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周囲の大人(ワンちゃんも)が親身に接することで、子どもはちゃんと愛着形成する。

まえの記事で、共同養育がヒトの社会の特徴で、共同養育を促がす仕組みのひとつとして「お母さんを不安にさせる」扁桃体の働きについて触れました。「助けて」というお母さんのレスポンス(response: 呼びかけ)に周囲が応答することが、レスポンシビリティ(responsibility: 責任)ですね。

チンパンジーなどの赤ちゃんがギャン泣きしないことは前にもお話ししました。ヒトの赤ちゃんがギャン泣きするのは、赤ちゃんを他人に預ける前提があるからだと言います。チンパンジーやゴリラは自分の赤ちゃんを他人に預けないのだそうです。ヒトの場合、赤ちゃんのギャン泣きを聞くと、周囲の大人も「なんかしなきゃ」と思います。赤ちゃんの泣き声は、そんな周波数を含んでいるそうです。ヒトは血縁・地縁の親族に赤ちゃんを預けたり、面倒を見てもらうことが「デフォルト」設定されていると考えた方が自然ですね。

ヒトの育児のデフォルトは共同養育のようです。お母さんが一人で赤ちゃんの世話をするようには出来ていないわけです。小さい子を導いたり、教えたりすることをジェネラティビティ(Generativity)と言いますが、このように「みんなで育児すること」に関係してくるこれらの要素が幸福度を高めることが確認されています。

ヒトの成熟には次世代を想う力、ジェネラティビティが大切です。発達心理学者のエリクソンは、これを持たなくなった大人が経験する不安や孤独を、ジェネラティビティ・クライシスといって警告しました。子どもの成長を助けることで大人も成長します。もちろん、自分の子どもでなくて良いのですよ。親戚の子ども、近所の子どもでも良いのです。それに、高齢者が次世代の成長を助ける行動をとることは高齢期のウェルビーイングを高めるとされています。

「愛着障害」という言葉を聞くようになりました。その先天的、後天的な原因についていろいろと報告されています。それらの中に「オキシトシン」との関係もあります。オキシトシンはお母さんが出産した時に大量に分泌されるホルモンで愛情ホルモンと呼ばれることがあります。愛情ホルモンという呼ばれ方をするので誤解も生じるのですが、「仲間を守る」ホルモンで、お父さんはもちろん、周囲の人も触れ合いの中から発生します。

つまり、子どもは生物学的な母親だけでなく、周囲の大人との関係性の中でオキシトシンを分泌し、愛着形成をしていくと考える方が自然です。それはそうですね。昔は養子縁組が盛んにおこなわれ、家督相続もされていました。育ての親や子どもの周囲の大人が親身に接することで、子どもはちゃんと愛着形成していたわけです。そう考えれば、現在であっても、子どもは周囲の人のやさしさを受けて成長していることが分かります。保育園の先生、学校の先生、近所のお兄さんお姉さん、大人が少しづつ愛着形成に必要な機会を分け合ってきたと言えます。

そうそう、同じ哺乳類で、社会性動物であるワン(犬)ちゃん。ワンちゃんとの信頼関係を高めて、じゃれ合い、見つめ合うことでも、ヒトとワンちゃんの双方にオキシトシンが出るそうです。犬と人間の関係が太古の昔から続いている理由はそこかもしれませんね。



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