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「今日は七夕、母さんと出会った日です」

朝一番に父からのメッセージが届く。

「今日は七夕、お母さんと出会った日です。良い子供達や、孫に恵まれて幸せです有り難う、皆様に感謝有り難う」

父と母が出会った日が、七夕だったなんて初耳だ。

そして、80歳を過ぎた父が、毎年七夕になるとそのことを思い出していたのかな、と思うとなぜか涙がでてきてしまった。

私が知っている二人の馴れ初めといえば、戦後、アメリカ軍を相手に麻布で骨董屋を始め財を成した祖父が、そのあと都内の別の場所で開いた骨董屋の隣に、靴屋を営む父の友人の家があったということ。
そして、夜な夜なその友人の家の2階に集まっては麻雀をしていたということ。
そのどんちゃん騒ぎぶりに、母の父(私の祖父)が大層眉をしかめていたという話だ。

そういえば「おじいちゃんが嫌そうにしててなー」なんて、父が笑いながら口にしていたその話の続きを聞いたことがなかった。

毎晩の様に騒いでいる隣人の友人が、どんな風に顔を合わせるようになり、何がきっかけで会話を交わす様になったのだろうか。


聞いてみたい気もするけれど、きっと、今の父と母との口から出てくる話はその後の出来事でバイアスがかかってしまっているだろうし、記憶の中の出来事は曖昧なくらいが何かと美しいのだろう。


父からすると、特別な意味もなく送ったメッセージだったと思う。

でも、年老いた両親の若き日の思い出が私のところまで伝わってよかった。誰にも知られることなく、消えてなくならなくてよかった。

そして、家族の間に流れる大事なものは深いところで引き継がれていき、なくなることはないのだと思うとひどく幸せな気持ちだ。

来年からは、私も、娘たちも一緒に思い出すから。


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