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妻はゼミ生5:オンラインの授業でリアリティは伝わるの?国際ボランティア論の巻

はじめに

妻はゼミ生を18年くらいやっています。もちろん、本当のゼミ生ではないですよ。私のくどい話を聞き続けて18年ということです。そして、「イリイチは学校がダメなんて言っていないよ。社会が学校化するのがやべえんじゃねと言っているんだよ・・・・」という話しが本当にしつこいと思った時は、「Skippyはね、クランチが美味しいのよ」と返してくるのです。

これが出たらね、ゼミは終了です。そして、「ジャムが縦じまに入ったピーナツバターも美味しいよ」という返事をしないと、その後、一週間口をきいてもらえなくなるという地獄を味わうことになります。

今日のテーマは、オンラインの授業でリアリティは伝わるの?でした。

たぶん、回答できていません(笑)。

オンライン授業でテキストにリアリティを盛り込めるかどうかは、まだわかりません。少しでもリアリティを感じられるような作業を取り入れてやっております。

国際ボランティアと倫理と

国際ボランティアの授業では、「相手の視点を想像する能力(視点取得)」「自分の感情をコントロールする能力」の2点について、全15回を通じて意識するようにしています。自分の視点しか持たない人が(相手の視点の存在を想像できずに)「正義」を振りかざしたらやばいですね。

相手には相手の理や義があり、お互いの落しどころをうかがうためには、キレずに話を聞き自分の言い分も伝える態度が必要でしょう。

国際ボランティアだからと言って特別なことをする前に、まずは日常生活のなかでいろいろ確認しながら、テキストの言っていることにリアリティを付加してもらいたいと思っています。部活、バイト、友人、勉強、どんな場面でも自分の学びにしてしまいましょう。

「倫理」という言葉があります。「倫」の字は「友達」とか「仲間」とかいう意味がありますね。「理」は「理由」だったり「理屈」だったり、まあ、決まり事としましょう。つまり、倫理は「コミュニティのメンバー(仲間)が(色々あるけれど)上手くやっていく決め事」と考えてよいのではないでしょうか。

プレゼンテーション1

とすれば、コミュニティのメンバーが変われば、そこの倫理はもう一度設定していいわけですよ。不変ではありません。「男性ばかりだった職場コミュニティ」で女性が働いているならば、今のメンバーで上手くやっていく方法を作っていいわけです。皆さんの職場はどうですか?男性ばかりだった頃の決まりに「昔からこうだった」といる理由だけで盲従していることはないですか?

日本の地方への移住促進もそうです。郷に入っては郷に従えという言葉ももちろん一定の意味を持ちますが、他の土地で生活してきた人に「ここに来てください」と声をかけているわけですから、「他所から来た人」がコミュニティのフルメンバーになった時に、これまでの倫理をどうしていくかということは考える必要があるでしょう。

日本の地域コミュニティや職場コミュニティに外国人の方も増えています。つまり、コミュニティのメンバー構成が変わっているわけです。

国際ボランティアは、日本のコミュニティに加わった外国人との関係もありますし、青年海外協力隊のように外国のコミュニティに日本人が(1年~2年間)入っていった際の人々との関係もあります。

この両方に国際ボランティア論ではアプローチしています。

息抜きの実習

話しがだいぶんそれました。えーと、リアリティですね。リアリティ、ぶつぶつ。だいたい第10回目の授業で気持ちにリアリティを与えるため(息抜き?)の作業を行っています。


大した作業ではなく、(募集が終わった頃を見計らって)JICAボランティアの春募集のページから実際の要請書を検索しながら、自分が活動してみたい活動を選びます。スキルについては、今は十分でなくても、関心や今の学習との連続性があれば良いことにしています。

JICAのボランティアが国同士の2国間協定に拠っていて、現地の機関から提出された要請(審査されます)に応えたい日本人が自主的に手を挙げる。この「自主的に手を挙げる」というところがボランティアで、日本の援助機関はこの自主性を支援する(公的資金が投入されるので派遣される人材も一定の評価がされます)というコンセプトであろうと思われます。

学生は、相手国の機関から出された「要請書」をよく読んで、自分がその職種と地域を選んだ理由を書きます。技術、地縁、将来設計、国柄、生活、配属先から現地JICA事務所への移動手段や所要時間などよくよく考えて選びます。色々な国と地域からいろいろな職種について要請が来ます。


今回の授業では90名ほど提出していますが、予想以上に国・職種がばらけました。面白いですね。自分のバックグラウンドを挙げて、それを活かすことを考え、それに地縁ストーリー生活スタイル将来設計を掛け合わせると、選択に多様性が出ます。同じにならない。ブルーオーシャンをめざせ!です。

学生に聞いたところ、この作業は自分の就職やキャリア形成を考えるのに役立ったそうです。

3名以上が同時に希望した要請は、ボリビアの野球、助産師、チリの観光、モンゴルの看護師と保健師、ベトナムの観光、東ティモールの看護師、ブータンの看護師。この授業は看護学科の学生が多く受講しているので看護師の要請が多くなるだろうことは織り込み済みでしたが、そのほかは綺麗に散らばりました。


過去に対面授業で同様の作業をした時には、結構国や職種が被ることが多かったんですけど、オンライン授業では、学生がインターネットを活用して、国の背景・歴史を調べたり、グーグルマップなどを使って詳しいローケーションを確認したりと、個々人の関心からいろいろ調べたようです。


要請がかぶっていたら被っていたで、要請書と集めた情報を活かしたPCM(プロジェクトサイクルマネジメント)のグループワークをオンライン(Miroなど使って)やろうと思いましたが、これはまたの機会にします。

私も、要請書を見てるの結構楽しいな、と思ったんだけれど、学生も楽しかったであろうことが提出物からうかがえました。派遣されるときに「こういうのを準備したほうが良いのでは」「本当に必要なものか」「村の具体的なデータを確認するにはどうしたらいいか」「ホームステイを有意義にする努力」など、少し気の早い意欲的なレポートも見られました。


ひょっとしたら、JICAのホームページに一時的にアクセスが集中したかもしれませんが(まあ、たいして集中していないと思う)、何事でもありません。ご安心を。

以下は、2021年度春募集の時の「学生」が選んだ要請です。カッコ内の数字は希望した人数。

●ジャマイカ
 コミュニティー開発(1)
●ホンジュラス
 人的資源開発(1)
 音楽教育(1)
●グアテマラ
 野菜栽培(2)
 小学校教師(2)
 ソフトボール(1)
●コスタリカ
 防災(3)
●セントルシア
 水質検査(1)
●ボリビア
 小学校教師(1)
 野球指導(3)
 コンピューター教育(1)
 再生可能エネルギー(2)
 青少年活動(1)
 文化(日系社会)(1)
 看護師(1)
 助産師(4)
●チリ
 観光(3)
●ブラジル
 卓球(1)
●ペルー
 環境教育(1)
 学芸員(1)
●コロンビア
 水産(1)
●ヨルダン
 青少年(1)
●エジプト
 マーケティング(1)
●ガーナ
 小学校教師(1)
●ケニア
 自動車整備(1)
●ウガンダ
 妨害虫(1)
●ルワンダ
 野菜栽培(1)
 陸上指導(1)
●セネガル
 看護師(1)
●モンゴル
 理科教育(1)
 看護師(7)
 保健師(3)
●ウズベキスタン
 コンピュータ教育(1)
●ジョージア(旧グルジア)
 料理(2)
●タイ
 コンピュータ指導(1)
 障害児・者支援(1)
●ベトナム
 観光(4)
 スポーツ(1)
 コミュニティ開発(2)
 機械工学(1)
 建築(1)
 看護師(2)
●ラオス
 理科教育(1)
 服飾(1)
 学校保健(1)
●カンボジア
 看護師(1)
●インドネシア
 日本語教師(1)
●東ティモール
 看護師(3)
 医師(1)
●インド
 水泳(2)
 陸上競技(1)
●スリランカ
 サッカー(1)
●ブータン
 看護師(3)
 医師(1)
●トンガ
 そろばん(1)
 看護師(1)
●フィジー
 品質管理(1)
 自動車整備(1)
●サモア
 コンピュータ(1)
●パラオ
 小学校教師(2)ガラルド、ペリリュー
 栄養士(1)

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