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見えない「根」 から みる生き方。

最近の天気は、春風が心地よい。夏の暑さを少しばかり含んだ、思わず、たくさん吸い込みたくなるような、そんな風が吹いている。

花粉に苦しめられてもいるが、新緑がまぶしいこの時期は、私が好きなシーズンの1つでもある。

そして、このシーズンになるといつも、ふと思い出す詩がある。

花を支える枝
枝を支える幹
幹を支える根
根はみえねんだなあ

これは、私の好きな詩人、相田みつをさんの作品の1つだ。

根っこは、どんな時でも。静かに土の中でじっと、木全体を支えている。『肝心なところって、見えないんだよなあ』、そんなことを教えてもらえる。

「性根」「根本」など、そもそも「根」という漢字は、ものの本質を言い表す場合によく使われる。上辺にとらわれるのではなく、もっと本質的なことに目を向けてみるのもいいもんだぞー、というメッセージが、この漢字には秘められているように、私は感じる。

実際に、植物における「根」の役割を調べてみた。大きく分けて、5つの働きがあった。さて、そんな根の役割を、私自身が思うコーチングや生き方におけるそれと、併せて紹介していこうと思う。

①植物の茎や幹、枝や葉、花などを上半身とすると、根は下半身である。根の最大の役目は、まず上半身を倒れないようにがっちり支えることだという。それと同時に、栄養・水分を吸収して上半身に送る。土に溶けている肥料成分から、体が利用できる成分を「必要分だけ」「選んで」吸収し、上半身へ送っているらしい。

「必要分だけ」「選んで」送る。

何か情報を発信する時に、少しでも相手に“伝わりやすくする”ために、送り手が施すべき工夫であると、私は思う。

例えば、スポーツのコーチングでも。例えば、上司から部下への指示でも。例えば、親から子への教育でも。

「必要な分だけ」「選んで」伝える。

②根が上半身に養分・水分を送るといっても、根の全ての部分がその仕事に関わるわけではないのだという。成熟した太い根は、全体を支えているだけで、養分・水分を吸収する働きは、ほとんどしないのだそうだ。主役は、若い根と根毛で、若い根の先端の細胞の一部が細長い管のように伸び、それが根毛で、土粒から活発に養分・水分を吸収する役割を果たしているらしい。

根は根毛を生やすことでその表面積を数十倍にし、効率的な養分・水分の吸収システムを作っている、と書かれていた。

私は、このシステムは、とても興味深いと感じた。組織においては、まさに、この

“太い根 と 若い根 と 根毛”

 の関係性は、たぶんとても大切で。

これらが相互的に機能するようであって欲しいし、そんな組織/チームに憧れる。

どっしりと腰を据えて、「いいぞ!なんでも、やって来い!フォローは任せろ!」という、リーダー/エース/監督 がいて、

「よし!できることを、とりあえず直向きにやろう!」と懸命に頑張り続けるメンバーがいて、

そのメンバー達の背中を見て、刺激を受け感化された他のメンバー達が、活動の裾野を広げたりしながら輝きを放つ。

誰もが、太い根にも、若い根にも、根毛にもなり得る。そして、どれであっても、これら全て「根」であることに変わりはない。

③根が養分・水分を吸収するには、エネルギーが必要だという。エネルギーを生み出すため、植物は、まず光合成で葉が作ったデンプンを根に送る。根は、吸い込んだ酸素とデンプンとを結合させてエネルギーとする。

根に欠かせない3要素は「空気」「水」「養分」であるが、中でも空気が不足すると、根は酸素欠乏で窒息し、根腐れを起こしたりするようだ。

万物の基を成しているような「根」にも、その存在をアシストしてくれているものがあることを教えてくれているように、私には思えた。

もちろん、コーチングにおいては、自分が吸い込んだもの、すなわち、自身が既に持っている知識や技術を伝えることもするが、相手から教わっていること、与えてもらっていることが、沢山あることを忘れてはならない。

コーチングをする人=「根」であるかは分からないが、

学校の先生だって、生徒あっての先生である。
かく言う自分が、ソフトボールのコーチができるのも、選手達がいてこそであるし、日々のコーチ活動は、選手達に学ばせてもらうこと、気づかされることに溢れている。

もっと、誰にでも当てはまる例を挙げるならば、

今日の自分を構成している、昨日までの出来事や出会った人々は、全て「根」に当たるだろう。

④植物は歩き回って栄養をとることが出来ない。そのため、根を伸ばすことによって、養分・水分を吸収する。畑で育ったコムギの根は深さ120cm、幅60cmに、またトマトは畑に定植後約2ヶ月で深さ80cm、幅110cmぐらいの広がりになるらしい。植物の生長は根が中心で、根が伸びるから地上部が育つ。

「組織はリーダの力量以上には伸びない」

これは、私が尊敬する野村克也さんの言葉である。例えば、組織やチームのトップや監督が、いつも積極的に新しいものや、いい!と思ったものを積極的に取り入れる方だったら、部下や選手達は、何を思うだろうか?

頑に変化を拒む方がトップにいる時よりも、自分自身を変えたい!変わらなきゃ!もっとスキルを上げていこう!という考えになりやすいのではないだろうか?

私は、なんとなくではあるが、そんな気がする。

常に変化する世の中だからこそ、どんなポジションにいる人であれ、常に自分自身を変化させていくことが大切だ。これにはきっと、限度も限界もない。

その変化は必ずしも良いものとは限らないかもしれない。それでも、選択肢を増やすことができるなら、きっと、やってみた方が面白い。

⑤養分・水分を吸収する主要部は根の先端付近にあるため、根は前に前に伸びようとし、後戻りをしないらしい。そんな猪突猛進の「根」であるからこそ、現に、小苗の鉢上げの際には、小鉢→中鉢→大鉢と徐々に鉢を大きくしていく必要がある。

何においても同じことが言えるだろうが、仮に、何かで世界一になったとしても、同じ事をずーっとやっていたら、すぐ世界一から引きずり下ろされるだろう。最初は通用していたことも、いつかは通用しなくなる。

追いつかれないように、先へ先へ。対応されたら、対応する。昨日を、過去を、消化して力に変えて、今日は、新しい何かをする。

過去にしがみついていると、過去以上にはなれない。語るのは、過去よりも未来。そして、見るのは、未来よりも今。

今どうするのか、今何をするのか。

ここがとても重要で、過去は過去であり、未来が今になった時が大切だと、私は思う。

失敗の方が多いのは決まっている。成功の方が少ないことも知っている。

だから、常に切り替える。だから、次に進むしかない。

次に成功が起きるかもしれないから。前に進めば、どこかで必ず“いい事”にぶち当たるはずだ。

できるまでやれば、できる。

そんな「"根"性」があっても、いいのかもしれない。

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