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豊かで賑やかな社会、だが私の帰属する場所はないこの社会

豊かな社会。物質であふれた社会。空を貫く超高層ビル。人間の複雑な欲望すべてを機械的に処理できるほど発達しきった社会。人間の欲望すべてを体現したような街。人の声が途切れることのないネオン街。それなのに、それなのにもかかわらず私の居場所はない。私が帰属していると実感できる共同体はない。私はこの人間の欲望すべてを体現したこの街で宙に浮いている。すべての人間が包摂されているはずの社会で私は浮いている。私は異常なのだろうか。こんなことを考えさせる社会が異常なのだろうか。この環境に適応できる人間こそ異常なのだろうか。常識的人間とは異常者のことなのだろうか。

酒で歪めた頭でぼんやりとあの町を回想する。耳をつんざくような爆音がひっきりなしにそこらじゅうを飛び交う。情報ネットワークがすべての人を包摂しきったはずの世界で、私は一人きりで生きる。一人きりだと実感する。虚しさを感じるのは酒のせいだろうか。感傷的になっているのは酒のせいだろうか。どうか酒のせいであってほしい。今はそう思う。切実に。

泥酔するほどは飲んでいない。だけど常に精神機能を若干阻害するくらいには酒を入れている。そうでないと、今は耐えられない。

孤独は嫌いだ。だけど人と円滑にかかわるすべを、私は既に忘れてしまった。

人生は残酷だ。どんなに最悪な状況でも、命が費えるまでそれは終わらない。ただ人生が続いていくこと。これこそが最も痛ましき真実だと誰かが言っていたが、今ほどそれを実感していることはない。

明日も酒を飲んで脳をゆがめよう。それで死んでも構わない。

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