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【是枝裕和監督トークイベント】あの誰もが心に残るシーンは当初の脚本にはなかった!?是枝監督による映画真実の解説と樹木希林さんとの思い出 その2

雑誌「SWITCH」で樹木希林さんや是枝監督作品を多く記事にしているスイッチ・パブリッシング社。同社主催の『希林さんといっしょに。』& SWITCH刊行記念「映画監督・是枝裕和トークイベント」(2019年11月1日)に参加してきましたので、前回に続き紹介していきたいと思います。

イーサン・ホークのあのストロー遊びは世界共通!?

映画「真実」でハンク(イーサン・ホーク)が、執事のリュックの孫たちとストローの紙袋に水を垂らして遊び驚かせるシーンがあります。このシーンについて、ストローの紙袋の遊びは日常にあるようなものであり、是枝監督のアイディアではないかと参加者から質問が投げかけられました。是枝監督は自身のアイディアであったことを認めたうえで、それを演じたイーサン・ホークについて語られました。是枝監督がイーサン・ホークに「子供たちの注目を一身に集めるシーンにしたいから、ストローの袋を使って」と説明したところ、「わかった、やったことある。もう俺に任せろ」みたいな感じになったそうです。もしかしたら世界共通の遊びかもしれませんね。
それにしても、ああいう日常の中でそう言えばやったことあるかも、という小道具やエピソードをうまく使うのがいかにも是枝作品らしいと私も思いました。薄めたカルピスを凍らせる(「海よりもまだ深く」)、コロッケをカップラーメンに入れる(「万引き家族」)など他の作品にもたくさんありますね。

最後のシーンが明るいものになった理由

映画「真実」では、最後にファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)が空を見上げるシーンがあります。是枝監督によれば、こういうシーンは普通であればもっとタメを作るところだそうです。ところが、カトリーヌドヌーヴ演じるファビエンヌはタメも作らずにすぐに踵を返して歩いていってしまいます。これはカトリーヌ・ドヌーヴの持っている軽やかさが出ているとのこと。カトリーヌ・ドヌーヴは飽きっぽいし(笑いが起きてました)、全然ウェットに行かないタイプ。それが、当初是枝監督自身が思っていたよりも、映画の最後が明るい着地になっている要因だそうです。この映画で何を描こうとしたということ以上に、目の前の役者に引っ張られて製作していったことで、むしろこの映画が描こうとしたものが明快になったとも語られていました。

映画「真実」のテーマとは

是枝監督はテーマは何かと聞かれるのがお好きではない(私も同感です)が、貴重なお話がありましたので共有したいと思います。
是枝監督曰く、映画「真実」の表向きは「真実」という自伝本をめぐる話だが、裏で進展しているのはリュミールの自伝に嘘があって嘘に本人が気づいてリライトしていく話ではないかと。むしろ、そこに(リュミールがリライトしていくもの)に本当のことが書かれている。ファビエンヌが娘リュミールを抱きしめるのも、リュミールが娘を使って母ファビエンヌに「宇宙船に乗ってほしい」と言わせるのも演技なのであり、“本当”ではないのだが、そこに願望(「宇宙船に乗ってほしい」なら、例えば“自分のことを見てほしい”とか)が隠されているのかもしれない。映画を撮影した後にこうしたことに気づいたと仰ってました。

※メモを見つつ記事にしましたが、記憶が随分と怪しくなっています。ご容赦ください。

(続く)

参考 前回記事


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