気テレビ番組で #SuckItWarnerBros と言ってしまう(笑)

たとえば恋人やパートナーと3年以上も深刻な不仲が続いたら、別れることを考えるのが普通ですよね?もっと言えば、スナイダーは2017年にJLで揉めて伴侶(ワーナー)から一方的に別居されて、そのまま伴侶は別人(ウェドン)と同棲を始めてしまったような状態です。そして周囲の友人こそ励ましてくれましたが、伴侶とは正式な離婚も成立せずそのままズルズルと何年も過ごしてきた状態です。

結婚でたとえた場合
2013年:スナイダーがMoSでWBにプロポーズ
2014年:スナイダーとWBが正式に結婚(DCEUの発表)
2015年:スナイダーとWBに喧嘩が多くなる(BvSの編集)
2016年:WBが予告編制作会社と浮気する(SSの編集)
2017年:WBがスナイダーに別居を提案する(スナイダーの降板)
2017年:WBがウェドンと同棲を始める(JLの改編)
2017年:WBへの非難の声が上がる(#ReleaseTheSnyderCut)
2018年:WBがひたすら言い逃れをする(ウェドンとも別れる)
  (3年にわたる別居状態が続く)
2020年:WBが話し合いの場を設けようと提案する(ZSJLの制作)
2021年:WBが2人の関係は「円満に完結した」と声明を出す
  (明言はしてないが「正式に離婚が成立」した可能性が高い)

ずいぶん分かりやすくなりましたねw

正式に離婚した2人が、もう一度結婚して幸せに暮らすことは、理論的・法律的には起こりうることではありますが、現実問題として実際に起こるかと言えば、なかなか難しいでしょうね。

▼クリエイターが生涯で使える時間:

「死ぬことではない。私が恐れているのは、時間だよ」

もともと2020年にはJLパート2まで公開済みの予定だったのに、パート1が正式な形(ZSJL)で公開できるまでに準備から合わせると5年も掛かってしまったので、その後に続く予定だった『サイボーグ』と『GLコープス』と合わせて3作品は制作中止になりました。

中止になったDCEU映画
Justice League II - June 14, 2019
Cyborg - April 3, 2020
Green Lantern Corps - June 19, 2020

ScreenRantより引用

これもスナイダーの視点から見れば、48歳から6年かけて54歳までに完了するスケジュールだったものが、途中で時間を使い果たして、それも本来は味方であるはずのWBとの不毛な戦いに気力も体力も消耗しまくって、締め切りデッドラインだけが容赦なく来てしまった状態です。

このまま関係改善しないWBで、不自由を感じながら、映画を作り続けることが本当に正解なのでしょうか。

というのも横でNetflixからものすごく魅力的なオファーがきている訳です。そこでならシガラミもコンプラも気にせずに、スナイダーは自由に作れます。オリジナル作品なら原作と少し設定を変えたくらいで怒り出す厄介な客もいません。Netflixは再生数(通信パケット数)という実力だけで評価される世界です。そうして制作されたゾンビ映画AOTDは彼のルーツでもありますし、Rebel Moonは彼がMoSの序盤でチラ見せしたスターウォーズへの愛を結集させた作品になるだろうと予想されます。これって理想の職場じゃね?

私はスタート地点として、DCコミックスよりも、スナイダーの映画が好きでこの界隈に入ってきたので、スナイダーが他の現場でならば理想を追求して創作活動できるなら、そちらにエネルギーと時間を費やしてほしいと思ってしまいます。そして、その方が結果的に私達も多くの優れた作品を享受できるのではないでしょうか。

最初にスナイダーが「54歳までの地図」を描いたときにも同じようなことを考えたと思うのです。

DCEUに時間を使うのはここまで。
そこから先は何か他の物を作りたい。
自分の手で新しいフランチャイズを作り出したい。
既存ではない新しい何かをファンに届けたい。
そういう人生設計にしたい。

2014年当時のスナイダー(48歳)の心の声(想像)

そんなスタートがDCEUにはあり、実態としては2017年に一度失脚し、そこに娘の死去という不幸も重なり、創作活動が危ぶまれるほどの大きな挫折をスナイダーは経験しました。

しかし彼はこのドン底から立ち直り、2021年に完成させたのがAOTDであり、そこでは叶わなかった父と娘の将来の無邪気な夢(サンドイッチ屋台のくだり)が語られました。命を絶ってしまった娘を想い、彼女の分までも彼は今後の人生を意味のあるものにしたいと決意したでしょう。

そして更にAOTDからは舞台が宇宙へ拡がり、今後はRMユニヴァースとして展開していくと目されています。(AOTDではゾンビの原因が宇宙飛来であることが示唆されています)

ScreenRantより引用

▼スナイダーヴァース再始動の条件:

勿論これからWBが路線変更して「スナイダーヴァースに本腰を入れて作ることになりました!監督の意向を全面的に支持します!」と言おうものなら、スナイダーには是非とも戻っていただきたいですし、そうなったら私だってすごく嬉しいです。

シンプルにZSJLで提示された悪夢ナイトメアの行く末を見届けたいですよね。2021年3月にリークしたJLパート2のストーリーボードを見るにつけても、それは強く感じます。(ある意味、もう結末は知っているので、ある程度なら妄想で補完できてしまう部分もありますが。笑)

彼の意向通りに作れる若手監督を起用するのもアリでしょう。彼の作品を原体験としているクリエイターも揃ってきた頃合いでしょうし、スタジオが全面協力すれば(無駄な戦いが生じなければ)スナイダーがどれだけ多忙でも可能だと思います。(ターミネーター新作のキャメロンみたいなことにだけはならないように注意してほしいですが。笑)

今回、私はスナイダー個人がハッピーになることを尊重してSnyderverseの継続に懐疑的な意見を述べましたが、より多くの映画ファンやDC映画ファンにとってハッピーな結末になれば良いと願っています。

希望の光は消えていない。

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それでは、またお会いしましょう。👋

了。

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