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現代を「鬼滅の刃」で読む(漆):当事者性の罠

数字のマジックというのは怖いものです。だからこそ、統計分析するときにはデータのばらつきなど、いろいろ注意します。

自己中心的で、かつ自己愛が強いものの中には、自分の処遇に対して納得いかない場合に、「常に」その原因を自分以外に求める者がいます。

自分がうまくいかない理由を、一般的な数字や属性で説明しようします。

自分がうまくいかない理由が自分にあることは認めないので、例えば、自分の「属性」を使い、自分が「弱者」のカテゴリーにいる証拠とします。個別の理由は該当しないけれど、「属性」では自分は弱者の側だと。

自分を弱者の側にいる当事者として語るのです。弱者の側の当事者は攻撃を受けにくくなります。守りを捨てる分、攻撃に集中できるのです。

鬼滅の刃では、「半天狗」は人間を食べる鬼です。鬼が人間を食べることは彼らのロジックでは正当なことです。だから確かに嘘はついていないのかもしれません。

しかし、人間を食べる攻撃をしているのは半天狗の側です。にもかかわらず、自分は被害者だと言い募ります。自分は小さい体のか弱い老人だと。

半天狗:「儂は生まれてから一度も嘘など吐いたことはない。善良な弱者だ。此程か可哀想なのに誰も同情しない」

鬼殺隊員は人間を、仲間を守るために鬼を攻撃します。半天狗は「上弦の鬼」です。鬼の中でも役員です。強いのです。半天狗は言います。

半天狗:「先程貴様らは手のひらに乗るような『小さく弱き者』を斬ろうとした。何という極悪非道。これはもう鬼畜の所業だ」

鬼殺隊員は、引き続き半天狗を攻撃します。

半天狗:「お前はああ、儂がああああ 可哀想だとは 思わんのかァァァア!!! 弱い者いじめをォ するなああああ!!!」

鬼殺隊の柱である不死川の返答がシンプルかつ簡潔に半天狗の自己愛性を喝破しています。

不死川:「テメェの理屈は全部クソなんだよ ボケ野郎がァアア」

(コミックスより)




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