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中国ウルトラマンティガ生成AI裁判(2月8日)の判決文私訳


0.「はじめに」のその前に…

※本件記事サムネ画像はみんなのフォトギャラリーより抜粋しました。なお、ウルトラマンティガではありません・・・

本日2024年3月19日に開催された「第23期第2回文化審議会著作権分科会(第69回)」では、「AI と著作権に関する考え方について」が一応の完成を見ました!

また同日、「文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第7回)」(2024年2月29日)のホームページに、「『AI と著作権に関する考え方について(素案)』のパブリックコメントの結果について」も公表されました。

※以下のリンクは(その1)です。順次更新されるとのことです。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoseido/r05_07/pdf/94021801_02.pdf

今日(2024年3月19日)はこのパブコメの話題で持ち切りになっており私自身もパブコメを見ていると色とりどりの意見や考え方が見て取れて興味深いな、と思います!

さて、本題に入りましょう!

1.はじめに


2024年2月28日に報じられた、「生成AIと法」というテーマでは避けては通れないこの中国の判決、報道含む二次情報や概要自体はネット上に多く転がっているものの、なぜ10000人民元の損害賠償金を支払わなければならないのかが明らかではありませんでした。

その後、3月上旬に以下のホームページで判決文(中国語:以下本記事では「判決文」とします)が公開されました!

※ちなみにこの判決文を英文で紹介するサイト(https://www.kwm.com/cn/en/insights/latest-thinking/china-s-first-case-on-aigc-output-infringement-ultraman.html)も参照しておくとよいでしょう。

この裁判の論点は、2023年12月1日北京インターネット裁判所判決(※控訴中)で争われた「生成AIの出力物の著作物性」とは異なり、「生成AIの出力物が権利侵害になるかどうか」であります。

※2023年12月1日北京インターネット裁判所判決の判決文本文は以下参照。

さて、判例解説はしっかりと事案の概要を確認して、裁判所が示す規範をチェックしてから…というのが法学研究にとっては重要なところ。。。

そのため、前回に引き続いて判決文を全訳したいと思います!!

【注意事項】
※中華人民共和国著作権法(中国著作権法)の条文の翻訳は、CRICホームページ(https://www.cric.or.jp/db/world/china/china_c1.html)を参考にしました。
※判決文のページに合わせて翻訳しています。なお、本判決自体は著作物には該当しません(中華人民共和国著作権法5条1号参照)。また、適宜体裁を整えていますので、本文とはやや体裁が異なります。

【翻訳方針】
●本判決文において、「作品」の訳出については、原則として「著作物」としていますが(例:「美术作品」→「美術の著作物」)、「奥特曼作品」に限定しては「ウルトラマン作品」としています。

●もし、翻訳に不自然な点・誤りがあれば指摘いただけると幸いです。


2.判決文本文


(1頁)

広州インターネット法院

民事判決

(2024) 粤0192 民初113 号

原告:上海新创华文化发展有限公司,住所:XXX
法定代理人:XXXXXX
選任訴訟代理人:XXXXXX
選任訴訟代理人:XXXXXX

被告:AI会社(仮名),住所:IXXX
法定代理人:XX
選任訴訟代理人:XXX, X, XXXXX。

 原告上海新創華文化発展有限公司と被告AI社のネットワーク権利侵害責任紛争事件は、当裁判所に2024年1月5日に提起された後、法律に基づき、略式手続を適用し、2024年2月4日に開廷して審理を行った。 原告の選任訴訟代理人X、被告の選任訴訟代理人XXXは、オンラインで訴訟に参加した。 本件における審理はすでに終結している。



(2頁)

原告は、当裁判所に対し、以下の事項を請求した。 1.被告に対し、侵害するウルトラマン画像の生成を直ちに停止し、その学習データセットから本件ウルトラマン素材を削除するよう命じること、2.被告に対し、原告の経済的損失および権利侵害の差止に要した合理的な費用30万元を賠償するよう命じること、3.被告に対し、訴訟費用を負担するよう命じること。 事実及び理由:「ウルトラマン」シリーズは全世界的に有名な[家

喻户晓]アニメのイメージであり、ウルトラマンシリーズ作品は、Iqiyi[爱奇艺]、Tencent[腾讯]、bilibili[哗哩哗哩]などの大手動画サイトにおける人気ランキングの上位にあり、影響力と人気は幅広いもので、2013年にウルトラマンシリーズ作品は「最も多くの派生シリーズを持つテレビ番組」としてギネス世界記録に認定された。中国進出以来、ウルトラマンシリーズは2014年中国アニメライセンス業界海外ブランドトップ10[中国动漫授权业十大海外品牌]、2016年中国ライセンスエキスポ[中国授权展]人気IP賞、2017年中国ライセンスエキスポ人気IP賞、2018年中国ライセンス・ゴールドスター賞[授权金星奖]優秀人気IP賞、2020年中国ライセンス・ゴールデンアワード優秀人気TP[ママ]賞、2020年ゴールドフラワー賞漫画部門[金花瓣奖卡通单元]、年間最人気漫画賞(Iqiyi)、2020年「パーソン・オブ・ザ・イヤー[时尚人物]」賞(Tmall)など数十の賞を受賞している。ウルトラマンシリーズの玩具は長年にわたり主要販売ランキングの上位を占めており、2022年のアリIPライブラリーの商品紹介やIPランキングトップ100では、ウルトラマンシリーズが1位を獲得している。「ウルトラマン」は、NISSAN、HONDA、BMW、東芝、ローソン、ユニクロなど各業界のリーディング・カンパニーから支持されるほか、各種の社会福祉活動、業界展示会、ゲームのライセンス付与や書籍の出版などにも積極的に取り組み、社会の各方面に幅広い影響を与えている。 また、株式会社円谷プロダクションは、ウルトラマンシリーズの著作権者であり、ウルトラマンシリーズの映像の著作権登録も行っている。



(3頁)

2019年、株式会社円谷プロダクションは、原告との間で、原告との間で「ライセンス許諾証明」を締結し、ウルトラマンシリーズの映像に関する著作権の独占的使用権を原告に許諾し、原告に権利保持権を付与した。 被告は、AIの対話とAIが生成した絵を掲載するウェブサイト「Tab(仮名)」を運営している。 原告は、Tabにウルトラマンの画像を生成させると(例えば、「ウルトラマンダイナを生成してください[“生成一张戴拿奥特曼]」と入力すると)、Tabが生成したウルトラマンの画像は、原告のウルトラマンの画像と本質的に類似性を構成していた。TabのAIペイント機能は会員専用であり、画像を生成するたびに「トークン[算力]」を消費するため、会員であるにもかかわらず、なお「トークン」全てを会費の他に支払う必要がある。 原告は、被告が無権限のまま、無断で原告が権利を保有する著作物を使用して大規模モデルを学習させ、本質的に類似した画像を生成し、また、会費や「トークン」の購入などの付加価値的サービスの販売を通じて違法な収益を得ており、前記行為により原告に重大な損害が発生しているとし、原告の適法な権益を保護するために訴訟を提起した。

原告は、2024年2月1日、当裁判所に「訴えの変更申立書[变更诉讼请求申请书]」を提出し、審理において、原告は請求事由を著作権侵害紛争に変更し、被告に対して、複製権、翻案権及び情報ネットワーク送信権の侵害を主張して、本件訴訟の主体を著作権侵害紛争に変更することを申請し、「本件ウルトラマン素材を学習データセットから削除すること」に加え、被告はTabが本件ウルトラマン作品と同一又は類似の画像を生成することを防止するための合理的な措置を講じるべきであると明らかにした。追加事実と理由は以下の通りである。被告TabのAIペイント機能は、例えば、利用者が「ウルトラマンを生成してください」と入力すれば、ウルトラマンの画像が生成され、「ウルトラマンと美少女戦士を合体させてください」と入力すれば、長髪の美少女戦士の体をしたウルトラマンの画像が生成されるなど、その命令に応じて対応する画像を生成することができる。 原告は、被告が無断で多数の画像を生成したと考え、原告は、被告による複数のウルトラマン画像の無断生成は、原告の当該ウルトラマン作品に対して保有する複製権を侵害すると主張した。




(4頁)

侵害画像の中には、ウルトラマンの画風や、ウルトラマンと美少女やドラえもんなどの他の画像との融合など、原告の著作物と本質的に類似するものもあり、原告のウルトラマン作品に対して保有する翻案権を侵害していること、被告は本件画像をすべて生成して利用者に提供しており、原告のウルトラマン作品に対して保有する情報ネットワーク送信権を侵害しているとした。

当裁判所は、原告・被告双方に対し、著作権侵害を争う本件の請求原因を変更するように釈明した。

被告は、[以下の理由で]原告の請求にすべて同意しないと回答した。第一に、被告は本件送達資料を受領した時点で、原告が主張する権利侵害行為を停止していた。第二に、被告は主観的・客観的に原告の保有する権利を利用して無断で大規模モデルを学習させ、本質的に類似する画像を生成したわけではなく、本件ウェブサイトのAIペイント機能は第三者たるサービスプロバイダーを通じて実現されたものであり、被告とは無関係である。被告がウルトラマン画像の表示・宣伝によって利益を得たという直接的な証拠はない。また、AIペイントは会員であれば無料で利用できる。 そして、AI絵画は会員限定の無料機能であり、リリース期間中[上线期间]に会員権を購入すれば無料で利用できるものであり、「トークン」はプレゼントである。第三に、原告は、被告が会費納入及び「トークン」の購入に際して料金を請求しなかったと主張する。[しかし、]原告は、被告が主観的・客観的に原告が権利を保有する著作物を公表・表示することによって利益を得たことを主観的・客観的に証明する証拠を有していない。第四に、原告は被告の行為が、原告に30万元の経済的損失とその他の費用をもたらしたことを証明する証拠がない。

原告と被告は当裁判所を通じて証拠を提出し、当裁判所と法廷における審理を通じて、証拠の真実性、合法性、関連性について十分に意見を表明した。本件の関連する事実について当裁判所は以下のように認定する。




(5頁)


一、 問題となる著作権で保護された著作物の権利帰属の状況

(一)本件ウルトラマン作品のライセンス状況

訴外株式会社円谷プロダクションは、ウルトラマンシリーズ作品の著作権者である。

2019年4月1日、2019年5月1日、2019年8月1日、2019年12月2日、2020年5月1日、2020年11月30日、2021年3月16日、株式会社円谷プロダクションと原告は、それぞれ以下の許諾期間を定めた「ライセンス証明書[授权证明]」及び6通の「追加ライセンス証明書[补充授权证明]」を締結した。それぞれ、2019年4月1日から2024年3月31日まで、2019年5月1日から2024年3月31日まで、2019年8月1日から2024年3月31日まで、2019年12月2日から2024年3月31日まで、2020年5月1日から2024年3月31日まで、2020年11月22日から2024年3月31日までである、 14 2021年3月~2024年3月31日、ライセンスの範囲は中華人民共和国内(香港、マカオ、台湾を除く)とする。

株式会社円谷プロダクションは、原告に対し、ライセンス期間及びその範囲内において、著作権で保護された著作物、その名称、キャラクター名、キャラクター画像、ロゴ、撮影用道具[道具]、場面その他の美術的画像及び要素を複製し、情報ネットワークを介して送信し、翻案する権利を独占的に許諾し、かつ、独立して権利を擁護する権利を許諾する旨が「ライセンス証明書」に記載されている。 前述の「ライセンス証明書」および「追加ライセンス証明書」により許諾されるウルトラマンのキャラクター画像には、著作権登録された本件ウルトラマンの画像が含まれる。

ライセンス証明書及び追加ライセンス証明書に記載された署名又は押印は、日本の公証人により公証され、在日中国大使館領事により確認されたものである。


(二) 本件ウルトラマン作品の登録について

原告は、ウルトラマンシリーズ作品の登録著作権者はいずれも株式会社円谷プロダクションであると主張し、その証拠として以下のものを提出する:



(6頁)

                                      判決文6頁




(7頁)

                                  判決文7頁より引用



(8頁)

(三)当該ウルトラマン作品の主な特徴

本件のウルトラマン作品の主な特徴は以下の通りである。 額の中央部が魚のひれのように左右対称のひし形に盛り上がっていること、額の左右の頭蓋骨は額から後頭部にかけて内側に凹んでいること、鼻がないこと、眉毛の中央のひれの底に水晶がはめ込まれており、水晶から口に向かって下方に一筋の中間線が伸びていること、目がウルトラマンシリーズのトレードマークである外側に突き出た巨大な目であること、2つの目が楕円形の卵型で中間縫い目の線の両側に左右対称に水平に並んでいること、胸上部の前面に涙滴型の(先端を下に向けた)台座には、カラータイマー[指示灯]がはめ込まれている。


(四) 本件ウルトラマン作品の受賞及びその他の事情

原告は、本件ウルトラマン作品は極めて著名であると主張し、それを証明するために以下の証拠を提出する。ウルトラマンシリーズは、2014年に中国のアニメ・漫画ライセンス業界における海外ブランドトップ10、2017年に中国ライセンスエキスポの人気IP賞、その他多数の賞を受賞し、「ウルトラマン」は「シリーズで最も話数の多いテレビ番組」としてギネスブックに認定された。さらに、ウルトラマンは、日産、ホンダ、BMW、東芝、ローソン、ユニクロ、ロレアルなどの企業からも支持され、社会福祉活動にも関与している。2022年のアリIPライブラリーの商品紹介とIPトップ100のランキング(2021年のタオバオとTmallプラットフォームにおけるIP[=知的財産]の包括的な運営データ指標に基づいて算出)によると、IP表示名「ウルトラマンヒーローズ[宇宙英雄奥特曼]」が1位となっている。


二、Tabサービスの基本状況

TabのAIペイント機能は会員専用の機能である。 オンライン審尋において被告は、Tabは202X年X月に開始し、有料会員は会員版を回数無制限、文字数無制限で利用できること、さらに会員権を購入すると、利用者には一定量の「トークン」が与えられ、その「トークン」はとりわけAIペイントに使用できること、AIペイントを利用するたびに「トークン」を3つ消費することを述べた。「トークン」を完全に消費すると、利用者はさらに「トークン」を補充する必要があるという。




(9頁)

被告は、本件画像が第三者のサービス提供者から提供されたものであり、本件ウルトラマン画像を学習に使用していないことを証明するため、第三者サービス提供者と締結した「発注合意書[订单协议]」を提出し、その証憑として、第三者サービス提供者のクラウドサービスのバックエンドのインターフェース情報[后台调用接口信息]、常用インターフェース情報、AIペイント—基本版のリクエスト送信画面のスクリーンショット、第三者サービス提供者のクラウドプラットフォームの利用契約書のスクリーンショット等を添付した。


三、本件に関連するTab生成画像の状況

(一)Tabが本件画像を生成する具体的な手順

原告は、2023年12月下旬に被告のTabウェブサイトが本件ウルトラマンの画像と同一または類似の画像を生成できること、その具体的な生成方法が以下のとおりであることを発見した。具体的な生成手法は以下のとおりである。

1.TabのAIペイントモジュールのダイアログボックスに「ウルトラマンを生成してください」と入力すると、Tabはウルトラマンの画像と一致する画像をサンプル画像エリアに表示し、ユーザーが閲覧・ダウンロードできるようになる。

2.ダイアログボックスで、「長髪のウルトラマン」というプロンプトを入力すると、Tabはサンプル画像エリアに、事件に巻き込まれたウルトラマンのイメージの特徴を保持しつつ、頭髪が長い画像を表示し、ユーザーが閲覧、ダウンロードできるようになる。

3.ダイアログボックスで、「イラスト風のウルトラマンを生成してください」と入力すると、Tabはサンプル画像エリアに、本件に関するウルトラマンの画像の特徴を維持したイラスト風のウルトラマンの画像を表示し、ユーザーが閲覧・ダウンロードできるようになる。




(10頁)

(二)Tabが生成する本件関連画像の具体的な内容の対比

原告は、被告が運営するTabウェブサイトでは、原告の本件ウルトラマンのイメージと本質的に類似する画像を生成することが可能であり、上記画像を生成するためのAIペイント機能は、その会員専用の機能であり、当該画像を生成するたびに、それに対応する「トークン」を消費する必要があると主張した。原告は、複製権、翻案権及び情報ネットワーク送信権の侵害を立証するため、被告のTabウェブサイトにおいてプロンプトの言葉を入力して生成した画像のスクリーンショットを提出した。 ウルトラマンティガ・マルチタイプ[迪迦奥特曼复合型]のオリジナル画像とタブサイトが生成したメイン画像のスクリーンショットの比較は以下の通りである。 

                            判決文10頁より引用(一部改変)

 



(11頁)

                                                                                                   判決文11頁より引用(一部改変)

  ウルトラマンティガ・マルチタイプは、「ウルトラマンティガシリーズのウルトラマン作品集」の前述の第2項に属するもので、主な特徴は以下の通りである。

銀の身体に赤、青、黄色のラインが入っている。水晶体から口元にかけて中心線があり、その左右に楕円形と卵形の2つの目が左右対称に横たわっている。首と胸は同じ赤色で、中央の細い逆V字型が胸の上部から下部まで伸びており、3本の銀色と2本の黄色のストライプが交互に入り、上下に2本の青いストライプが組み合わされ、肩から胸にかけてU字型の胸部プロテクターとなっている。上腹部は羽を広げたV字型の銀色の線で覆われている。



(12頁)

 全体的にH字型の赤い線は肋骨から下腹部、そして大腿部から膝関節まで伸びている。青い線は脇の下から肋骨、腰、大腿部、膝へと伸びている。膝関節の前面には、ひし形の銀色の線が上から下へと伸びており、ふくらはぎの内側には赤い線、外側には青い線がある。

「図1」から「図3」に示した画像には次のような特徴がある。一筋の中央線が水晶から口まで続いており、2つの目は中央の線を挟んで左右対称に楕円形の卵型をしている。胸の上部と中間部には、前に突起した台座があり、カラータイマーがある。両肩から胸全体を覆うU字型の胸当て[护胸甲]には、交互に数本の縞がある。全身は銀色で覆われ、赤や他の色の線が入っている。これと比較すると、生成画像は、ある美術表象としてのウルトラマンの創作的表現を維持している。 被告は、Tabウェブサイトを通じて生成AIサービスを提供しており、そのサービスの過程で生成された生成画像は、ウルトラマン画像と多くの点で重要な特徴において高い類似性を有しており、本質的に類似している。

「図4」から「図6」には、以下の特徴がある。U字型の胸当てで、肩から胸部全体にかけて交互に縞模様が入っている。胸の上部と中間部の手前には突起した台座があり、カラータイマーがある。肋骨から下腹部にかけて全体的にH字型のラインがある。これと比較すると、本件で生成された画像は全体的にイラスト調であり、本件のウルトラマンのイメージとは一定程度相違する。

「図7」から「図10」も、本件ウルトラマンのイメージとは一定程度異なっており、本件ウルトラマンの画像の典型的な要素を繋ぎ合わせた第三者の漫画のイメージの使用が主な特徴となっている。

まとめると、「図4」から「図10」までの画像は、前述の「ウルトラマンティガ・マルチタイプ」のイメージの創作的表現を部分的に維持し、その上で新たな特徴を形成している。




(13頁)

(三)告訴に対する被告の措置

被告は、本件召喚状と訴訟資料が送達された時点で、Tabウェブサイトがウルトラマンに関連する画像を生成しないようにキーワードブロック措置を講じたと主張した。審理中、TabウェブサイトのAIペイントモジュールのダイアログボックスに「ウルトラマン」という単語を入力した後、Tabウェブサイトは「あなたが送信したメッセージには不適格[不合规]なコンテンツが含まれています」というポップアップメッセージを表示し、画像生成エリアでは何もアクションを起こさなかったという。また、ダイアログボックスに「ティガ」という単語を入力した場合、TabウェブサイトのAI絵画モジュールによって生成された画像の特徴は原告ウルトラマン画像と高度に類似していた。

被告Tabウェブサイトには、本件審理時点まで、利用規約あるいはプラットフォーム規約が不見当であり、サービスの利用が他人の著作権その他の適法な権益を侵害してはならないことを利用者に告知していなかった。また、被告Tabは、本件ウェブサイトが生成する画像がAIによって生成されたものであることを利用者に告知しておらず、被告TabのさらにAIペイント機能が第三者によるサービス提供によってもたらされていることを利用者に明示していなかった。

 四、当裁判所が認定したその他の事実

原告が本件ウルトラマン作品の著作権を保護するために要した費用は以下の通りである。杭州インターネット公証役場の証拠収集サービス費用に300人民元、3度にわたるTabサービスから証拠を収集するために136.35人民元、類似のAIイラストサービスを利用した証拠に833人民元、合計1269.35人民元である。 原告は、取引記録[消费记录]と聯合信任タイムスタンプサービスセンターのタイムスタンプ証憑を提出し、費用が実際に発生したことを証明した。

前述の事実は、「ライセンス証明書」および「追加ライセンス証明書」、生成された画像のスクリーンショット、ウェブサイトのスクリーンショット、注文記録、反対尋問の記録、裁判記録およびその他の証拠資料によって裏付けられている。



(14頁)

当裁判所は、本件は当初ネット侵害情報責任[网络侵权责任]に関する紛争として提起されたが、後に著作権侵害に関する紛争に変更されたと判示した。本件の事実関係及び両当事者の弁明によると、本件の争点は、第一に、被告が原告の複製権、翻案権及びネットワーク送信権を侵害したか否か、第二に、権利侵害を構成する場合、被告はいかなる民事責任を負わなければならないかである。

ウルトラマンの作品が中華人民共和国著作権法によって保護されるかどうかについて、本件ウルトラマン作品は、創作的な美術の著作物として著作権による保護を受け、当該著作物の権利者は株式会社円谷プロダクションである。中華人民共和国著作権法第2条第2項によると、外国人または無国籍者の著作物は、その著作者が居住する国または恒常的に居住する国と中国とが締結した協定または共に加盟している国際条約に基づき、著作権を享有し、この法律による保護を受ける、とある。 したがって、本件ウルトラマン作品は中華人民共和国著作権法によって保護されている。

原告が独立してその権利を擁護する権利を有するかどうかについて、中華人民共和国著作権法第12条第1項は、「著作物に氏名を表示した自然人、法人または非法人機関は、かつ、当該著作物に相応の権利が存する場合には、著作者とみなされる。但し、反対の証拠がある場合には、この限りではない」と規定している。 最高人民法院の「著作権に関する民事紛争事件の裁判における法律の適用における一定の問題に関する解釈」第7条第1項は、「著作権に関わる著作物の草稿および原本、適法出版物、著作権登録証明書、認証機関が発行した証明書、当事者が提供した権利取得の契約書などを証拠として使用することができる」と規定している。これを反証する有効な証拠がない限り、ウルトラマンシリーズ作品の登録証明書及び原告が提出した著作物の図表に基づき、本件ウルトラマン作品の著作権者は、訴外株式会社円谷プロダクションと認められるべきである。




(15頁) 

株式会社円谷プロダクションと原告との間で締結された「ライセンス証明書」及び「追加ライセンス証明書」によれば、原告は、ライセンス期間内及びその範囲内において、ウルトラマンシリーズの美術の著作物の著作権を独占的に享有する権利を有しており、その権利には、許諾された作品及びその美術的なイメージ及び作品名、キャラクター名、キャラクターのイメージ、ロゴ、舞台用道具、場面等の要素を複製する権利、情報ネットワーク送信権、翻案権等を有し、独立して権利を維持する権利が含まれる。

 

一、被告が原告の複製権、翻案権、情報ネットワーク送信権を侵害したか。

当裁判所は、被告がサービスを提供する過程で本件生成画像を生成したことが上記3つの権利を侵害したか否かという問題について、以下のように具体的に分析した。

(一)被告が原告の複製権を侵害したか否かについて

 中華人民共和国著作権法第10条第1款第5項には、「著作権は、次の各号に掲げる人格権および財産権を含む。…(五)複製権、即ち、印刷、複写、拓本印刷、録音、録画、ダビング、撮影、デジタル化などの方法を用いて、著作物を一部または複数製作する権利…」とある。本件ウルトラマン作品は高い人気を得ており、Iqiyiなどの大手動画サイトからアクセス、閲覧、ダウンロードすることが可能であり、これを反証する証拠がない限り、被告は本件ウルトラマン作品にアクセスする可能性を有している。 原告が提供し、Tabウェブサイトが生成した画像は、「ウルトラマン」の美術的表象の創作的表現を部分的または完全に複製したものである。 したがって、被告は許諾を得ることなく、「ウルトラマン」作品を複製することにより、原告の「ウルトラマン」作品の複製権を侵害した。




(16頁) 

(二)被告が原告の翻案権を侵害したか否かについて

中華人民共和国著作権法第10条第1款第14項には、「著作権は、次の各号に掲げる人格権および財産権を含む。…(十四)翻案権、即ち、著作物を脚色し、独創性のある新しい著作物を創作する権利…」とある。本件生成画像は、本件著作物「ウルトラマンティガ・マルチタイプ」の創作的表現を部分的に維持し、その維持に基づき新たな特徴を形成したものである。 以上のような被告の行為は、本件ウルトラマン作品の翻案を構成する。 したがって、被告は許諾を得ることなく、本件ウルトラマン作品を翻案したものであり、原告の本件ウルトラマン作品の翻案権を侵害する。

 

(三)被告が原告の情報ネットワーク送信権を侵害したか否かについて

中華人民共和国著作権法第10条第1款第12項には、「著作権は、次の各号に掲げる人格権および財産権を含む。…(十二)「情報ネットワーク送信権」、即ち、公衆が個別に選択した時間および場所においてこれにアクセスできるように、有線または無線の方式により公衆に著作物を提供する権利」とある。被告が複製権・翻案権を侵害したか、情報ネットワーク送信権を侵害したかの判断について、本件は特定の著作権の権利侵害の有無を判断するにとどまり、権利侵害の成否、すなわち権利者及び社会公共の利益に本質的な影響を及ぼすものではない。 原告の情報ネットワーク送信権侵害の主張について、当裁判所は、本件が生成AIの発展に伴う新たな権利侵害の事例であること、また、当裁判所が既に複製権及び翻案権侵害の主張を支持していることを考慮し、同侵害が既に複製権及び翻案権の管轄範囲に含まれている場合には、重ねて評価はしない。

 

二、被告はいかなる民事責任を負うべきか

中華人民共和国著作権法52条及び53条の規定によると、被告の行為は原告の本件ウルトラマン作品の複製権および翻案権を侵害したものであり、法に基づき侵害行為の停止および損害賠償の民事責任を負う。当裁判所は本件を次のように分析した。




(17頁)  

(一)侵害行為の停止に関する問題

本件原告は、被告に対し、権利侵害画像の生成の停止と、学習データセットから問題となるウルトラマンの素材を削除するよう要求した。2023年7月13日、国家インターネット情報弁公室は、国家発展改革委員会、教育部、科学技術部、工業情報化部、公安部、国家ラジオ映画テレビ総局と共同で、「生成AIサービス管理暫定弁法」を発表し、2023年8月15日に発効した。中国が生成AIの研究開発とサービスに関して具体的な規定を設けるのはこれが初めてである。同弁法の第22条2項には、「生成AIサービス・プロバイダーとは、生成AI技術を用いて生成AIサービスを提供(プログラマブル・インターフェースの提供等による生成AIサービスの提供を含む)する組織又は個人をいう」とある。被告の主張によれば、プログラマブル・インターフェースを用いて第三者のサービス・プロバイダーのシステムにアクセスし、利用者に生成AIサービスを提供しているのであるから、被告は生成AIサービス・プロバイダー(以下、サービス・プロバイダーという)に該当する。[また、] 弁法14条1項によれば、「プロバイダーは、違法コンテンツを発見した場合、速やかに生成停止、送信停止、削除等の処分的措置を講じるとともに、モデル最適化訓練等の是正措置を講じ、関係主管庁に報告しなければならない」とある。本件では、被告はサービス・プロバイダーとして原告の本件ウルトラマン作品の著作権を侵害したのであり、権利侵害の停止、すなわち生成を停止する責任を負うべきである。被告主張に関し、AIペイントサービスは第三者のサービス・プロバイダーが提供したものであり、その責任を負うものではないと抗弁したが、当裁判所はこれを採用することはできない



(18頁)  

生成AIの技術原理によれば、一定の技術的な予防措置を講じることなく、被告が運営するTabは、本件ウルトラマン作品と本質的に類似する画像を生成し続けることが可能であるから、原告の被告に対する画像生成の停止請求を当裁判所は支持する。被告は、ウルトラマン作品と本質的に類似する画像の生成を停止する技術的措置を講じるべきである。 

本件では、被告はキーワードフィルタリング対策を講じ、関連画像の生成を停止し、一定の成果を上げている。しかし、当審理中、当事者双方が立ち会う中、Tabにウルトラマンに関連する他のキーワードを入力すると、やはり本質的に類似する画像が生成されることがあった。したがって、被告は、被告サービスが本件ウルトラマン作品と本質的に類似する画像生成の継続を防止するために、キーワードフィルタリング等のさらなる措置を講じるべきであり、以下の程度において防止は達成されるべきである。すなわち、利用者が、通常、ウルトラマンに関連するプロンプトワードを使用し、関連するウルトラマン作品と本質的に類似する画像を生成することはできない程度である。

原告の学習データセットからウルトラマンの素材を削除する要求については、被告は実際にモデル学習を行っていないため、当裁判所はこの要求を支持することはできない。

(二)損失賠償の適否に関する問題

原告は、経済的損失と権利侵害を防止するために被告が負担した合理的費用の損害賠償を請求した。損害賠償責任を負担するには、被告の過失を考慮することが重要である。類似事例の裁判の判決は、生成AIには一定の道具的特性があるとした。 生成AIは合法的な目的にも違法な目的にも使用できる。「生成AIサービス管理暫定弁法」の第4条は、生成AIサービス提供者は法律と行政法規を遵守し、社会道徳と倫理を尊重し、知的財産権を尊重すべきであると強調している。従って、サービス提供者は生成AIサービスを提供する合理的な注意義務を履行すべきである。しかし、本件で被告はサービス提供者として合理的な注意義務を履行することを怠った。 当裁判所は本件を以下のように分析している。




(19頁)  

第一に、苦情投稿・通報システムがないことである。生成AIサービス管理暫定弁法15条は、「プロバイダーは、苦情投稿・通報システムを確立・改善し、簡便な苦情投稿・通報ポータルを設置し、処理プロセスとフィードバックの期限を発表し、時宜に即して公衆の苦情・通報を処理するとともに、その処理結果をフィードバックしなければならない」とある。本件における認定事実、特に当裁判所が審理において認定した事情を考慮すると、当審開始時点において、被告が運営するTabウェブサイトは、関連する苦情投稿・通報システムを確立しておらず、権利者が苦情投稿・通報システムを通じて著作権を保護することが困難であった。

第二に、潜在的リスクの警告がないことである。生成AIサービス管理暫定弁法4条は、「生成AIサービスの提供および利用は、法律および行政法規を遵守し、社会道徳および倫理を尊重し、以下の規定を遵守しなければならない。…(三)知的財産権と商業倫理を尊重し、営業秘密を保護し、アルゴリズム、データ、プラットフォーム等の優位性を利用して独占行為や不正競争行為をしてはならないこと。…(五)サービスの種類の特性に基づき、生成AIサービスの透明性を高め、生成コンテンツの正確性と信頼性を向上させるための効果的な措置を講じること」とある。本件では、被告はサービス・プロバイダーとして、サービス契約などの方式によって他者の著作権を侵害してはならないよう利用者に注意を促すことを怠った。 通常のネットワークサービスとの大きな違いは、一般的に言うと、利用者が生成AIサービスを利用する場合、他者、特に著作権者の権利侵害の潜在的リスクを明確に認知していないため、生成AIサービス提供者は、利用者に対して警告する義務を有するのであり、そのなかには、利用者は他者の著作権を侵害するようなサービスの利用はできないことも含まれる。




(20頁)  

第三に、顕著な表示[显著标识]がないことである。生成AIサービス管理暫定弁法12条によると、プロバイダーは、『インターネット情報サービスディープフェイク管理規定』に照らして、画像や動画等の生成コンテンツに表示を付さなければならない」とある。さらに、インターネット情報サービスディープフェイク管理規定17条は、「ディープフェイクサービス提供者は、以下のディープフェイクサービスを提供する場合、公衆が混同または誤認する可能性がある場合は、生成または編集された情報コンテンツの合理的な位置・領域に、ディープフェイクの状況を公衆に示すよう顕著に表示しなければならない。…(五)その他、情報コンテンツを生成または顕著に改変する機能を持つサービス」とある。生成AIサービスの提供者は、生成物が公衆の混同あるいは誤認を惹起する可能性がある場合、提供する生成物に顕著な表示を付す義務がある。マークを付した後、関係する権利者は、生成物がAIによって生成されたものであることを明確に認識することができ、その後、より的確で効果的な権利保護措置を講じることで、権利をより一層保護することができる。従って、表示義務は公衆の知る権利の尊重だけでなく、一種の権利者に対する保護義務でもある。 本件では、被告は生成画像に顕著な表示を付さなかったため、表示義務を履行することができていない。

まとめると、被告は上記の注意義務を履行せず、主観的過失があったため、権利侵害行為に対応する責任を負うべきである。




(21頁)   

(三)損害賠償額に関する問題について

中華人民共和国著作権法第54条第1款、第2款、第3款はそれぞれ、「著作権または著作権に関連する権利を侵害した場合には、権利を侵害した者は、権利者がこれにより受けた実際の損害あるいは権利を侵害した者の不法所得に応じて賠償しなければならない。権利者の実際の損害あるいは権利を侵害した者の不法所得を算定することが困難である場合には、当該権利の許諾使用料を参考に賠償することができる。著作権または著作権に関連する権利を故意に侵害し、事案が重大である場合には、前述の方法により確定された金額の1倍以上5倍以下の金額で賠償することができる」。「権利者の実際の損害、権利を侵害した者の不法所得、および権利の許諾使用料を算定することが困難である場合には、侵害行為の事案状況に基づき500元以上500万元以下の賠償を判決するものとする」。「賠償金額は、権利者が権利侵害に係る行為を停止させるために支払った合理的な費用を含まなければならない」と個別に規定する。本件では、現存する証拠によれば、権利侵害により原告が被った実際の損失や被告の不法所得を確定することはできない。本件において当裁判所は、以下の要素を考慮して賠償額を決定する。第一に、本件ウルトラマン作品は市場において高い知名度を有していること。第二に、被告は、本件訴訟に応じた後、当該画像の継続的な生成を防止するための技術的措置を積極的に講じ、一定の成果を上げていること。第三に、被告が本件画像を生成したのは利用者のみであり、その影響は限定的であること。第四に、原告は、権利保護のための証拠収集にかかる費用の支出ために確実に生じた部分と、費用の合理性・必要性とを併せ、当裁判所はこれを斟酌し一部において支持すること。結論として、当裁判所は、被告は原告に対し、1万人民元の(合理的な費用を含む)経済的損失を賠償すべきであると判断した。

 

本件を検討するにあたり、当裁判所は、AIが将来を主導する戦略的技術であり、科学技術革命と産業変革の新地平の核心的原動力であり、新たに品質の生産性を発展させる主要な位置づけにあると考えられることを強調する必要がある。我が国[中国]におけるAI技術の急速な発展、豊富なデータと演算資源の増加、応用事例の絶え間ない拡大は、AI活用シナリオのイノベーション[人工智能场景创新]を打ち立てる強固な基礎を築いた。生成AI産業がその展開の初期段階にあることを考慮すると、権利保護と産業発展の双方に配慮する必要があり、サービス提供者の義務を過度に負担させることは適切ではない。



(22頁)  

(※改行なし)急速な技術発展の過程において、サービス提供者は、合理的かつ負担することができる注意義務を積極的に履行すべきであり、それによって、安全と発展に寄与し、均衡のとれた包括的な、イノベーションと保護の相互に適合する中国型AIガバナンス・システムの推進に貢献するのである。

 上記に鑑みて、中華人民共和国著作権法第2条第2款、第10条、第12条、第52条、第53条、第54条、最高人民法院の「著作権に関する民事紛争事件の裁判における法律の適用における一定の問題に関する解釈」第7条第1款、第26条、中華人民共和国民事訴訟法第67条第1款、「中華人民共和国民事訴訟法の適用に関する最高人民法院の解釈」第90条の規定に基づき以下のように判決する。[以下、訳者太字]

一、被告AI社は、原告上海新創華文化発展有限公司の本件ウルトラマン作品の著作権を侵害する行為を直ちに停止し、利用者が原告上海新創華文化発展有限公司の本件ウルトラマン作品の著作権を侵害する画像を生成することを防止するために、相応の技術的措置を直ちに講じなければならない。

二、被告AI社は、本判決の効力発生日から10日以内に、原告上海新創華文化発展有限公司に対し、(合理的な費用を含む)1万人民元を賠償しなければならない。

三、上海新創華文化発展有限公司のその他の請求を棄却する。


本判決で指定された期間内に金銭の支払義務を履行しない場合、中華人民共和国民事訴訟法第264条の規定に基づき、履行遅延期間の利息を2倍とする。



(23頁)  

訴訟費用は2900人民元とし、これを原告上海新創華文化発展有限公司の負担とし、被告AI社の負担は1500人民元とし、併せて本判決の法律上の効力が発生した10日以内に原告上海新創華文化発展有限公司に支払うものとする。

 

本判決に不服がある場合、本判決が送達された日から15日以内に、当裁判所に上訴状を提出し、相手方当事者の人数に応じて副本を作成することにより、広州市知的財産権法院に上訴することができる。

 

中華人民共和国民事訴訟法第41条第2項により、第二審事件が要件を満たす場合、当事者双方の同意があれば、一人の裁判官により単独審をすることができる。上訴を提起する一方当事者が単独審の適用に同意しない場合は、上訴趣意書にその旨を明示することとし、これをしない場合は、同意したものとみなす。被控訴人が単独審の適用に不服がある場合は、控訴時の答弁期間内に当裁判所に書面を提出しなければならず、これをしなかった場合は同意があったものとみなされる。

 

 

裁判官  田绘



(24頁)  

2024年 2月8日

本書は原本と照合済である。

 

 

裁判官補 许燕玲

裁判官補  陈苹

書記官 陈耀宗





3.おわりに


いかがでしたでしょうか?

この事件は中国著作権法での複製・翻案権侵害を検討していますが、やっていることは日本法での類似性(や依拠性)を具体的な画像と生成画像を細かく比較して行われているので著作権侵害の認定は比較的理解しやすいと思います。(10頁以下)

ただ、権利侵害主体の認定においては、日本法の規範的侵害論のような構図ではなく、2023年8月15日に施行された生成AIサービス管理暫定弁法を用いて、生成AI事業者を過失による権利侵害として認定しているところが注目すべきところでしょう。(15頁~18頁)

また、インターネット情報サービスディープフェイク管理規定の規定の「受け皿規定」を利用して、ディープフェイクに限定せず、一般的な情報コンテンツ改変に関しても「AI製表示」を義務付ける規定であり、これを怠ったことについての義務違反も認めているのは注意すべきポイントです。(20頁)

そういう意味では、本判決は著作権法のみならず、生成AIサービス管理暫定弁法インターネット情報サービスディープフェイク管理規定といった行政法規も適用した複合的かつ複雑な新しい裁判例ともいえるでしょう。

いずれにしても、日本法でこの判例を紹介するときには、行政法規の考慮をも必要とするでしょうか。

さて、次はEU AI Act(2024/03/13 欧州議会合意版)の攻略ですかね…


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